11 さくせんかいぎ2
屋敷の縁側に座り込みながら、鍛錬後の休憩がてら、ふたりは遺跡攻略の作戦会議を続けている。
「まず第一に、この前のカルマですら、いま戦っても勝てないよね」
「ええ。実力通りなら、串刺し二人前ですわね」
「それは御免こうむる」
では、どうするか。
ふたりが出した答えは真正面からの力比べの放棄であった。
「罠にかけましょう」
「……できるかね?」
「わかりませんが、それしか攻略の糸口はありませんわ。もちろん、時間をかけてゆっくりと長い年月の鍛錬を積めば話は別でしょうけど?」
「うん。待ってられない。なにより師匠だけの問題じゃないよ。もともと練成師になりたかったんだから、これはこっちの問題」
「ふふん。当然ですけれど、わたくしの問題でもありますわよ。わたくしはなんども言っておりますけれど、木符やアルマの謎を解明するために御師匠様やこの道場に通っていましたんですもの」
「……貴族らしくしてれば生活に不自由ないのに?」
「それはつまり『わたくしらしくいられない』ということです。そんなの願い下げですわっ!」
キッパリと、堂々とした声がカノンの胸に響いた。
そういうところは素直に尊敬できるのか、カノンはポツリと「すごいよなあ」と聞こえない声で呟いた。
「良い機会ですから確認しますけれど。カノンさんの目的はやはり―――」
「師匠以外の目的? うん。家族を探すために世界中周る。いるかいないかもわかんないけど、どのみち世界中を見て回りたいのに変わりはないしね」
ふたりはそれぞれの覚悟を示して想いを固める。
そうして、遺跡攻略の当日を迎えた。
ふたりはまず、村はずれへと向かう。
そこには木符のエネルギー源であるアルマを宿す巨大な木『巫女の木』があるのだ。
「うん。ちゃんと発光してる。満タンになった」
「もしもアルマが切れたら一度退却しますわよ。手紙にも書かれていたように、命は投げ捨てるものではありませんわ。練成師は常に最悪の状況を想定し、その時々の冷静な対応が必要なんですからねっ!」
「もちろん。けど不思議だよね、巫女の木の近くにいるだけで木符が使えるんだから」
「正確には、巫女の木や御大樹から放出されるアルマが自然に流れ、空気中のアルマを利用することによって木符に記された錬成術を発動できる、ですわ。ですから巫女の木や御大樹がない地域ですと木符は効力を発揮できませんし、もしかすると遺跡最下層では効果が低減するかもしれませんわ」
木符の発色を確かめながら、アリシアが言った。
「それも注意しないとね。よし、そんじゃいっちょ最終課題といきますか!」
ふたりの少女は練成師への第一歩を踏み出したのであった。