表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代魔法と未来科学は区別がつかない  作者: arsmgn
一章 クノール遺跡
1/38

1 さいしょ




 勇者も魔王もいない唯の別世界。そんな世界のある場所に、ひとりの少女とおっさんがいた。

「爺さん。また老けた?」

「爺さんじゃない。お兄さんと呼べ」

「そりゃ無理があるよ爺さん」



 初老に入りかけたように痩けた肌の男はそんなやりとりをしながらも手元の物体を見つめて悩んでいた。


「で、新しい木符はどう?」

 黒髪短髪、褐色肌の少女が身を乗り出して手元を覗き込む。

 そこにあるのは手のひら大のサイズに型どられた木製の札で、表面には幾何学模様が描かれている。

 それを男がなぞり上げると、かすかに表面が光を発した。

 光の加減を見つめた男は「うーん」と長い沈黙のあと、

「合格」

「よっしゃ」

 その言葉に少女は嬉しそうにガッツポーズをした。

「そんじゃ例のブツをくださいよ、師匠。待ちきれないんですよ」

「妙な言い方をするんじゃないよまったく……」


 よっこらせと重い腰を上げて、男は武家屋敷のような縁側から立つと、部屋の隅に風呂敷で隠されたものを解放する。

 そこには大量の書物(大半がマンガである)が置かれていた。

「ししょう! どうしたんですか師匠! いつもの倍以上もありますよこれ!」

 予想外の光景だったらしく慌てる少女に、自らの肩を叩きながら疲れをアピールした男は「翻訳だって疲れんだからなあ?」と愚痴るようにこぼした。

「え?なんか言いました?」

「聞いちゃいねえのかよ」

 既に少女は眼も向けずに漫画に夢中となっていた。

誰かに労って欲しいとばかりに男は空を見上げる。

 真っ青な空には白一色の雲海が地平線に消えていく。

「ところで師匠。ホンヤクってなんですか?」

「んー。日本語を訳したんだよ」

「ニホンゴって?」

「あー。どっかの国の言葉」

「へー」

 興味を失った様子で少女は読書にふける。

 老けた男は隣に座り、ただなにもせずに遥か遠くにそびえ立つ巨木を見つめていた。

 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ