【11】いじけた顔も美しい、、、
モンブリーを出発してから十数日後、サザランドの町に到着した。
暗くなってきているので、馬車を預けてすぐに宿を探しにいった。
ここは宿場町では無く普通の小さな町で、ちゃんと冒険者ギルドもある。
「さすがに明日出発するのはしんどいから、明後日にしよう」
「はーい」
「俺は明日ギルドへ行って、魔石とアイテムを換金して来る」
「私達は町を見に行きましょうか?」
「そうね」
「その後買い出しに行くけど、何か要るか?」
「食料だけでいいんじゃない?」
補充する物を確認して、みんなから魔石とアイテムを預かり、今日はこのまま眠りについた。
◇
朝早くから出掛ける4人を見送って、ギルドに向かった。
アルギュロスは宿で留守番だ。
用事が終わったら散歩にでも連れて行ってやろう。
ギルドで換金を済ませ、ジェロイの場所を確認した後で、買い出しに向かった。
この町ではあちこちでエルフの姿を見る事が出来た。
エルフの森が近づいてきたと実感できる。
レイアの言っていた通り、髪の色や髪型は違っているが、顔の造りはみんなよく似ている。
つまりは美男美女という事だ。
きっと森に住むエルフもこんな感じに美人なのだろう。
1人くらい人族に興味があるエルフの女性がいて欲しいものだ。
みんなと合流し、夕食を食べて部屋に戻ってから、みんなに換金してきたお金を渡した。
「主様、あたし何もしてないよ、、、」
「いいんだよ、旅行中の魔石とかはいつもみんなで分けてるから」
「・・・・・でも」
「遠慮せずにもらっときなさい」
「そうですよ~」
「それで食べ物でも何でも好きな物を買ってくれ」
「・・・・・うん」
ラーニャは渋々といった感じで、アイテムボックスにお金を入れている。
道中に出る魔物の数なんてたかが知れてる。
そんなに大きな金額でも無いから気にしなくてもいいのに。
みんなにお金を渡して、ベッドに倒れ込んだ。
ベッドで寝るのは久しぶりだ。
今日は夜襲を警戒しなくていいからぐっすり眠れるだろう。
◇
翌朝、いつもより少し遅く宿を出発してジェロイに向かった。
俺もちょっと寝過ごしてしまった。
半月ほど外でのキャンプ生活だったから、目に見えない疲れみたいなのがあったんだろう。
サザランドからジェロイまで約2日。
ジェロイからエルフの森までが約半日。
もうすぐだ。
「ご主人様~、どっちの道ですか~?」
「あれ?1本道って言ってたのに、、、」
「道標も無いわね」
「右です」
「レイア、思い出したのか?」
「いえ、勘です」
「・・・・・」
「その目は何ですか?」
「い、いや何でも無い」
「信じていませんね」
「そんな事は無い!リワン、右だ!」
「はい~」
俺の表情はそんなに分かりやすいのだろうか?
正直、ちょっと疑っていた。
どっちかと言えば左の道の方が真っ直ぐだったし。
もし間違っていたら引き返せばいいか、、、
「今日はここまでにしよう」
「はい~」
今日は小さな川の近くでキャンプをする事にした。
馬の世話と馬車の整備をして、みんなの所に戻ると、豪華な夕食が出来上がっていた。
「今日は豪華だな」
「もうすぐ着くんでしょ?」
「順調に行けば、明日中にはジェロイに着くんじゃないか?」
「なら平気よ」
「大丈夫です。道は合っていますから」
「・・・・・俺は何も言ってないぞ」
「目を見ればわかります」
そう言ってレイアはプイッとそっぽを向いた。
ちょっと頬が膨らんでいる。
—————うむ!
いじけた顔も美しい、、、
「—————この変態!」
「何なんだいきなり、、、」
「そっぽ向かれてんのにニヤニヤしてるんだから、立派な変態よ!」
「ニヤニヤなんてしてねぇよ、、、」
「してるわよ!ねぇ、リワンちゃん」
「してますよ~」
「主様、顔がだらしないよ」
いたたまれなくなった俺は、早々に食事を切り上げて馬車に入った。
馬車の中でゴロゴロしていたら、アルギュロスが来たので一緒に風呂に向かった。
川の近くに風呂を出して、アルギュロスと湯につかり、樽の淵に前足でぶら下がっているアルギュロスを支えながら、綺麗な三日月を見上げた。
早く家が欲しい。
騒がしいのもいいが、やっぱりのんびり自由に暮らしたいなぁ、、、
◇
「ここがジェロイです」
「やっとここまで来れたわね」
「あの丘を越えた所に、エルフの森があります」
・・・・・丘?
山の間違いじゃないのか?
草で覆われていて木は生えてないから、見た目は草原の丘っぽいかもしれないが、大きさは山だぞ、、、
「あれ?レイア?」
「アヴィー」
「旅に行くって言ってたのに、もう帰って来たの?」
「はい」
「まだ1年も経ってないんじゃない?」
「お友達を連れて来たんです」
「・・・・・友達?」
レイアがアヴィーと呼んでいた美人のエルフが、興味深そうにこっちを見ている。
—————ん?
俺達の方を見ていたアヴィーの口が少しずつ開いていく。
そして口をあんぐり開けたまま、レイアの方に向き直った。
「・・・・・お、お友達?」
「はい、旅の途中で知り合ったんです」
「そ、そうなんだ、、、」
「ここで1泊しようと思ってるんですけど、空いてますか?」
「ちょ、ちょっと待っててね。見てくるから」
アヴィーはこっちをチラチラ振り返りながら、村の中に行ってしまった。
何であんなポカーンっとした顔をしてたんだ?
人族って珍しいんだろうか?