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異世界ナラティブ  作者: SW
第五章
96/105

【10】正直に話そう、、、


馬車のすれ違いも難しそうな細い林道を、サザランドに向かって進んで行く。

今日はリワンが馬車を走らせ、俺は後ろで寝転がりながら、ヒトミとレイアがアルギュロスを可愛がっているのを眺めていた。

ラーニャは今日も御者台から景色を見ている。


「ご主人様~、魔物がいます~」

「はいよ、数は?」

「2つです~」


リワンに馬車を止めさせ、御者台から顔を出し、魔物の情報を確認する。

林の中からこちらを伺う、2体の猪。


【 ワイルドボア Lv.22 魔物 】【 牙攻撃 】


鼻よりも長い4本の牙。

その漆黒の巨体が、木々の合間から見えている。


「見逃してくれると思う?」

「頭から突っ込んで来そうですね」

「馬車に突撃されたら敵わないし、狩ろうか」


リワンとラーニャを馬車に残し、ヒトミが1体を、俺とレイアでもう1体を相手にする。

ヒトミは猪の突進を見極め、躱しざまに斬り付けている。

まるで闘牛士だ。


俺も氷魔法で牽制しながら、猪の突進をやり過ごす。

猪はそのまま後ろの大きな木に突撃して行った。

4本の牙が木に突き刺さり、身動きが取れなくなった猪に、レイアの土魔法が撃ち込まれていく。

あれじゃあ、ただの的だ、、、

俺もそれに合わせて、氷魔法を撃ち込んでいく。

魔物は黒い霧になって消えていった。

—————雑魚だな


=《鑑定スキル》を獲得しました=


「—————うおっ!」

「キャッ!・・・・・ど、どうかしましたか?」

「な、何でも無い。大丈夫だ」


《鑑定スキル》だと!?

今の戦闘のどこに、こんなスキルを得る要素があったんだ?


馬車に戻り、あれこれ考えてみたが、原因が分からない。

心当たりと言えば、今の戦闘でレベルが30になった事だろうか?

他にも何か条件があるのかもしれないが、別に悪い事が起こった訳じゃないし、別にいいか、、、

ところでこの《鑑定スキル》ってのはどんな物なんだ?

それを確認する為、丁度目の前に座っていたヒトミを凝視してみた。


—————ふむ、、、

見れるようになったのはヒトミが装備している物の名前だけだった。

装備の性能などがわかれば、買う時に役立ちそうなのに、、、

現時点で《鑑定スキル》Lv.1ってなってるから、スキルレベルが上がった時にどうなるか期待しておこう。


「ねぇ!」

「・・・・・」

「ちょっと!」

「—————ん?何だ?」

「さっきから何ジロジロ見てんのよ!」

「あ、悪い。何でも無いから気にするな」


ヒトミは(いぶか)しそうにチラチラ俺を見ながら、レイアと小声で話している。


「真剣な顔で見ていたのに、どこかボーっとしてましたね」

「またエッチな事を考えてたのよ」

「そんな風には見えませんでしたが、、、」

「見られてた私が言うんだから、間違いないわよ!」


—————くそっ!

正直にスキルの事を話して、この不名誉な疑いを晴らすべきか?

正直に話そう、、、

エロのイメージを払拭しなければ!


ヒトミとレイアにさっきの《鑑定スキル》について、正直に全て話した。

レイアはうんうんと頷いて信じてくれているが、ここまで疑い知らずだと、いつか悪い男に騙されそうで心配になる。

レイアとは対照的にヒトミは全てを聞いた後でも、まだ少し疑っていた。

こいつはいつか友達を無くしそうだ。


「アイテムの名前しかわかんないなら、《看破スキル》の方が便利ね」

「スキルレベルが上がったら化けるかもしれんぞ」

「ところでさぁ、、、」

「何だよ?」

「何で私は覚えないのよ!」

「・・・・・知らねぇよ」


今度は別の理由で機嫌が悪くなりやがった。

付き合ってられん!





周りに馬車が見えなくなってから、たまに魔物が襲撃してくるようになった。

相手をするのは俺、ヒトミ、レイア。

リワンは馬車の操縦と守り、ラーニャはレベルが低くて戦いに出すのはまだ怖い。


そんなラーニャも今ではレベルが5になっている。

という事はPTを組んでいれば、メンバーみんなに経験値が入るという事なのだろう。

その代わり、ある程度は近くにいる必要がありそうだ。

俺が冬場に魔物を狩りまくっていても、リワンは1つもレベルアップしていなかった。

でもレベルだけ高くなるのはダメだから、ちゃんと実践もやってもらいたい。

まぁ、この辺りはヒトミに丸投げだ。




「ヒトミ姉様、あたしに戦い方教えて」

「いいよ」


夕食後、ヒトミとラーニャが馬車の外で訓練を始めた。

ラーニャもリワンと一緒で攻撃を躱すのが上手だ。

《見切りスキル》を覚えたからだと思うが、獣人族にはそういう特性でもあるんだろうか?

そういえばこの2人は《気配感知スキル》も持っている。

旅の時は便利だが、町の中では俺の邪魔をする鬱陶(うっとう)しいスキルだ。


「ヒトミ姉様、ありがとー」

「いいえ、どういたしまして」


訓練を終えた2人はそのまま風呂に行ってしまった。

今日はみんなが風呂に入ってから、最後にゆっくり入るとしよう。


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