【06】・・・・・可哀想に
「ラーニャ、奴隷から解放してほしかったら、今すぐにでもするからな」
「・・・・・やだ!」
「リワンは?」
「お断りします~」
「もういい加減、諦めなさいよ」
「・・・・・じゃあ、馬車に戻るぞ」
「はーい」
奴隷商館を離れ、アルギュロスが待っている馬車に戻る事にした。
馬車に戻りながら、3人はラーニャにいろいろ聞いていた。
「ラーニャちゃんはリワンちゃんと同じ歳なのね」
「リワン姉様も16歳?」
「む~、リワンって呼んで~」
「えっ、でも、、、」
「いいからリワンって呼んでやってくれ」
「う、うん。えーと、リワンも16歳?」
「はい~」
「ヒトミ姉様とレイア姉様は主様の奥様なの?」
「その2人は奥さんでも恋人でもないぞ。それと俺の事も名前で呼んでくれないか?」
「主様は主様だから、、、」
「あんたが買ったんだから、しょうがないじゃない」
「・・・・・金は払って無いけどな」
ラーニャは馬車に戻ってからも、みんなとずっと話をしている。
アルギュロスもすぐに馴染んでしまった。
昼食の準備の時もヒトミ達と一緒だ。
料理はやった事がないから、今日は見ているだけみたいだが、これならすぐに打ち解けそうだ。
昼食の準備が終わり、みんなが席についている中、ラーニャだけが俺の横に立っている。
「ラーニャ、座らないのか?」
「あたしは主様のお世話しなきゃ」
「俺の世話はいいから、座って食べろ」
「で、でも、、、」
「・・・・・ラーニャ、リワンを見てみろ」
フォークを両手に持ったリワンが、どの肉から食べようかと必死の形相で皿の上を見つめている。
「あれでいいんだ」
「遠慮してたら全部リワンちゃんに食べられちゃうわよ」
「・・・・・うん」
ラーニャが席についた所で食事を始めた。
リワンの食いっぷりに少し気圧されしているが、ラーニャもちゃんと食べていた。
—————そのうち慣れるだろう
「リワン、昼からラーニャの服とかを買ってきてくれ」
「わかりました~」
「ラーニャも一緒に行ってこい」
「いいの?」
「ああ、服の他にも必要な物を買っていいぞ」
「私も行く!」
「私もラーニャさんの服を選びたいです!」
この後、ラーニャはこいつらの着せ替え人形にされるんだろう、、、
・・・・・可哀想に
「ヒトミ」
「ん?何?」
「ここでは前みたいに主人に尽くす必要は無いって、ラーニャに言っておいてくれ」
「うん、わかった。でも今までどんな生活してたのかな?」
「さぁな、あんまり考えたくないな、、、」
初めて会った時は、体中に傷があった。
たぶん俺が想像する奴隷の生活だったんだろう。
いろんな縁があって一緒に生活する事になったんだから、ここでは辛い思いはさせたくない。
ヒトミに任せておけば、うまくやってくれるはずだ。
アルギュロスを馬車に残し、みんなで町に出掛けた。
リワンにお金を渡し、みんなと別れた後、俺は今日の宿を探す為にギルドに向かった。
ギルドで教えてもらった動物可の宿を取り、馬車に戻った
あいつらは夕飯までには帰って来るから、それまでアルギュロスと遊んで時間を潰そう。
買い物を終えて帰って来た4人とアルギュロスを連れて宿に向かい、部屋にアルギュロスを繋いだ後で夕食に出掛けた。
適当に大皿の食事をいくつか頼み、それをみんなで取り分ける。
ラーニャは魚が好きなのか、魚料理をよく食べている。
遠慮して肉を食べていないって事はないよな、、、
「ラーニャちゃんも冒険者になりたいって言うから登録してきたわよ」
「—————へ?」
「あたしも主様のお手伝いがしたいの!」
「う~ん、危ないぞ」
「大丈夫よ!私がちゃんと教えるから」
「・・・・・」
「私はリワンちゃんをここまで育て上げたのよ!任せてよ!」
ヒトミは得意げな顔で胸を叩いているが、ヒトミみたいな天才肌は、人に教える事には向いて無さそうなんだけどな、、、
でもヒトミの近くにいるのが一番安全だとも言える。
「怪我しないようにな」
「うん!」
「装備は買ったのか?」
「武器はヒトミさんが、防具は私がプレゼントしました」
「武器は何にしたんだ?」
「これだよ」
「グローブか?」
「うん!剣とかは重かったから、これにしたんだ!」
リワンが最初に使っていたのと同じような、金属のプレートが付いたグローブだ。
これで犬パンチと猫パンチが揃ったという事か、、、
夕食を食べて部屋に戻ると、ヒトミがラーニャを椅子に座らせた。
鏡を取り出してテーブルに置いている。
「ねぇねぇ、ラーニャちゃんはどんな髪型がいい?」
「このままでいいよ、、、」
「ダメよ!もっとちゃんとしないと!」
「そうです!髪は女性の命だと言います」
「これがいいと思います~」
3人がラーニャの髪を弄り回している。
あーだこーだと騒がしい。
俺はアルギュロスと一緒にその様子を眺めていた。
ラーニャは困った顔をしながらも笑っているから、嫌ではないんだろう。
「これが一番いいんじゃないかな?」
「ええ、とても似合っています」
長い時間騒いでいたのに、結局は普通のツインテールに落ち着いたようだ。
赤い髪に黒いリボンが結ばれている。
無駄に伸びていた前髪もカットされ、綺麗な顔が良く見えるようになった。
「主様、どうかな?」
「ん?よく似合ってるな」
「えへへ、ありがとー」
みんないろいろ髪型を変えて俺に感想を聞いてくるが、自分の好きな髪型にすればいいのにと思う。