表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ナラティブ  作者: SW
第五章
89/105

【04】—————黒色のチョーカー


「ご主人様~、誰か倒れてます~」


馬車を預けに向かう途中、道脇の小さな木の下で、人が木にもたれ掛かっていた。

リワンに馬車を止めさせ、馬車から飛び降りてその人に駆け寄った。

無造作に伸びた赤色の髪、三角の耳と細長い尻尾。


【 ラーニャ 16歳 Lv.1 猫人族(奴隷) 】【 気配感知 】


よかった、ちゃんと息はある。

少し雨に濡れてぐったりしている女の子を抱きかかえて、馬車に戻った。


「レイア、この子の治療を」

「はい!」

「ヒトミ、終わったら体を拭いて、着替えさせてやってくれ」

「わかった」

「リワン、俺が馬車を操縦するから、向こうを手伝ってくれ」

「はい~、わかりました~」


広場に馬車を止めて手続きを済ませ、馬の世話を頼んでから馬車に戻った。

女の子は着替えさせられて、布団に寝かされている。


「どうだ?」

「小さな傷は治しました。でも体が少し弱っています」

「さっき抱きかかえたけど、軽かったな」

「古傷もあります。こっちは今の私では、すぐに治せません」

「・・・・・そうか」

「何日か続ければ、治せると思いますが」

「ねぇ、この子、、、」

「ああ、奴隷だな」


—————黒色のチョーカー

つまりは奴隷という事だ。

この子がどんな扱いを受けていたのか、何となく想像出来てしまう。


「俺がこの子を見てるから、3人は宿を取ってきてくれ」

「私達も残る!」

「・・・・・じゃあ、飯を買ってくる」


ヒトミとレイアにこの子の世話を任せて、リワンと一緒に買い物に出掛けた。

ここから町に向かっている馬車に乗り、夕飯を買って戻って来た。

夕飯を食べてから、温かいスープとサンドイッチを作っておく。

この子が目を覚ましたら食べさせよう。


「この子どうするの?」

「こういう時はどうするんだ?」

「そんなの知らないわよ」

「リワンは知ってるか?」

「ごめんなさい~、知らないです~」

「となると、また奴隷商館で聞いてくるしかないかな?」


夜は3人を先に寝かせて、俺はこの子の横に座って様子を見ていた。




「・・・・・うーん」


ウトウトし始めた頃、小さな声が聞こえてきた。

慌てて目を開けると、女の子が寝ぼけ眼のまま、上半身を起こしていた。

目をパチパチさせながら、辺りを見渡している。


髪をただ伸ばしているだけでバサバサなのが原因なのか、リワンと同じ歳なのにちょっと幼く見える。

前髪が長くてよく見えないが、可愛いというよりも綺麗な顔の女の子だ。

俺の姿を確認して、体を小さく丸めてしまったこの子に、優しく話しかけた。


「おはよう、大丈夫かい?」

「・・・・・」

「大丈夫、大丈夫、怖くないから」


怖がらせないように笑いながら頭を優しく撫でてやると、チラチラと俺の方を見始めたので、小さな声で話しかけた。


「体は大丈夫かい?」

「・・・・・」

「痛くは無い?」

「・・・・・うん」

「名前を教えてくれるかい?」

「ラーニャ、、、」

「昼間の事は覚えてる?」

「えーと、お使いに行って、、、。わっ、帰らなきゃ!」


慌てて立ち上がろうとするラーニャを抑えて、今は夜中だから帰るのは明日にしようと言い聞かせた。

最初はすぐに帰ると暴れていたが、一緒に行って説明してあげるからと言って説得したら、やっと大人しくなってくれた。


「お腹は減ってるかい?」

「・・・・・少し」


さっき作っておいたスープとサンドイッチをラーニャに手渡したが、なかなか口に入れようとしない。


「食べないのかい?」

「・・・・・」

「じゃあ、俺と一緒に食べようか?」


もう1つスープとサンドイッチを取り出して食べて見せると、ラーニャも恐る恐るスープを口に運びだした。

ゆっくりだが、ちゃんと食べている。

食欲はあるみたいだ。

サンドイッチを食べた時は大きく目を開き、俺の顔をジッと見ていた。

お代わりもしっかり食べた所で、ラーニャの事を聞いてみた。


ラーニャの主人は港の倉庫で仕事をしている人で、お使いの帰りに気分が悪くなってあそこで休んでいたらしい。

主人のいる場所はわかったが、そのまま連れて行くのは気が引けたので、予定通り奴隷商館へ連れて行って話を聞こうと思う。


「今日はここでゆっくり休もうか?」

「・・・・・うん」

「このまま寝てていいから」

「・・・・・ありがとー」


立ち上がって、自分の布団に戻ろうとしたら、パッと手を捕まれてしまった。


「ここに居て欲しいの、、、」

「・・・・・いいよ、一緒に寝ようか?」

「うん、、、」


ラーニャの横に布団を移動させて横になると、ラーニャも俺の方に体を倒して、目を閉じた。





次の日の朝、目を開けると3人がラーニャの周りに座っていた。

体を起こそうとしたら、ラーニャが俺の手をしっかり握っているのが見えたので、起きるまで俺もそのまま横になっていた。


「優しいんですね」

「ん?」

「昨日の夜、その子と話をしているのを聞きました」

「ご主人様は私の時も凄く優しかったです~」

「リワンも起きてたのか?」

「はい~」

「ああやってリワンちゃんを(たぶら)かしたのね」


ヒトミを軽く睨んでから、朝食の準備を頼んだ。

ラーニャとの話はみんなに聞かれていたようだ。

変な事を言わなくて良かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ