【03】港町モンブリー
買い物に出掛ける3人を見送って、俺はアルギュロスを連れて散歩に出掛けた。
宿を探しつつ、食材や薪なんかを補充していく。
この小さな町は、いわゆる宿場町だ。
冒険者ギルドなどは無く、宿と飲食店が立ち並んでいる。
大通りから外れた道沿いには、飲み屋やお姉さんのお店らしき建物も見えた。
宿を探し、買い物も済ませて馬車に戻ると、俺より早く3人も帰って来ていた。
「お土産屋さんみたいなのしか無かった、、、」
「そりゃそうだろ、見るからに宿場町じゃないか」
「そうなんだけどさぁ~」
うなだれている3人を連れて夕飯を食べ、宿に入った。
「ねぇ、やっぱり明日出発しようよ」
「何でだ?」
「ここに居てもやる事ないもん」
「確かに観光する場所も無さそうだしな」
「大きな町に着いた時に少し滞在しましょう」
「途中にあるのか?」
「確か港町があったはずです」
結局、明日この町を離れる事になった。
◇
朝食を食べて、そのまま町を後にした。
道中はずっと他の馬車が近くにいたから、たまに襲って来る魔物も、その馬車の護衛らしき人達が倒している。
楽なもんだ。
寝る時だけ他の馬車から離れておいた。
さっきの町で聞いた話だと、ここからモンブリーまで町や村は無いらしい。
当分の間はキャンプになるが、だからといって特に気にする事も無い。
慣れたものだ。
◇
林を抜け、森を抜け、数日後小さな丘の頂上にたどり着いた。
眼下には広大な平原、その向こう側には夕日に照らされ黄金色に輝く海。
その海沿いには大きな町が広がっている。
「絶景ね!」
「ああ、綺麗だな」
「あれがモンブリーという港町です」
「大きな町ですね~」
今日はこのままここで1泊。
絶景を眺めながら風呂に入り、旅の疲れを取った。
久しぶりの町が楽しみなのか、3人は夜遅くまで話をしている。
レイアによると、モンブリーは交易が盛んな港町らしい。
初めての大きな町でテンションが上がってしまい、あれもこれもと買い込んでしまった為、荷物が増えてお金が減ってしまったと言っている。
その話を聞いたヒトミとリワンは目を輝かせている。
モンブリーで何泊する事になるのやら、、、
◇
次の日、山を下りて平原に延びる道を、ゆっくりと進んで行った。
俺達が来た道だけではなく、他の道からもたくさんの馬車がモンブリーに向かっている。
メラゾニアでも見た光景だ。
「ちょっとあれ見てよ!」
ヒトミが指さす方向に目を向けると、遠くに石で作られたような灰色の建造物が見える。
「あそこ行ってみようよ」
「何でだ?」
「転移ゲートかも知れないじゃない」
「なるほどな」
「ちょっと遠そうだけど、まだ時間に余裕あるでしょ?」
もしあれが転移ゲートだったとしたら、また後で来るのも面倒だし、違ってたとしても観光して来ればいいか。
途中で道を曲がり、あの建物に向かって進路を取った。
「一気に馬車が少なくなったな」
「快適です」
「すれ違う馬車は豪華な馬車ばっかだし」
「お金持ちさんの馬車ですね~」
「これは当たりっぽいわね」
こっちに進んでくる馬車も、すれ違う馬車もほとんどいない。
確かに転移ゲートの可能性は高いな。
建物の前で馬車を止めると、ヒトミは走って中に入って行った。
しばらくするとニコニコ笑いながらヒトミが出てきた。
こっちに向かってVサインをしている。
「当たりだったみたいだな」
「うん、転移ゲートだったわ」
すぐに転移ゲートを離れ、そのまま来た道を戻った。
「転移魔法って儲かるのか?」
「かもしれないわね」
「転移魔法で金取れるかもな」
「ふふふ、いいでしょ!」
「お金持ちになれますね~」
「それは魅力的です!」
「レイアも覚えればいいじゃない?」
「使える自信も習うお金もありません、、、」
元の道に合流し、馬車の後ろに付いて、ゆっくり進んで行く。
夕方になり、門の前で順番待ちの列に並んでいると、ポツポツと雨が降って来た。
「降ってきちゃったわね」
「でももうすぐ入れますよ~」
「町に入ったら宿を探して、夕飯にするか?」
「お肉がいいです~」
「私はお魚にします」
港町モンブリー
懐かしい潮の香り、海沿いには倉庫のような大きな建物が立ち並んでいる。
町中を馬車がたくさん走っているところはメラゾニアによく似ている。
メラゾニアみたいな巡回馬車かどうかはまだわからないが、ここもかなり大きな町のようだ。
「馬車を預けに行きますね~」
「場所は分かるか?」
「はい~、さっき門番さんに教えてもらいました~」
大通りから脇道に入って進んで行くと、馬車がたくさん並んでいる大きな広場が見えてきた。