【02】これぞキャンプ!
次の日メラゾニアを出て、モンブリーに向けて出発した。
適度に町に寄って疲れを取りながら行こうと思う。
たくさんの馬車とすれ違いながら、綺麗に整備されている道を進んで行った。
リワンと交代で馬車を走らせ、日が傾き始めた頃、キャンプに良さそうな広場に到着した。
周りには他の馬車が何台か止まっている。
恐らくこの人達もここで1泊するのだろう。
「今日はここで寝るか?」
「もうちょっと人が少ない場所がいい」
「何で?人がいるから何かあった時に、助けてもらえそうじゃないか」
「だって、お風呂入りたいし、魔物避けの薬草使われるかも知れないじゃない」
「アルちゃんが可哀想です~」
「風呂はテントの中で入ればいいだろ。それにこれだけ離れてたら、薬草を使われても大丈夫だって」
「お願い!もうちょっとだけ進もうよ」
「お願いします」
「は~、わかったよ、、、」
我儘なお嬢様達の希望通り少し進んで脇道に入り、まばらに木が生えている草原で1泊する事にした。
わざわざここまで入って来るような物好きはいないだろう。
寝ている時に何回か魔物の夜襲を受けた。
レベル25ぐらいのヘビの魔物だ。
レベルの高い魔物だったが、特に問題なかった。
リワンが見つけて、ヒトミが倒すだけで終わる。
リンガンブールに行く途中で襲われた、蛙の魔物に比べたら楽なもんだ。
あの時は雨で、迎撃の度に着替えていたから大変だった。
◇
「ご主人様、昨日のヘビの魔物が2体います~」
「どこだ?」
「もう少し先です~。でも~、誰かが戦っているみたいです~」
そのまま馬車を走らせると、大きなヘビの魔物と、それを囲む数人の人影が見えてきた。
遠くから見る限りでは、どうやら魔物の方が優勢だ。
ヘビの攻撃を受けて、飛ばされている人影が見える。
【 グラトナススネイク Lv.27 魔物 】【 毒攻撃 牙攻撃 毒耐性 】
魔物の情報をみんなに伝え、今のうちに指示を出す。
「もう少し近づいたら、助けに行くぞ」
「うん」
「俺とヒトミとレイアで攻撃。リワンはこのまま馬車で待機」
「わかりました~」
「魔法を撃つ時は、あの連中に当てないように気を付けてな」
「はい」
「ヒトミ、あんまり目立つなよ」
「わかってるわよ!」
馬車のスピードを上げて、戦闘区域に入った所で飛び降りて魔物に接近した。
レベルの高い方を引き受けようかな?
「こっちは俺らで相手します!」
「す、すまない!」
こっちの魔物を相手していた数人が、もう1体の魔物の方に向かった。
ヒトミに魔物の相手をさせながら、隣のパーティーの様子を伺う。
レベル20ぐらいの冒険者が全部で8人、盾を持った2人が攻撃を引き付け、周りを取り囲んでいる他の人達が、隙を見て槍や魔法で攻撃している。
たまに盾役が弾き飛ばされているが、大きく崩れることなく対応していた。
こっちもチクチク攻撃しながら、隣のパーティーとタイミングを合わせて魔物に止めを刺した。
「ありがとう、助かったよ」
「いえいえ、お互い様ですよ」
お礼をしたいと言われたが、先を急ぐのでと断った。
いろいろ聞かれると、面倒な事になるかもしれない。
「普通はああやって戦うのかな?」
「さっきの人達か?」
「うん、盾を持った人がずっと攻撃を受け持ってた」
「ゲームだとよくあるぞ」
「ふ~ん、そうなんだ」
「俺達は誰も盾を使わないからな」
「あんたが使えばいいんじゃないの?」
「断る!」
「あんたが殴られてる間に、倒してあげるから」
「殴られるの前提かよ!」
今までと違って今回の旅は、途中でたくさん道が分かれている。
分かれ道には、道標が立てられており、道を間違える事は無い。
これならレイアに頼らなくてもジェロイまで行けるかもしれない。
ヴァルアからメラゾニアに行った時は、ここまで分かれ道は多くなかった。
こっち方面には町が多いんだろう。
住むのにいい町が見つかればいいが、、、
今日は道から外れ、川に沿って少し上流に上った場所でキャンプをする事にした。
夕食にはレイアが取って来てくれた魚を使った。
アルギュロスには焼き魚を食べさせてみたが、特に気にすることなく、頭から丸かじりしていた。
今のところ、アルギュロスが苦手な食べ物は無い。
たまにはこうやって現地調達して、飯を作るのもいいもんだ。
これぞキャンプ!
翌朝もレイアが取って来た魚に串を刺して塩焼きにしたが、これを食べていると激しくご飯と味噌汁が欲しくなった。
いつか味噌も何とかしたいところだ。
明日以降の飯の為に、出発の時間まで、レイアに魚を取ってもらった。
◇
数日後、小さな町に到着した。
「まだ先も長いし、明日もここでゆっくり休んで、出発は明後日にしようか?」
「やったー!」
「早速、買い物に行きましょう!」
「私も行きます~!」
どこの町に行っても買い物に行きやがる。
何をそんなに買う物があるんだろうか?