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異世界ナラティブ  作者: SW
第四章
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【26】—————突っ込んだら負けだ


ギルドで暦を確認してみた。

ヒトミが言っていた通り、指定クエストの受付に貼られていた。

数字だけが書かれているから、曜日の概念は無いのかもしれない。

カレンダーを作って、家に置いておくのもいいだろう。


元の世界でいう所の大晦日の前日まで狩りを続けた。

年末と年始3日はのんびり過ごそう。





そして今日は12月30日。

こっちは1ヶ月が30日だから、元の世界では大晦日になる。


昼からみんなで買い物に出掛けた。

大きな土鍋、それに大量の食材と酒を買っている。

なんか嫌な予感がするが、見なかった事にした、、、


今日の夕飯は鍋にすると言うから、俺はタレを作る事にした。

定番のポン酢とごまだれ。

見よう見まねで、それっぽい調味料を混ぜ合わせると、それなりの味になった。


風呂に入ってテーブルにつくと、鍋が運ばれてきた。

カセットコンロなんかは無いから、鍋だけがそのまま置かれている。


これは寄せ鍋かな?

肉、海鮮、野菜など、様々な種類の具材が煮込まれている。

立ち昇る白い湯気、ぐつぐつ煮える音と美味そうな匂いが、胃袋を刺激する。


「このお団子が美味しいです~」

「それは魚のつみれよ」

「さっぱりとしていて、とても美味しいです」

「ポン酢だな」

「こっちも美味しいですよ~」


レイアはポン酢、リワンはごまだれがお好みのようだ。

アルギュロスもテーブルの下で、美味そうに食べている。

あっという間に空になってしまった鍋を台所に持って行き、再び材料を入れて煮立たせる。

テーブルの上で火が使えないのが、こんなにもどかしいとは、、、


鍋の時に酒が進むのは俺だけじゃないらしい。

酒乱の3人も、コップ片手に鍋をつつき始めた。


「ちょっと飲み過ぎじゃないのか?」


それを聞いて、3人の動きがピタッと止まった。

顔を見合わせながら、ゆっくりとコップをテーブルに置いている。

—————今日は大丈夫そうだ。




明日からしばらく休む予定だし、せっかくの年越しだ。

今日は夜更かしをしよう。

みんなもまだ寝るつもりはないみたいだ。

腹一杯で動けないのか、床に座り込んでアルギュロスと遊んでいる。


夜も更けてきた頃、ヒトミが台所で何か作り始めた。

出来上がった料理をテーブルに置いて、みんなを呼んでいる。

夕飯に食べた鍋の出汁に、白い麺が入っていた。


「ヒトミお姉ちゃん、これは何ですか~?」

「年越しうどんよ!」

「・・・・・」

「私がいた所では、年が変わる時にこれを食べるの」


きっと蕎麦がないから、うどんにしたんだろう。

—————突っ込んだら負けだ

鍋から皿に取り分けられたうどんを、レイアとリワンも上手に箸を使って食べている。


「本当はおじやも食べたかったんだけどなぁ」

「来年はできるんじゃないのか?」


温かくなってきたら、今度はエルフの森に行く予定だ。

レイアの話だと、森には米がある。

今から楽しみだ。





「・・・・・また1つ年を取ってしまいました」


次の日の朝、レイアが小さな声で呟いていた。


「レイアはどうしたんだ?」

「たぶん年が明けて年齢が増えたから、それで落ち込んでるんでしょ?」


自分のステータスを確認してみると、年齢が18歳になっていた。

—————本当に増えている

年が変わると、年齢も加算されるらしい。

どの世界のどんな種族でも、女性は年を取る事を嫌うようだ。




年が明けてから3日間、暖かい家の中でのんびり過ごしたからか、久し振りに狩りに出た時、体が重くて大変だった。

ヒトミ達も自分のスタイルを気にしてか、最近はよく出掛けるようになった。

ゴロゴロしていた付けが回ってきたんだろう。


それにしてもアルギュロスは全然大きくならない。

もっと成長が早いと思っていたのに、まだまだ小さくて可愛いままだ。





だんだん寒さが和らいできて、クエストの報酬が元に戻った頃、エルフの森を訪ねる計画を立てた。

レイアがメラゾニアに来た時は、森の近くの村から商隊について行っただけだから、道がよくわからないらしい。

なのでまずはメラゾニアに行って、ギルドで情報を集める事になった。


俺とヒトミは食材を、レイアとリワンはその他の雑貨を買いに出掛けた。

エルフの森の近くの村からメラゾニアまで、約1ヶ月かかったと言っていたから、最低でもそれだけの食料が必要になる。

かといって、ヴァルアで1ヶ月分の食材を買う訳にもいかないから、途中立ち寄った町などで買い足していかなければならない。


今回の旅の目的はもちろん米だが、ついでに住む所も見つけたいと思っている。

報酬が上がった冬の間、ここぞとばかりにクエストをこなしたおかげで、かなり懐が潤っている。

家を買うのは無理だと思うが、借りる事は出来るだろう。

クラリー達もあの家は借りていると言っていた。

ならば他の町でも、家を借りられるはずだ。


買い出しを終え、家に帰って夕飯を食べて、布団に横になった。

遂に明日、エルフの森に向けて出発する。

やっと米に出会えるかもしれない。

だがもし無かったら、、、


—————どうしてくれよう!


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