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異世界ナラティブ  作者: SW
第四章
78/105

【24】手抜きにも程がある!


ヴァルアに帰って来てしばらくは今まで通り暮らしていたが、最近冷え込みが厳しくなってきた。

特に朝と夜がつらい。

暖房やこたつなどがある訳もなく、小さな暖炉を使って暖を取っている。


クエストに行くのも億劫(おっくう)になってきた。

そう考えるのは俺だけじゃないらしく、冬はクエストの報酬が増えるらしい。

こんな好機を逃してはならない!

マイホームの為、俺は冷えた体に鞭打って、クエストをこなしていった。


休みの日は錬金術などをしている。

この前の旅で蛙の魔物が毒攻撃を持っていたからだ。

・・・・・うん、俺は毒消しを持っていない。

レイアが解毒の魔法を使えると言っているが、そのレイアが居なかったら大変だ。

これはマズイと思って、フォルミナさんに教えてもらったのだ。

今は自分で材料を取って来て毒消しを作り、みんなにも持たせた。

余った分はギルドに売っている。


ヒトミとリワンはあまり外に出ない。

家の中でアルギュロスと遊びながら、暖炉の前でぬくぬく過ごしている。

最初はクエストをやっていたレイアも、俺に金を返した後は、2人と同じようにゴロゴロし始めた。


一番元気なのはやはりアルギュロスだ。

冬毛なのかどうかわからないが、前よりモフモフしている気がする。

そもそも魔物に冬毛なんかあるんだろうか?

寒い日も元気に庭を走り回っている。





「今日はご馳走だからね」

「何かあったっけ?」

「たぶん今日あたりがクリスマスよ」

「この世界にもクリスマスがあるのか?」

「無いわよ。だからたぶんって言ったでしょ?」

「・・・・・」

「クリスマスって何ですか~?」

「家族とか仲のいい人達と一緒に楽しく過ごす日の事よ」


今日は美女3人と楽しく過ごそう。

「爆発しろ!」って言われそうだな。


ヒトミに買い出しを頼まれたので、アルギュロスを連れて出掛けた。

3人は台所で忙しそうに料理を作っている。

頼まれた大量の肉と果物を買って家に帰った。

酒も買っておこうかと思ったが、(ろく)な事にならないだろうから止めておいた。


家に帰り、暖かい部屋の中でアルギュロスと遊んでいると、次々と料理が運ばれてきた。

さっきからずっといい匂いがしていたので、腹が減って仕方なかった。

ローストチキンにサラダ、スープにフルーツ。

クリスマス定番の料理がテーブルに並べられていく。


「おい、ちょっと酒の量が多くないか?」

「今日ぐらいいいじゃない!」

「・・・・・」

「大丈夫だから!」

「・・・・・もう看病しないからな」

「わかってるって!」


リワンとアルギュロスは肉にかぶりつき、ヒトミとレイアは酒に舌鼓をうっている。

リンガンブールから帰って来た辺りから、こいつらの酒の量が増えている気がする、、、


「次はこれよ!」

「ケーキ、、、じゃないな」

「フレンチトーストの上に果物を乗せてみたの」

「う~ん!甘くて美味しいですね~」

「これは凄いです!作り方を教えて下さい!」

「いいわよ」


出来れば生クリームのケーキが良かったが、生クリームってどう作るんだっけ?


「みんなこの帽子をかぶってね」

「これは何ですか~?」

「クリスマスの時の衣装よ」


ヒトミが白いフワフワのボールがついた赤い帽子を2人に渡している。

アルギュロスにも帽子をかぶせているが、すぐにあのボンボンは食い千切られるんじゃないか?

まぁ、それはいいとしておこう。

—————何で俺がトナカイなんだ?

茶色い帽子に紙で作られた角が、雑に取り付けられている。

手抜きにも程がある!


「ヒトミ、俺の帽子は何なんだ?」

「わかんないの?トナカイよ」

「トナカイならアルギュロスだろ?」

「最初はそのつもりだったんだけど、上手く作れなかったのよ」

「・・・・・」


飾りつけもプレゼントも無いシンプルなクリスマスだが、レイアとリワンも楽しんでいるようだ。

ニコニコしながらフレンチトーストを頬張っている。

美味い物が食えればそれでいいんだろう。


「このパンは凄く美味しい()()ね」

「ヒトミお姉()ゃんはお料理が上手()()~」

「リワンちゃん、ありがとー」

「・・・・・おい、レイアとリワンはもう酒を飲むな」

「どうして()()か?」

「酔ってるからだ」

「私はま()()いじょうぶ()()~」

「ダメだ!」


2人が持っている酒を取り上げると、レイアとリワンは頬を膨らませながら、フラフラと俺の所に歩いてきた。


「ご()()()()様~!」

「お酒を返してく()()い!」


2人は俺にしなだれかかって、頬にチュッチュッとキスをし始めた。


「—————お、おい!」

「ちょ、ちょっと2人共何してんのよ!」


俺はリワンを、ヒトミがレイアを引き離した。

バタバタ暴れるレイアを、ヒトミが羽交い締めにしたまま、隣の部屋に引きずって行った。

リワンはまだ俺にキスしようと、「ん~ん~」言いながら唇を尖らせている。

戻って来たヒトミが、今度はリワンを捕まえて、隣の部屋に連れて行った。

しばらくしてから帰ってきたヒトミが、ため息をつきながらテーブルについた。


「2人は?」

「ベッドに寝かせてきたわ」


それにしてもあの2人はキス魔なのか?

それならたまに飲ませるのは有りかもしれないな。

2人きりの時に、、、


「変な事考えてるでしょ!」

「・・・・・考えてねぇよ」

「ふん!鼻の下伸ばしちゃって!」

「・・・・・誤解だ」

「何を考えてるかは何となくわかるけどね!」


ヒトミはブツブツ言いながら、コップに酒を入れて一気にあおりだした。


「待て待て、お前まで潰れる気か!」

「お前はやめてって言ったでしょ!」


あっという間に目が座り始めたヒトミに、夜中まで付き合わされた。

そこで愚痴というより、悪口を延々と聞かされた。

もちろん俺の悪口だ。

スケベだとか変態だとか、言いたい放題言っていた。

何回も同じ話を繰り返している。

典型的な酔っぱらいだ。

一頻(ひとしき)(まく)し立てた後で、急に大人しくなり、そのままテーブルに突っ伏してしまった。


ヒトミの部屋のベッドはレイアとリワンに占領されているから、リビングにマットを敷いてその上にヒトミを寝かせた。

テーブルを片付けてから、俺もヒトミの隣で横になった。


散々なクリスマスの夜だった、、、


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