【23】学習しない奴らだ!
外が少し騒がしい。
目を開けると、外が明るくなっていた。
頭が少しボーっとするのは、二日酔いのせいか?
そのまま顔を横を向けると、ヒトミが俺に抱きついてスヤスヤ寝ていた。
反対側にはリワンが、頭の上ではレイアが丸まって寝ている。
頭を起こして周りを見てみると、馬車の中は大惨事になっていた。
俺は途中で寝てしまったので、あの後どうなったか知らないが、馬車の中に酒の樽とつまみが散乱している。
その匂いが馬車の中に充満して、酷い有り様だ。
「おい、起きろ」
「・・・・・う~ん」
「ヒトミ、起きろ」
ヒトミは薄っすら目を開けてしばらく俺を見つめた後、小さな悲鳴をあげて飛び退いていった。
俺の顔が近かったから驚いたんだろう。
「リワン、起きろ」
「・・・・・ご主人様~、おはようございます~」
目を覚ましたリワンは俺の顔を見てニコッと微笑んだ。
こっちはいつも通りだ。
「レイア」
「・・・・・とっくに起きていまふよ」
「嘘つけ!」
3人を起こして、馬車を片付けようとしたが、みんなフラフラしていた。
—————嫌な予感がする
「う~、頭が痛い、、、」
「私もです、、、」
「気持ち悪いです~」
学習しない奴らだ!
そろいもそろって二日酔いとは!
「リワンも酒を飲んだのか?」
「・・・・・はい~、もう少し甘いお酒がいいです~」
「美味しくないなら飲まなくてもいいんだぞ」
「・・・・・飲んでみたかったんです~」
ぐったりしている3人をそのままにして、馬車を綺麗に掃除した。
換気をして空気を入れ替え、マットを出してその上に3人を寝かせる。
「お薬ちょうだーい、、、」
「私にもお願いします、、、」
「私も欲しいです~」
「クラリーさんにもらった薬はもう無いのか?」
「・・・・・もうありません」
俺の頭も痛くなりそうだ、、、
町で薬と朝飯を買って馬車に戻ると、3人はまだうんうん唸っていた。
1人ずつ体を起こして薬を飲ませる。
苦いとか臭いとか、文句ばっかり言いやがるから、無理やり押し込んでやった。
「このお薬、いまいち効かないわね、、、」
「それしか売ってなかったぞ」
「リンガンブールのお薬は凄く効きました、、、」
「あっちは酔っぱらいが多くて需要があるから、いい薬があるんじゃないのか?」
「・・・・・何であんたは平気なのよ?」
「平気って訳じゃないぞ、お前らみたいに酷くないだけだ」
「・・・・・ずるいです」
「ちょっとは学習しろ!二日酔いが直ったら説教してやる!」
「う~、わかったから静かにしてよ、、、」
薬を飲んでから少し時間がたっても、まだ3人の具合は悪そうだ。
体調不良をいい事に、あれをしてくれ、これをしてくれと我儘ばっか言いやがる。
結局、今日一日はこいつらの看病で終わってしまった、、、
◇
次の日、すっかり具合も良くなって、睡眠もバッチリ取った3人は、元気に朝飯を食っていた。
俺が呆れ顔で視線を向けてやると、肩を落としてシュンっと小さくなっている。
「レイア、朝飯食ったらアイテムボックスを取りに行くぞ」
「はい」
「その後ですぐ出発するからな」
「はーい」
2人に留守番をさせて、レイアと一緒に店に向かった。
店に入って行くレイアを見送り、そのまましばらく待っていると、満面の笑みを浮かべながら店から出てきた。
この旅一番の笑顔を見せている。
苦労して手に入れた分、喜びもひとしおなのだろう。
苦労と言っても、ただ単にレイアが浪費家なだけなんだが、、、
そのまま馬車に乗り込み、町を出てルザーラに向かった。
馬車の中でレイアはヒトミから受け取った自分の荷物を、自分のアイテムボックスに入れていた。
この日レイアは終始ご機嫌だった。
◇
数日後、ヴァルアに帰って来た。
ルザーラで1泊、それ以外はキャンプだった。
魔物避けの薬草が使えなくなったので、夜襲を受ける事は何回かあったが、帰りは天候に恵まれ往路みたいな事は無かった。
家に帰ってテーブルについて、大きくふーっと息を吐く。
温泉も良かったし、知り合いも増えた。
いい骨休みになった。