【22】ここはキャバクラか?
店を出て馬車に戻った。
今度はヒトミとレイアが出掛ける番だ。
「レイアも一緒に行って来てもいいぞ」
「いいんですか?」
「アルギュロスは俺が見ておくから」
「ありがとうございます、行ってきます」
「じゃあ、気をつけてな」
3人を送り出して、俺はアルギュロスと留守番だ。
アルギュロスは馬車の中を走り回っていたが、俺が寝転がっていると腹に乗って来たので、そのまま撫でてやった。
目をつぶって大人しくなったが、尻尾はパタパタ動いているので寝てはいないんだろう。
取り敢えずアイテムボックスが出来上がるまでの2日間、宿をどうするか考えた。
3人を宿に泊めて、俺は馬車でアルギュロスと寝ようかな?
こいつは大人しいから、リードでつないでおけばいい。
そのまま夜のお店に出掛けても、大丈夫だろう。
もし馬車で寝るとか言い出したら、危ないから女の子は宿で寝ろって言ってやればいい。
アルギュロスと一緒にゴロゴロ遊んでいたら腹が減ってきたので、アイテムボックスから適当に食べ物を取り出して食べる事にした。
「ただいま~」
「はい、これお昼ご飯」
飯を食い始めたと思ったら、3人が帰って来た。
買ってきてくれた飯を受け取って、アルギュロスと分けて食べる。
「アイテムボックスができるまでどこで寝るんだ?」
「ここでいいんじゃないの?」
「俺がアルギュロスとここで寝るから、みんなは宿で寝てもいいぞ」
「「「・・・・・」」」
「女の子が外で寝るのは危ないだろ?宿が使える時はそっちで寝た方が安全だ」
「・・・・・怪しいわね」
「・・・・・怪しいですね」
「・・・・・怪しいです~」
「何がだよ?」
「私達を追い出して、エッチな店に行く気でしょ!このスケベ!」
「・・・・・いきなり俺にキスしてきた3人には言われたくないな」
3人は驚いた顔をして、顔を真っ赤にしながら、お互いの顔をチラチラ見ている。
「とととと、とにかく今日はみんなここで寝るからね!」
ヒトミは顔を真っ赤にしたまま俺を指さして叫び、そのまま3人で馬車から出て行った。
残された俺とアルギュロスは、取り敢えず買って来てもらった昼飯を口に運んだ。
晩飯まで特にやる事も無いので、連中が帰って来るまではアルギュロスと戯れた。
今日はよく遊んだ。
相手は魔物だったが、、、
夕方になって3人が帰って来たので、交代して晩飯に行く。
「じゃあ、先に晩飯食ってくる」
「私達まだ食べてないんだから、早く帰って来なさいよ!」
「・・・・・行って来る」
「返事は!」
「・・・・・善処する」
「やらないって言ってるようなもんじゃないの!」
ギャーギャーうるさいヒトミの声を背中で聞きながら、馬車を降りて町に向かう。
今日は飯を食ったら、大人しく帰ってやろう。
ちゃんとした昼飯が食えなかったから、晩飯はいい物を食べ、酒とつまみを買って帰った。
「あっ、帰って来た」
「おかえりなさい~」
「早かったじゃない?」
「早く帰って来いって言ってただろ?」
「・・・・・ふ~ん」
「何だよ?」
「何でも無いわよ。じゃあ私達も行って来るね」
「ああ」
3人が出掛けてから、酒とつまみを取り出し、アルギュロスにも肉串を分けてやった。
昨日までは温泉に入りながら酒を楽しんでいたのに、今は馬車の中で飲んでいる。
落差が激しすぎるな、、、
「ただいま」
「おかえり」
「あれ?飲んでるの?」
「ああ、飯食った帰りに買ってきた」
「私達も買ってきたんです」
「・・・・・飲むのか?」
「何か言いたそうね?」
「飲み潰れるなよ?」
「わかってるわよ!」
まるで宴会でも始めるかのような、たくさんの酒とつまみを取り出して、馬車の中に広げだした。
「ほら、コップ出しなさい」
「へ?」
「注いであげるから」
コップを差し出すと、ヒトミが酒を注いでくれる。
それを飲み干すと、今度はレイアが注いでくれた。
リワンの方を見ると、ワクワクした顔で酒を持って待機している。
ここはキャバクラか?
「何を企んでるんだ?」
「何も企んでないわよ!」
「・・・・・」
「こんな綺麗どころにお酌してもらえるなんて、あんたホント幸せ者ね」
「・・・・・」
もしかしてこれは夜遊び代わりのおもてなしなのか?
俺のコップが空になると、誰かがすぐに酒を注ぎにくる。
その上、飲み干すのを待ち遠しそうにしているから、ペースも早くなってしまう。
しこたま飲まされ、そのまま気を失うように寝てしまった。