【21】—————他意は無い!
日が暮れてから、リンガンブールでの最後の夕食に出掛けた。
3泊4日、温泉旅行ならこんなものだろう。
食事をしてから温泉に向かう。
3人はいつものように待ち合わせたクラリー達と、中に入って行った。
俺もゆっくり温泉を満喫して、そのまま夜の町に繰り出した。
さて、、、今日のお供はどなたでしょうかね?
「ご主人様~、待ってください~」
どこかで聞いた事のある声がしたが、立ち止まらずにそのまま先に進む。
後ろからパタパタと足音が聞こえてきたと思ったら、ドンっと背中に衝撃を受けた。
「ご主人様~、知らんぷりしないでください~」
「・・・・・今夜はリワンか?」
「はい~」
リワンが俺の首に腕を回してしがみついている。
「リワン、降りてくれ」
「私もおんぶして欲しいです~」
おんぶするのは別に構わないが、人目が気になるだろ、、、
「後でしてやるから」
「はい~、わかりました~」
リワンは俺の背中からパッと降りて、そのまま腕を組んできた。
「今日もお酒を飲みに行くんですか~?」
「う~ん、リワンがいるから今日は止めとくかな」
「む~、私も行きたいです~」
「リワンは酒が飲めるのか?」
「飲んだ事ありません~」
「・・・・・ジュースにするなら連れてってやるぞ」
「わ~い!」
3日連続で酔っぱらいの面倒を見るのは御免だ。
リワンと一緒に近くの店に入り、酒とジュース、それに肉串を注文した。
「今日はどこに行ってたんだ?」
「お買い物に行ったんですけど~、お土産しか売ってなかったんです~」
「まぁ、そうだろうな」
「帰りにフェンに寄って買い物します~」
「フェンで?」
「はい~、ご主人様にお願いするみたいです~」
「面倒臭い!断ってやる!」
「ご主人様はチョロいから大丈夫って言ってました~」
「・・・・・」
しばらく飲んで、そろそろ帰ろうかと店を出た。
夕飯もガッツリ食っていたのに、リワンはここでも馬鹿みたいな量の肉串を食っていた。
つまみと言うよりも飯だな。
さっき約束した通り、宿までリワンをおぶって行った。
周りの景色でも見ているのか、背中でゴソゴソと落ち着きがない。
落ちると危ないので、ふとももを支えている手に力を入れる。
—————他意は無い!
背中で暴れているリワンを落とさないように、四苦八苦しながら部屋まで運んだ。
「リワンちゃんにお酒飲ませたの!?」
「飲ませてねぇよ!」
おんぶされているリワンを見て、ヒトミが声を荒げる。
リワンをよく見ろ、ピンピンしてるだろ。
「大丈夫ですよ~」
「リワンがおんぶしろってうるさいんだよ」
「相変わらずリワンちゃんに甘いわね」
「・・・・・お前ら2人をおんぶしたからこうなったんだぞ」
「「うっ、、、」」
ヒトミとレイアがパッと目を背けた。
リワンを背中から降ろし、ベッドに腰掛けると、今度はアルギュロスが背中に登って来た。
爪が痛い、、、
血まみれになる前に、後ろに手を回してアルギュロスを捕まえる。
ひっくり返してベッドに転がし、腹をくすぐってやった。
アルギュロスは恍惚の表情を浮かべ、なすがままにされている。
「明日、フェンに寄るんだって?」
「リワンちゃんから聞いたの?」
「ああ」
「アイテムボックスを買いたいんです」
「そっか、ここには売ってないからな」
「はい」
「フェンなら売ってるかもしれないし、それならしょうがないな」
「レイアお姉さん、良かったですね~」
「はい!」
「買える時に買わないと、レイアはすぐお金を使うからな」
「・・・・・うっ」
しばらく話をしていると、アルギュロスが眠ってしまったので、俺達も寝る事にした。
リワンが俺と一緒のベッドで寝るから、アルギュロスを空いたベッドに寝かせて、タオルを掛けてやった。
みんな同時に寝るのは久しぶりな気がする。
◇
次の日、町を出てリンガンブールの転移ゲートに向かった。
転移ゲートで用を済ませた後は、予定通りフェンに飛んで買い物だ。
フェンの町に入って馬車を止め、まずは俺とレイアでアイテムボックスの話を聞きに行く事にした。
ヒトミとリワンは馬車に残って、アルギュロスと遊んでいる。
ギルドで教えてもらった店でアイテムボックスの作成をお願いした。
ここでもメラゾニアの店と同じように、大きさを選ばなければならないようだ。
「少ないなぁ、、、」
「そうなんですか?」
「ああ、メラゾニアはもっと種類があった」
「リワンさんにはどれを買ってあげたんですか?」
「これだな」
「け、結構高いんですね、、、」
「まぁ、便利だからな」
「そうですね、、、」
「貸そうか?」
「・・・・・お願いします」
レイアはリワンと同じ大きさのアイテムボックスを選んでいた。
買い物好きのレイアには、小さいかもしれない。
出来上がりは明後日になるらしい。
フェンにはアルギュロスと泊まれる宿が無いから、どうしようか、、、