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異世界ナラティブ  作者: SW
第四章
73/105

【19】—————なんて豪快な飲みっぷりなんだ


「アルギュロスも一緒に泊まれる宿はあったぞ」

「ほんと?」

「ああ、とりあえず2泊取った」

「はーい」

「それとレイア、ここではアイテムボックスは作れないみたいだな」

「調べてくれたんですね。ありがとうございました」


クラリーの家で昼飯を食べながら、さっき聞いた事を話した。

転移ゲートの事は後でヒトミに教えてやろう。


レイアの具合もすっかり良くなったみたいだ。

相変わらず美人で顔色もいい。

今みたいな澄ましたレイアもいいが、昨日みたいに酔ってだらしなくなっているレイアもいい。

美人はどんな時でも絵になるのだ。


昼食後、お世話になったクラリー姉妹に礼を言って宿に向かった。

もう少し泊まっていってくれと言われたが、彼女達にも生活があるのだからずっと邪魔する訳にもいかない。

ヒトミ達はこっちにいる間、クラリー達と一緒に温泉に行く約束をしていた。




「昨日はすみませんでした」

「別に気にしなくてもいいぞ」


俺の横に来てレイアが昨日の事を詫びてきた。

少し顔が赤くなっている。

昨日の事はどこまで聞いたんだろうか?


「楽しくて、つい飲み過ぎてしまいました」

「全然覚えてないのか?」

「お店を出てからの事は覚えていません」

「もう大丈夫か?」

「はい、お薬が効いたみたいです」


酔って暴れたり、からんだりしないんだから可愛いもんだ。

昨日みたいにキスしてくれるんなら、毎日飲んでくれて構わない。




宿に着くとすぐに3人は買い物に出掛けて行った。

俺は宿に残って、アルギュロスと遊んでいる。

こっちに来てからは俺達が食事や温泉に行っている間、アルギュロスは留守番だったから少し可哀想だ。

出掛けるまでの間だけでも一緒に遊んでやろう。


抱き上げて口の中を覗いてみると、まだ小さいながらも牙がある。

俺によじ登ろうとしている足にも、鋭い爪が生えている。

ボールで遊んだり、布を引っ張り合ったり、アルギュロスを構い倒してやった。


騙されてはいけない!

キャンキャン可愛く鳴いているが、こいつは魔物だ。

騙されてはいけない!

ぬいぐるみみたいにフワフワしているが、こいつは魔物だ。

騙されてはいけない!

クリクリした目で俺を見ながら、尻尾をパタパタ振り回しているが、こいつは魔物だ。


大きくなっても、こんな風にじゃれついてくるんだろうか?

—————血まみれになるな

その時は是非甘噛みでお願いしたい。


夕方になったので、アルギュロスにご飯を食べさせた。

食べ終わると、急に大人しくなったので、ベッドに運んで背中を撫でてやった。

気持ち良さそうに目を瞑ってウットリしている。

このまま寝てしまいそうだ。

この後、出掛けるから丁度いい。


3人が帰って来てから、眠ってしまったアルギュロスを箱に入れて、一緒に夕食に出掛けた。

夕食後はそのままみんなと温泉に向かう。




昨日、風呂で酒を飲んでいる人達がいたので、今日は俺も酒を持ち込む事にした。

湯につかり、コップに入れた酒を一口あおる。


「ぷはぁー!」


ついつい声が出てしまった。

酒を飲みながら、暖色で彩られた町の夜景を眺めていた。

こんな幻想的な雰囲気の中だと自然と酒も進んでしまう。


「兄ちゃん、美味そうに飲むなぁ」


振り向くと、りっぱな髭をたくわえた小柄でムキムキのおじさんが、酒樽を両手に抱えて、にかっと笑っていた。


「隣、いいか?」

「ええ、どうぞ」


《看破スキル》でこのおじさんの情報を確認してみた。

名前はカルバン、71歳でレベル18、鍛冶スキルを持つドワーフだ。

斧スキルや酒耐性とかいうスキルも持っていた。

ドワーフだし、酒に強いって事か?


お互い自己紹介をして、酒を飲みながら話をした。

ドワーフ達で護衛を含めた商隊を作り、アルベーリという町から各地を回っているとの事だ。

いろんな町に商品を納めて、家に帰る前にリンガンブールに寄り、全員で温泉を楽しんでいるらしい。


「わざわざ商隊を作って来たんですか?」

「おうよ、温泉で飲む酒は格別だからな!商売はついでだ!」


ガハハハッっと笑いながら、小さな樽に入った酒を、そのままに喉に流し込み、グビグビ酒をあおっている。

—————なんて豪快な飲みっぷりなんだ


「俺よりよっぽど美味そうに飲みますね」

「そうか?」


初対面だが意気投合してしまったカルバンさんと、この後も飲みに行く事になった。

カルバンさんは一緒に来ているドワーフの人達に、先に温泉を出る事を伝えに行った。

外でカルバンさんが来るのを待っていると、ポンポンと肩を叩かれた。

ため息をつきながら振り返ると、腕組みしたヒトミが立っていた。


「今日はヒトミか?」

「ええ、そうよ。昨日はレイア、今日の朝はリワンちゃん、そして今夜は私よ」

「俺、今から飲みに行くんだけど、、、」

「大丈夫よ、付き合ってあげる」


俺の腕をガッチリ捕まえて、フフンと笑っている。


「おう、待たせたな!」


前からカルバンさんが、手を振りながらガニ股でズンズン歩いてきた。

ヒトミは俺とカルバンさんの顔を交互に見ながら、小声で「誰?誰?」と聞いてくる。


「ん?綺麗な嫁さんだな」

「「違います!」」

「ガハハハ、違うって言う割に息が合ってるじゃねぇか!」

「「・・・・・」」

「お嬢ちゃんも飲みに行くか?」

「いいんですか?」

「構わんぞ、多い方が楽しいからな!」


俺とヒトミはカルバンさんの後に付いて歩いて行く。

ヒトミが誰?誰?とうるさいので、温泉で知り合ったドワーフのカルバンさんだと教えておいた。


カルバンさんは温泉から少し離れた所にある小さな店に入って行った。

外にまで楽しそうに騒いでいる声が聞こえてくる小さな酒場に足を踏み入れた。


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