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異世界ナラティブ  作者: SW
第四章
71/105

【17】人の話を聞いちゃいない、、、


リビングに案内されて、席についていると、クラリーがお茶を淹れてくれた。

みんなでお菓子を食べながら、聞きたかった事を聞いてみた。


彼女達の両親は小さな村に住んでおり、3人は冒険者としてここリンガンブールで生活している。

この家を借り、いつか村で店を開く為に、クエストをしながらお金を貯めているとの事だ。


リンガンブールには温泉があった。

だが宿には無く、大きな銭湯のような所に行けば入る事ができる。

残念ながら混浴は無かった。


観光名所はその銭湯にある露天風呂から見える景色、火山の展望台などがある。

展望台は馬車で2時間ほどの距離にあるが、火口は見る事が出来ないらしい。

後はギルドにでも行って、いろいろ調べてみようと思う。




「ねぇ、今日の夕飯はどうする?」

「みんなでどこか食べに行くか?」

「それがいいです~」

「クラリー達も行くでしょ?」

「はい」

「俺は飯食ったら、そのまま温泉に行ってくるから」

「私も行くわよ!」

「私もです!」

「私も行きます~!」


アルギュロスはこのまま家でお留守番だ。

家を出る前に、飯を食わせて遊んでやった。

悪いけど今日はここで大人しく待っててくれ。


薄暗くなったきた頃、アルギュロスをリードで繋いで家を出た。

お勧めの店で夕食を食べてから、みんなで温泉に向かう。

みんなが入り終わるのを待つのは大変なので、風呂から出た後は自由行動となった。

建物の中でみんなと別れ、タオル片手に浴場に入って行った。


—————凄い!


人は多いが、そう思わせない広さの浴場だ。

いろんな種族の人達が、風呂を楽しんでいる。


軽く体を洗い、露天風呂の方に歩いて行くと、そこから絶景を眺める事ができた。

夜空にはたくさんの星が輝き、町全体にオレンジ色の灯りが広がっている。

景色を眺めながら酒を飲んでいる人や、岩に座って涼んでいる人。

普段とは違う雰囲気がとても心地よい。


「か~、たまらん!」


湯につかると、自然と声が出てしまった。

この気持ち良さなら、すぐに旅の疲れも癒されそうだ。




風呂を満喫し、外に出て夜風に当たりながら町に向かって歩きだすと、袖を後ろに引っ張られた。

振り返ると、ニコニコした顔のレイアが立っていた。

湯上りのせいかほんのりと顔が赤く、いつもより艶っぽい。


「レイア」

「はい」

「何してるんだ?」

「お散歩です」


散歩と言いながらも、俺の袖を離そうとはしない。

たぶん俺を監視するために、このまま付いて来るんだろう。


「何でレイアなんだ?」

「クジで私になりました」

「俺が出て来るまで待ってたのか?」

「いえ、リワンさんが出た事を教えてくれました」

「なるほどな、、、」


俺の腕をつかんだままのレイアと一緒に町を歩いて行った。

美人と一緒に歩くのは気持ちがいいもんだ。


「少し飲んでくか?」

「はい!」


近くの店に入り、酒と焼き鳥のような食べ物を注文する。

店は大賑わいだった。

どこの世界でも風呂と酒は切り離せないものらしい。


「レイア、風呂はどうだった?」

「最高でした!」

「確かに気持ち良かったな」

「はい、また明日も来ます!」


酔っぱらい達の騒がしいBGMを聞きながら、レイアと話をした。

いつもと違う雰囲気のせいなのか、レイアは酒のペースがやけに早い。

風呂あがりと酒の影響で、顔を赤くしながら饒舌に話をしている。

俺はほとんど相槌を打っているだけだ。


「レイア、ちょっと飲み過ぎじゃないのか?」

「まだまだ大丈夫()()

「・・・・・」

「次は何を飲みま()か?」

「いや、俺はもういいよ、、、」

「わかりま()た、さっきと同じ物()()ね」

「・・・・・」


人の話を聞いちゃいない、、、

呂律(ろれつ)も怪しくなってきている。


しばらくすると案の定、酔い潰れた。

テーブルに突っ伏している。

—————美人がする格好じゃないぞ!


会計を済まし、レイアをおんぶして店を出た。

声が小さくてよくわからないが、背中から何やらブツブツ聞こえてくる。

太ももと尻の感触を手に焼きつけながら、クラリーの家に向かった。




家の庭に入った辺りで、リワンが家から出てきた。


「おかえりなさい~」

「ただいま、リワン」

「レイアお姉さんはどうしたんですか~?」

「酔っぱらってる」


俺の背中を心配そうにのぞき込んでいるリワンにドアを開けてもらって部屋に入り、レイアを床に降ろした。

そのまま立ち上がろうとした時に、レイアが俺の首に腕を回して抱き付いて来た。

そして何かブツブツ言いながら、俺の頬に唇を当てた。


「「「キャーーー!」」」

「「あーーー!」」


3姉妹は黄色い悲鳴を、ヒトミとリワンは驚きの悲鳴をあげた。

レイアは俺の頬にチュッチュッと何回もキスしている。

首に巻き付いている腕を無理やり外そうとしたが、力が強く外れない。

レイアはそのまま俺の胸にしなだれかかってしまった。


「クラリーさん、レイアは今日どこで寝るんですか?」

「は、はい。こちらです」


ここで腕を外すのは諦めて、寝室まで運んでから外そう。

レイアを所謂(いわゆる)お姫様抱っこで抱き上げ、クラリーの後に付いて歩いて行く。

お姫様抱っこ見た女性陣はまた悲鳴を上げていた。


案内された部屋に入り、レイアをベッドに寝かせると、今度は大人しく腕を放してくれた。

小さな寝息を立てて、気持ちよさそうに眠っている。


「では、戻りましょうか?」

「・・・・・戻りたくないな。いろいろ言われそうだ、、、」

「きっと言われるでしょうね」

「クラリーさん、楽しんでるでしょ?」

「そんな事ありませんよ」


フフフと笑いながら、クラリーは俺の手を引いて部屋を出て行く。

—————はぁ、、、


ドアを開けてリビングに入ると、目をギラギラ輝かせている猛獣達の姿が見えた。


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