【06】Oh!バレテーラ
「じゃあ座って。とりあえず説明するけどわからない事があったらギルドで聞いてよ」
「わかった」
「もらった紙を見せて」
壁に剣を立てかけて椅子に座り、さっきもらった紙をヒトミに渡す。
ヒトミはお茶を置いてから、紙を流し読みして話し始めた。
「じゃあタグの説明からするね。タグはとても大事な物で、身分証明にもなるの」
「了解」
「次はランクの説明ね。Fが一番低いランクでそこから順にE・D・C・B・A・S・SSの順番で上がっていくの。一番高いランクがSSね。ランクは終わらせたクエストの数と内容で上がるの。Dランクより上は試験もあるからね」
「ふむふむ」
「でもヴァルアだとDランクまでしか上げれないから、Cランクになるにはもっと大きな町で試験を受ける必要があるわ」
「面倒だな」
「ランクはタグの色で判断できるわ。白(F)・緑(E)・黄(D)・青(C)・赤(B)・銀(A)・金(S)・黒(SS)の順番よ。ランクが上がった時にあのガラスみたいな板の上に手を置くとタグの色が変わるって仕組みになってる」
「なるほど、わかりやすいな。でも汚れるんじゃないのか?白なんて特に」
「大丈夫よ、何でか知らないけどタグは汚れないの。それに他人のタグを取る事もできないわ。道具を使ってもダメね、触れないのよ。でも死んだ人のタグは取れるようになるけどね」
「へぇ~、ちょっとお前のタグを取ってみてもいいか?」
「お前はやめて」
「・・・・・ヒトミのタグを取ってみてもいいか?」
「『ヒトミさん』か『ヒトミ様』って呼ばせたいところだけど、まあいいわ。———ほら、取れるもんなら取ってみなさい!」
顎を少し上げ椅子から腰を浮かし、前かがみになってタグを取りやすくしてくれている。
手を伸ばしてタグを取ろうと立ち上がった瞬間、俺の目の前に絶景が現れた。
———谷間だ!
もともと大きな胸なのに、テーブルに両手をついている為か谷間がさらに強調されている。
い、いかん!
タグを無視して谷間に突っ込みそうになる手を鋼の意思で抑え込み、震える手をタグに伸ばす。
「——本当だ、取れない」
タグが手をすり抜けている。見えているのに触れない。どんな仕組みか知らないがすごい!
タグよりも谷間を凝視してしまうのは、男の遺伝子に組み込まれている逃れられない宿命なのだ。
「取れないでしょ?」
「ああ、すり抜けるから触る事もできない」
「さっきも言ったけど死んだ人のタグなら取れるわ。次にそのいやらしい視線を私に向けたら、あんたで実践して教えてあげるね。フフフ、楽しみだわ」
Oh!バレテーラ
俺の目を真っ直ぐ見つめ———いや、睨んでいる。表情は笑っているが、眼が笑っていない。目を逸らせない、逸らしたら負ける気がする。冷たい汗を背中に感じながら、俺も負けじとヒトミの目をジッと見て作り笑いをする。その一方で話を逸らそうと頭をフル回転させる。
———な、何か話の流れを変える情報は無いのか!?
「ヒ、ヒトミは黄色のタグだからDランクか?」
「ええ、そうよ」
ヒトミは氷の様な冷たい眼をしたまま返事をする。
まだだ!もっと他の話題を!
部屋の空気まで冷たくなってきた。
「ヒトミはレベル68か、すごいな!」
「—————えっ!」
「レベル68でもDランクなんてSSランクの奴はレベルいくつなんだろうな?」
「ちょっと待って!」
ヒトミが大きな声で叫びながらテーブルに両手を付いて立ち上がった。
何かに驚いているみたいだ、眼が大きく開いている。
「今なんて言ったの?」
「え?レベル68でDならSSの人はレベルいくつだろうな?って」
「あんた私のレベルがわかるの?」
「見えてるじゃないか。【 ヒトミ 16歳 Lv.68 】って」
「自分のレベルが見えるのは自分だけ、そう聞いてるわ。ギルドも知らないと思う。普通は他人のレベルは見えない、、、」
「ギルドでもわからないのか?」
「———たぶんね。レベルについて何も言われた事ないから」
冷たいだけじゃない、危険なものを見る様な警戒した眼差しを俺に向けている。
やっちまった!
とてつもなく大きな地雷まで踏んでしまったようだ———