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異世界ナラティブ  作者: SW
第四章
69/105

【15】さすがはコミュ力お化け


結局、2日足止めを食う事になった。

雨は昨日から降ってはいないのだが、道の状態と寝不足回復の為、今日1日ゆっくり休む事にした。


「アルちゃんと散歩してくる」

「私も行きたいです~」

「私も行きます」


俺は行かない。

もちろん疲れるからだ。

3人は原っぱを元気に走り回るアルギュロスを追いかけている。

元気な事だ。

俺は今のうちに少し眠っておこう。




—————ぐはっ!


腹に強い衝撃を受け、薄っすらと目を開けてみると、アルギュロスが腹の上で飛び跳ねていた。

そのまま上に持ち上げてやると、尻尾をブンブン振り回して喜んでいる。


たまには遊んでやるか—————

布を丸め、紐でグルグル巻きにしてボールを作り、馬車の隅に放り投げてやった。

アルギュロスは勢いよくボールを追いかけ行き、前足で抑え込んで、激しく噛みついている。


いつもの可愛いアルギュロスとは違う、魔物の一面を見てしまった、、、

いつかあの勢いで俺にじゃれついて来るんじゃないかと考えると背筋が寒くなる。

余計な事をしてしまったと後悔したが、アルギュロスはひとしきり遊んだ後で、ボールを咥えて俺の方に持ち帰って来た。

ボールを受け取り、頭を撫でてやる。


「羨ましいくらい懐いてるわね、、、」

「ご主人様ばかりズルいです~」

「そのボールを貸して下さい!」


馬車の外から3人娘の妬みの声が聞こえてきたので、レイアにボールを投げてやった。

アルギュロスはそれを追いかけ、そのまま馬車からレイアの胸に飛び込んで行った。


「私の所にも飛んで来てくれました!」

「次、私に投げて!」

「私にも投げて下さい~」


3人は順番にボールを投げ合い、飛び込んで来るアルギュロスを抱きしめている。

キャーキャーと黄色い声が騒がしい。

もうちょっと遠くでやって欲しい。




「・・・・・癒されたわ」

「楽しかったです~」

「満足しました」


3人はホクホク顔で帰って来た。

アルギュロスは馬車の隅でボールにじゃれついている。

かなり気に入ったみたいだ。

しかしもっと丈夫な物にしないとダメだな。

もうボロボロになっている。





一夜明け、今日から再びリンガンブールを目指して出発する。

昨晩、魔物の襲撃は1回しか無かった。

1回くらいなら大した事はない。


「雨は止んだから大丈夫かなって思ってたけど、やっぱり魔物って夜にもちゃんと襲って来るのね」

「魔物避けの薬草はちゃんと効果があったんだな」

「みたいね」

「リワンがいて良かったよ」

「えへへ~」

「リワンさんがいなかったら見張りが必要です」

「ああ、夜の見張りはやりたくないな」


御者台に座っているリワンの頭を撫でてやると、尻尾をブンブン振り回している。

アルギュロスと変わらない。


天気は良くなったが、やはり道はまだぬかるんでいる。

思うように進む事が出来ない。

予定よりも時間がかかりそうだ。




「ご主人様~、何かあります~」


馬車を操縦していたリワンが俺を呼んでいる。

御者台の方に行って、リワンが指さした方向を見てみると、道脇に1台の馬車が見えた。

馬車の中から3人の女性がこっちの様子を伺っている。


「あ~、たぶん壊れてるな、、、」

「なんか変に傾いてるわね」

「車輪でしょうか?」


ヒトミとレイアも御者台から前を覗き込んでいる。

リワンにあの馬車の近くで止めるように指示を出し、馬車を降りて様子を見に行った。


「どうしましたか?」

「クエストの帰りに馬車が壊れちゃって、、、」


馬車の中には冒険者風の女性が3人、疲れた顔で座っていた。


「どこに行く予定だったんですか?」

「リンガンブールに帰る所でした」

「俺達もリンガンブールに向かっていたんで、一緒に行きませんか?」


3人は小さな声で相談している。

まぁ、いきなり知らない人に一緒に行こうと言われても困るしな。


「ご一緒させてもらっていいですか?」

「ええ、構いませんよ」


馬車にいるヒトミに昼食の準備を頼み、3人を馬車に案内した。

みんなで昼食を食べながら、お互いに自己紹介をした。


彼女達は3人姉妹で長女がクラリー、次女がミルン、そして三女がステーシア。

クエストを終えて帰る途中で馬車が壊れてしまい、彼女達ははその壊れた馬車の中で1晩過ごしたみたいだ。


「馬車はどうするんですか?」

「そうですね、ここに置いていくしか、、、」

「馬車なら運べますよ、馬は無理ですけど」

「本当ですか?」

「ええ、大丈夫です」



必要な荷物だけ取り出してもらい、壊れた馬車をアイテムボックスに入れた。

リワンにはこのまま馬車を任せ、3姉妹はヒトミとレイアと一緒に馬車に乗ってもらい、俺が向こうの馬に乗って行く事になった。


3人は馬車をアイテムボックスに入れた事に驚いている。

俺達の馬車よりもかなり小さかったけど、この大きさの物を入れるとやはり驚かれてしまう。




午後からはいつものペースで進む事が出来た。

クラリー達もすぐに打ち解けたみたいだ。

さすがはコミュ(りょく)お化け

こういう事はヒトミに任せておけばいい。


たまに襲って来る魔物は、ヒトミとレイアが馬車の中から魔法で片付けている。

夕暮れが近づいてきた頃、キャンプをする為に馬車を止めた。


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