【09】「「な、なんだってー!!」」
次の日、言われた通りにギルドに顔を出した。
特に何かする訳でも無く、ギルド長から労いの言葉と、これからもよろしく頼むと言われただけで済んだ。
家に帰ってもやる事が無いので、俺はそのまま狩りに出掛けた。
ヒトミは家に帰ると言って、そのまま歩いて行った。
今日は少し早めに狩りを切り上げて家に帰り、夕食を作る事にした。
たまには俺も作った方がいいだろう。
せっかくマヨネーズを作ったのに、サラダにしか使っていない。
今日は鶏肉の照りマヨにしよう。
鶏肉が焼きあがったら、そのままアイテムボックスで保管しておき、みんなが帰って来てから調味料で味付けして、最後にマヨネーズをサッと絡ませて出来上がり。
お手軽だな。
「う~ん、美味しい!」
「これもマヨネーズを使っているのですか?」
「ああ、そうだよ」
「とても美味しいです~」
「こんなの食べてると本当にご飯が欲しくなるわね」
「確かに、、、」
「照りマヨ丼が食べたーい!」
「ご飯って何ですか~?」
「白くて小さな粒がお米で、ご飯はそれを炊いた食べ物よ。」
「・・・・・白くて小さい粒ですか?」
「レイア、見た事あるの?」
「こんな感じですが、元の色は白ではありません。手を加えると白くこの形になります」
そう言って、レイアは少し欠けた楕円の絵を描いて見せた。
「・・・・・ヒトミ」
「・・・・・ええ、間違いないわ」
「レイア、どこでこれを見たんだ?」
「エルフの森ですが、、、」
「「な、なんだってー!!」」
俺とヒトミは噛みつかんばかりの勢いでレイアに迫る。
レイアはその迫力に押され、仰け反りながら話を続けた。
「エ、エルフの森の非常食みたいな物ですが、実際は鶏などの餌に少しずつ混ぜて使っています。固いからかパンの方が断然人気です」
「それは生でバリバリ食う物じゃ無い!」
「そうよ!何をやってんのよ!」
「す、すみません、、、」
「煮てみようとは思わなかったのか!」
「本当よ!」
「わ、私に言われましても、、、」
「パンは作れるのに、ご飯が作れないとは何事だ!」
「話にならないわね!」
俺達の迫力に押され、レイアはビクビク震えている。
「ヒトミ、どうする?」
「次の旅行はリンガンブールよね?」
「そうだ」
「お米、食べられちゃうかな?」
「レイア、さっき非常食みたいな事を言っていたが冬に食べるのか?」
「いいえ、よほどの非常時にしか食べないはずです」
「なるほど」
「なら少しくらい後回しにしても大丈夫じゃない?」
「すぐにでも飛んで行きたい所だが、冬に遠出はしたくないしな」
「そうね」
「レイア!」
「は、はい!」
「リンガンブールの旅行が終わって暖かくなってきたら、エルフの森に案内してくれ!」
「お願い!」
「わ、わかりました」
「・・・・・ついに見つけたぞ」
「・・・・・ええ、やったわね」
不気味に笑いながら、俺とヒトミは固い握手を交わした。
「さっきのご主人様とヒトミお姉ちゃん、とても怖かったです~」
「ええ、私も食われるかと思いました、、、」
「ビックリしました~」
「食とは恐ろしい物ですね、、、」
「でもお米という物を使ったお料理は楽しみです~」
「そうですね、2人の作るお料理はとても美味しいですから」
「・・・・・ワクワクします~」
「・・・・・待ち遠しいですね」
不気味な笑みを浮かべる2人の横で、レイアとリワンも頬を緩めていた。
◇
夏の暑さもすっかり影を潜め、過ごしやすい気候になって来た。
秋がやって来たのだろう。
俺はほとんど毎日、旅行とマイホームの資金稼ぎの為にクエストをこなしていた。
家がいくらくらいで買えるのか知らないが、マイホームはまだまだ先になるだろう。
エルフの森に本当に米があったら、その近くに建てるのも良いかもしれない。
「ご主人様~、乗馬の練習がしたいです~」
家に帰って来た俺に駆け寄って、腕に抱き付きながら上目づかいで頼んできた。
俺に頼み事をする時、リワンはいつもこうだ。
ヒトミの入れ知恵に違いない。
「乗馬?俺が教えるのか?」
「いいえ~、宿屋のおじさんに教えてもらいます~」
「私もやりたい!リワンちゃん、一緒に行こう」
「はい~」
「わざわざ俺に言わなくても、自分のお金なら好きな事をしてもいいんだぞ」
「ご主人様には言わないとダメなんです~」
「・・・・・なら奴隷から解ほ—————」
「お断りします~」
—————クッ
また断られた!
しかも食い気味に、、、
何回言っても聞きやしない!
「明日から行ってきますね~」
「ああ、わかった」
「では、明日から私と一緒にクエストに行きませんか?」
「2人でか?」
「はい、その方が安全だと思います」
「そうだな、いいよ」
◇
次の日から4人で一緒に家を出るようになった。
途中で分かれて俺とレイアはギルドに、ヒトミとリワンは乗馬の練習に向かう。
ギルドに向かって歩いていると、前から歩いて来たフォルミナさんに声を掛けられた。
「おはようございます。この前はお世話になりました」
「フォルミナさん、お久しぶりですね」
「そうだ、また薬草採取の護衛をお願いしたいんですが、、、」
「ええ、大丈夫ですよ」
「明日の朝、ギルドに来てもらえますか?」
「わかりました」
フォルミナさんと別れ、ギルドに寄ってから馬で狩りに向かった。
「レイア、今度指定クエストやろうか?」
「さっきの女性ですか?」
「そうだ、護衛と手伝いだな」
「わかりました」
町を出て、今日の狩り場に向かって馬を走らせた。