【05】知らない方がいい事もあるだろう、、、
洞窟の中は、壁の所々にランプが灯されているだけで、かなり暗かった。
ギルドの人達も合流し、足元に気を付けながら慎重に進んで行く。
何も警戒していないのか、人も罠も何も無い。
道の先が少し明るくなってきた所で、岩陰から先の様子を窺った。
大きな広場になっている場所に、数人の盗賊がたむろしていた。
椅子に座って話をしている者や、酒を飲んでいる者など様々だ。
「何人いるかわかるか?」
「ちょっと暗いから正確にはわかんない」
「リワンを連れて来ればよかったな、、、」
ここから見えるだけで7人、入り口の2人を合わせて9人。
一番高いレベルが19、後は15くらいだな。
全部で10人程度って言ってたから他に居たとしても数人だろう。
「あのスキンヘッドの奴が炎魔法を使う」
「うん」
「酒を飲んでる2人が弓術スキル持ちで、一番レベルが高いのは奥に座ってる奴だ」
「わかった」
「見える分を片付けたら光魔法で部屋を明るくしてくれ。他に居ないか確認する」
ヒトミに盗賊達の情報を伝え、突入する準備をする。
ガラにも無く緊張しているヒトミの頭を撫でて、木刀を取り出し深呼吸をした。
「じゃあ、行くぞ」
「う、うん。気を付けてね」
岩陰から飛び出して一直線に盗賊に向かって走る。
不意を突かれて慌てている一番近くにいた盗賊を殴り倒し、次の相手を探した。
奥から飛んで来た矢を弾こうとしたら、その前にヒトミの魔法で燃やされてしまった。
バスケットボールくらいの水の球も飛んで来ている。
ヒトミの魔法は気にせずに、弓を持つ2人に近づきそのまま倒す。
盗賊達がいきなりの襲撃にパニックになっている所に、さらにギルドの人達もなだれ込んで乱戦になっている。
ヒトミの水魔法が一番レベルの高い奴に集中して撃ち込まれているのを見て、俺は少し離れた場所にいる魔法を使う盗賊に狙いを定めた。
相手の炎魔法を氷魔法で撃ち消しながら接近し、そのまま殴り倒すと部屋の中がパッと明るくなった。
ギルドの職員が盗賊を縛り上げている間、俺とヒトミで周囲を警戒する。
手当を受けている職員が数人いるが、大きな怪我ではなさそうだ。
盗賊を連行する者と洞窟内を捜索する者に分かれ、俺とヒトミは洞窟内を探索していった。
一度入り口に戻って、明るくなった洞窟内を奥の部屋まで調べて行った。
隈なく洞窟内を見て回ったが、特に目ぼしい物は無かった。
隠し通路や金銀財宝でも見つかるかと思ってドキドキしていた俺の気持ちを返して欲しい、、、
洞窟の探索を終え馬車に戻ると、盗賊達は馬車に転がされていた。
全部で11人、手足をロープで縛られ、目と口も布で塞がれている。
このままギルドまで連行して行くとの事だ。
俺達は怪我もしなかったし、これで無事終了だ。
そのままギルドに戻り、中に入って行ったヒトミを外で待っていた。
そのまましばらく待っていると、ニコニコしながらヒトミが出て来た
「明日、クエスト完了の手続きをやるって」
「俺は行かなくてもいいんだよな?」
「うん」
一緒に家に帰って、昔寝ていた裏小屋で風呂を沸かし、ゆっくり入って今日の疲れを癒した。
「今日はありがと」
「あんまり戦ってないのに、なんだか疲れたな、、、」
「うん」
夕食後、3人がワイワイ話をしているのを寝転がって聞いていた。
レイアとリワンは順調にクエストをこなしているみたいだ。
明日からは森に入って、アイテムと魔石を集めるらしい。
布団に入り目を閉じると、盗賊達の事が少し気になった。
この世界ではどうなるんだろう?
奴隷落ちなのか?それとも処刑されるのか?
知らない方がいい事もあるだろう、、、
人間相手の戦闘に気疲れしたのか、すぐに眠ってしまった。
◇
盗賊退治から数日後、いつものようにクエストを終わらせて家に帰った。
家では3人が夕食の準備をしている。
その間に裏の風呂で汗を流し、そのまま席に着くと夕食が運ばれてきた。
—————ん?
何故か俺の皿だけ山盛りだ。
「これはリワンが盛りつけたのか?」
「違います~、ヒトミお姉ちゃんですよ~」
「・・・・・」
「ヒトミ、何を企んでるんだ?」
「・・・・・何も企んでないわよ」
見るからに怪しい、、、
全然目を合わそうとしない、、、
どこかばつが悪そうな顔をしているようにも見える。
「正直に吐いたら楽になるぞ」
「・・・・・」
「ヒトミ」
「・・・・・ハイゼルン子爵のお屋敷に招かれてるの」
「ハイゼルン子爵って誰だ?」
「この辺りを治めている領主よ」
「ふ~ん」
「・・・・・あんたも一緒に行くのよ」
「—————は!?」
「盗賊退治のお礼がしたいんだって」
「断る!」
「ダメに決まってるでしょ!」
ヴァルアから馬車で数日掛けて、フェンという町にある子爵の屋敷に行かなければならないらしい。
「いつ行くんだ?」
「・・・・・明後日」
「急だな、、、」
「私だって今日言われたんだもん!」
「はぁ~」
「明日、ギルドで打ち合わせだからね」
服も持ってないし、礼儀作法も知らないのに大丈夫なのか?
あー、行きたくない、、、
何とかして断れないかと考えながら、山盛りの夕飯を口に運んだ。