【04】なるほど、、、そういう事か!
「次の旅行先が決まったわよ」
「・・・・・」
「ん?どうしたの?」
「俺も行くのか?」
「当り前じゃない!」
行きたいなら3人で行って来いと言いたかったが、グッとその言葉を飲み込んだ。
絶対ギャーギャー言われるに違いない。
俺は学習する生き物なのだ。
「どこに行くんだ?」
「リンガンブールって所よ」
「何でここにしたんだ?」
「何でって、あんたのメモを見て決めたの」
「何て書いてあったっけ?」
メモを取り出して確認してみると、火山で有名な所らしい。
—————火山
なるほど、、、そういう事か!
「—————温泉か!?」
「温泉があるかわからないけど、無くても暖かいってだけで十分よ」
「温泉って何ですか~?」
「自然に出来た風呂みたいなもんだ」
「それは楽しみですね」
「後3ヶ月くらいで寒くなって来るわよ」
「じゃあ、寒くなる少し前に行くか?」
「やった~!」
夕食後、水魔法を練習している俺の横でレイアとリワンが話をしていた。
「リワンさん、明日から私と一緒にクエストをやりませんか?」
「いいですよ~」
「私もアイテムボックスが欲しいんです!」
「とても便利ですよ~」
「次の旅行までにお金を貯めます!」
「頑張って下さい~」
「リンガンブールでもたくさん買い物したいです!」
「私もです~」
「頑張りましょう!」
「はい~!」
「レイア、私は誘ってくれないの?」
「ヒトミさんがいると楽なのですが、私達の修行にならないので、、、」
「ヒトミお姉ちゃんは強すぎるんです~」
「・・・・・クッ、自分の強さが憎い!」
頑張るのはいいが無茶はしないでくれよ、、、
「無茶するなよ」
「もちろんです」
「大丈夫ですよ~」
「レイア、馬を使ってもいいからな」
「はい、ありがとうございます」
次の日からレイアとリワンは一緒に出掛けるようになった。
昼飯も現地で食べているようだ、気合の入れようが半端ない。
2人に負けじと俺も魔物を狩り続けた。
◇
今日は休みの日だ。
レイアとリワンは朝からクエストに行ってしまっている。
朝はゴロゴロのんびり過ごした。
ヒトミと昼飯を食べていたのだが、ずっとこっちをチラチラ見ながらモジモジしている。
言いたい事があるけど、言いにくいってとこか。
「ヒトミ、何か言いたい事でもあるのか?」
「・・・・・今度私と一緒に指定クエスト行かない?」
「どんなクエストだ?」
「・・・・・盗賊退治」
「おいおい、魔物は殺せるけど人はちょっとなぁ、、、」
「殺さないわよ!」
「じゃあ、どうするんだ?」
「捕まえるだけだから大人しくさせればいいのよ。その後はギルドの人達が馬車で運ぶんだって」
「それでもなぁ、、、」
「—————お願い!どうしてもって頼まれたの!」
「う~ん、、、」
「報酬も凄くいいから!」
「・・・・・はぁ、わかったよ」
「やった!ありがと!」
「でもそんなクエストあったっけ?」
「昨日ギルドでお願いされたの」
「ギルドから頼まれたのか?有名人なんだな」
「こんな小さな町にずっといる冒険者って少ないからじゃないの?」
◇
次の日、ヒトミと一緒にギルドでクエストの説明を受けた。
盗賊による商隊や旅行者への被害が大きくなっているので、討伐する事になったらしい。
盗賊は10人程の人数で、アジトの場所もすでに判明しているとの事だ。
レイアとリワンが2人でクエストに行っている事を考えると、引き受けたのは良かったのかもしれない。
基本の報酬とは別に、捕らえた盗賊の数によって報酬がプラスされるようだ。
実行は明日早朝。
当日は俺達2人とギルドから職員が10人派遣され、計12人で向かう。
馬車に乗せて行ってくれるらしいが、そうすると帰りは盗賊と一緒の馬車に乗る事になりそうなので、俺達は馬で行く事にした。
ヒトミと2人なら1頭に乗れるだろう。
話が終わった後、武器屋で木刀を数本購入しておいた。
◇
次の日の早朝、家を出て馬を取りに向かった。
ヒトミは馬に乗れないから、俺と一緒に乗って行くしかない。
「前と後ろ、どっちに乗る?」
「・・・・・後ろにする」
ヒトミを後ろに乗せ、ギルドに向かった。
後ろから抱きつかれているが、装備が邪魔で何も気持ち良くない、、、
少しいい匂いがする程度だ。
ギルド前には2台の馬車が待機していた。
1台は空で、もう1台に10人の職員が乗り込んでいる。
全員15くらいのレベルだ。
「今日はよろしくお願いします。では行きましょう」
彼らのPTに加わり、馬車の後ろに付いてアジトまで向かった。
途中で馬車を降りて、そこからは歩いて山に入る。
少し早い昼食を食べて、森の中を進んで行くと大きな洞窟が見えてきた。
入口前には柵が築かれていて、2人の見張りが立っている。
「じゃあ、俺とヒトミで見張りを倒します」
ヒトミと2人で木の陰から様子を見る。
見張りの2人はヘラヘラ笑いながら喋っていた。
「油断しまくりだな」
「ほんと、お約束ね」
「ヒトミは魔法でいくのか?」
「うん」
「じゃあ、俺が向こうから斬り込んで注意を引き付ける」
「わかった」
ヒトミの反対側に回り、そこから見張りに向かって飛び出した。
それに気付いた盗賊が慌てて剣を抜き、俺の方に振り向いた。
そこにヒトミの水魔法が放たれる。
見張りの2人は水魔法に弾き飛ばされて、岩の壁に叩きつけられている。
2発ぐらい当たった所で、勝負ありって感じだったが、そこから数発追い打ちを掛けている。
えげつない、、、
1人は足が変な方向に曲がっている。
気絶している盗賊達を、まとめてロープで縛り上げた。
後はギルドの人達に任せよう。
ヒトミと合流し、洞窟の入り口に向かった。
「じゃあ、行くか?」
「うん」
薄暗い洞窟の中に足を踏み入れた。