【03】そこまで頑張らなくてもいいのに、、、
部屋でくつろいでいるみんなを集めて、テーブルにつかせた。
みんなが不思議そうな顔で俺を見ている。
「ちょっと話がある!」
「急にどうしたのよ?」
「どんなお話でしょうか?」
「食事についてだ!」
「食事がどうかしたの?」
「食事の味を増やしたい!」
レイアは良くわかってなさそうな顔をしているが、ヒトミとリワンはかなり乗り気だ。
「この家には塩・胡椒・醬油もどき・物足りない肉のタレくらいしか無い!」
「後は砂糖とかかな?」
「話にならん!」
「・・・・・やけに熱いわね」
「ヒトミが知っている他の調味料は何だ?」
「パッと思いつくのは、、、ソース・味噌・マヨネーズ・ケチャップかな?」
「初めて聞きました」
「私もです~」
「ヒトミ、作り方を知ってるのはどれだ?」
「マヨネーズだけよ」
「作った事はあるか?」
「あるわよ、二度と作らないけど」
「俺が知ってるのは味噌・マヨネーズ・ケチャップだ」
「味噌なんてよく知ってるわね」
「実家で作ってたからな」
「お店だったの?」
「違う、俺の田舎では各家庭で味噌を作ってるんだ」
俺は作り方を知ってる調味料の材料を紙に書いてみんなに見せた。
「味噌はたぶん無理だ、材料が無い」
「麹が無さそうね」
「あるのかもしれないが、こっちでは見た事が無い。作り方も知らないし、今回はパスだ」
「マヨネーズとケチャップは何とかなりそうね」
「そう言う訳で諸君には、これらの材料を調達してもらいたい」
「わかりました~」
「レイアとリワンが材料、俺とヒトミは道具を買いに行く。昼から作るぞ!」
「「「は~い」」」
俺とヒトミは道具屋と雑貨屋で、調味料を作る時に使えそうな道具を探した。
泡立て器は無いから箸みたいな細い棒を数本、裏ごし用のザルは、、、家にあったな。
後は保存用の入れ物を購入した。
材料は全部買えたみたいだ。
今回はそんなに大変な物は無いからな。
みんなを集めて、作り方を説明した。
「私、ケチャップ班!」
「却下だ!」
「ぶー!」
「全員でマヨネーズを攻略する!」
「みんなで混ぜるって事?」
「そうだ!後、レイアの魔法にも期待している」
「私の魔法ですか?」
「作ってるのを見て魔法でやれないか考えて欲しい」
昼食後、少し休憩してから大変そうなマヨネーズから作り始めた。
作り方は自体は簡単だ。
材料を混ぜるだけ。
しかしこの混ぜるのが辛い。
「そろそろ交代しよう」
「はい~」
俺と交代したリワンが、泡立て器代わりの束ねた棒で、必死にかき混ぜている。
—————目が血走っている
そこまで頑張らなくてもいいのに、、、
「レイア、この混ぜるのを魔法で何とかしたいんだよ」
「わかりました、時間がある時にいろいろ試してみます」
「頼んだわよ!」
何回か交代を繰り返して混ぜていく。
正確な分量が分からないから少しずつ油を加え、それっぽくなった所で完成。
「次はケチャップだ」
「おー!」
トマトと野菜を煮て、それを裏ごしして調味料を入れて煮詰める。
良い感じになった所で、最後にレモン汁を加え完成。
両方とも少し味見したが、納得出来る味になっていたと思う。
元の世界で食べていたような味を期待するのは酷な話だ。
「ヒトミ隊長、前に!」
「はい!」
「ヒトミ隊長にもこの2つの調味料を預ける。必ずアイテムボックスで保管するように!」
「サー!イエッサー!」
「では、解散!」
そう言うと全員が俺に向かって敬礼した。
—————ノリのいい連中だ、、、
今日の夕飯はオムレツだった。
肉と野菜が卵に包まれている。
黄色いキャンバスの上には、ご丁寧にケチャップでそれぞれの名前が書かれていた。
オムレツやオムライスの定番だ。
オムレツに添えられているサラダの横にはマヨネーズが置かれている。
「—————ん~!」
「—————こ、これは!?」
初めて食べたであろう2人は、ケチャップとマヨネーズの味に驚いている。
「凄く美味しいです~!」
「初めて食べる味です!」
それを見ているヒトミはとても満足そうだ。
2人は空になった皿を差し出して、お代わりをもらっている。
俺も食べてみたが、本当に美味しかった。
これで作れる料理の幅も広がるだろう。
久しぶりに元の世界を思い出した。