【14】—————速い!!!
「犬かな?」
「狼ではないでしょうか?」
岩陰に隠れながらその姿を確認する。
リワンが指さす方向には、1匹の黒い4本足の何かが見える。
俺は《看破スキル》を使って、そいつの情報を確認した。
【 マルコシアス Lv.19 魔族 】
【 火炎攻撃 爪攻撃 牙攻撃 召喚魔法 物理耐性 闇無効 】
「・・・・・魔族だな」
「えっ!?」
「ん?どうした?」
「今、魔族って言った?」
「ああ」
「う~ん、逃げよっか?」
「レベル19だぞ」
「魔族は上位種らしいわよ」
「ええ、私も聞いた事があります」
「レベル19でも強いって事か?」
「たぶんね」
「よしっ、逃げよう」
—————安全第一
岩陰から全員でゆっくりと後退し、元の場所に戻ろうとしていた時に、大きな遠吠えが聞こえてきた。
振り返るとその魔族が背中から翼を出して、飛びながらこっちに向かって来ている。
「バレちゃったかな?」
「ああ、たぶんな」
一つ目の大きな黒い狼のような魔族が、俺達の目の前で翼を羽ばたかせている。
俺はさっき見た情報をみんなに伝えた。
「ヒトミ、転移魔法分の魔力は残しておけよ」
「うん」
「危ないと判断したら、馬車を置いてすぐに魔法で逃げるぞ」
「わかった」
「俺とヒトミで斬り込むから、レイアは魔法で攻撃、リワンは自分の身を守れ」
「はい」
「わかりました~」
攻撃に移ろうと身構えた時、魔族がまた遠吠えを上げた。
地面に紫色の魔法陣のような物が浮かび上がる。
その魔法陣の中から、2匹の赤い狼が現れた。
「召喚魔法か?」
「そうみたいね」
【 オスクリダウルフ Lv.15 魔物 】【 火炎攻撃 爪攻撃 牙攻撃 】
—————こっちは普通の魔物か
「増えてしまいましたね」
「レイアとリワンで召喚された2匹を。こっちはレベル15の普通の魔物だから大丈夫」
「はい」
「頑張ります~」
リワンが突撃し、そのまま2体の魔物を引き付けている。
たまに攻撃を受けているが、しっかりと防御はしているみたいでダメージは小さい。
その後ろからレイアが魔法で攻撃しながら、リワンを回復している。
これなら大丈夫そうだ。
「こっちも行くぞ!」
「ええ」
俺はヒトミと同時に魔族に斬りかかった。
その瞬間、魔族は大きく口を開き、炎の球を吐き出して来た。
—————速い!!!
ヒトミは難なく避けているが、俺には無理だ。
炎の球を剣で受け止めたが、そのまま後ろに押し戻されてしまった。
体勢を立て直し、前を向くとヒトミが魔族と戦っていた。
華麗に攻撃を躱し、剣で斬り付けているが《物理耐性スキル》のせいなのか魔族の動きは鈍らない。
何回か斬った後、ヒトミは後ろに飛んで一旦距離を取った。
「斬った時の手応えが変ね」
「次は俺が相手をするからヒトミは魔法で」
「わかった」
「魔力を使い過ぎるなよ」
「うん」
「レイアが来たら魔法で攻撃するように言ってくれ」
俺はダッシュで魔族に接近する。
炎の球が放たれるが、ヒトミが魔法で打ち消している。
そのまま懐に入って魔族と対峙した。
黒光りしている大きな爪の付いた前足で、叩きつけるように攻撃してくる。
動きは結構早いが、なんとか対応出来そうだ。
横に薙ぎ払ってきた前足を躱し、斬り付ける。
確かに斬った時の感触がおかしいと言うか気持ち悪い。
腕への衝撃がほとんど無い。
何を斬ったらこんな感じになるんだ?
一進一退の攻防を続けていると、レイアが合流したのか土魔法が飛んで来るようになった。
2人の魔法を受け、魔族の動きが少しずつ鈍くなってきている。
そのまま優勢に戦いを進め、レイアの魔法で体勢を崩したのを見て、強く斬って大きく弾き飛ばした。
そこに向かって、凄まじい勢いで燃えさかる巨大な炎の球が迫る。
ヒトミの炎魔法だ。
金切り声のような断末魔の叫びと共に、魔族は赤い霧になって消えていった。
「—————倒したか?」
「・・・・・たぶんね」
「匂いが無くなりました~」
その場でしばらく様子を見た後で、馬車に戻りキャンプをした場所まで引き返した。
「俺と10もレベル差があったのに、ほぼ互角だったぞ」
「まだまだ未熟ね」
「ヒトミお姉ちゃんの魔法は凄かったです~」
「えげつなかったな」
「凄まじい威力でした」
「そんなに褒められたら照れるじゃないの」
頭を掻きながら照れていたヒトミが、急に何かに気付いたような顔をしてこっちを見てきた。
「そういえば、何であれが魔族ってわかったのよ!」
「・・・・・あー、この事は絶対に秘密だぞ!」
「はい」
「わかりました~」
「・・・・・この前《看破スキル》のレベルが上がった時に、相手の種族とスキルが見えるようになった」
「相手の詳しい情報が見えるなんて聞いた事がありません」
「不思議です~」
「どんどん変態になっていくわね、、、」
全員が俺をジト目で見つめてくる。
何故だ!?
便利になったのに、、、