【13】緊張感の欠片も無い、、、
「そろそろ出発しようか?」
「は~い」
朝食を食べて、馬車を出発させた。
すぐに目的地に着くだろう。
何回か戦闘こなしながら、草原を抜け、林の中の道を進んで行った。
「ご、ご主人様~、いっぱい来ます~!」
「いっぱい?」
「はい~、熊さんと蜂さんがいっぱい来ます~!」
早速、団体さんのお出ましのようだ。
俺とヒトミは馬車を飛び降り魔物の方に向かった。
レイアは俺達の少し後ろで待機している。
魔物の群れがこっちに向かって来ている。
熊と蜂が仲良く襲って来るのは、少し違和感があるな、、、
俺は氷魔法で20cm程度の氷柱を連続で撃ち出した。
最近覚えたばかりの氷魔法では、残念ながらこれが限界だ。
剣で斬る方が効率がいい気がする、、、、、
空からは拳サイズの石が無数に降り注いでいる。
レイアの土魔法だ。
エルフだからなのか使い慣れているからなのかはわからないが、撃ち出される数が多い。
ヒトミはダッシュで敵に斬り込んで行った。
俺もそれに続き、木や枝に遮られて魔法で倒せなかった魔物を斬りつける。
その間も空からはたくさんの石が降り注いでいた。
魔物の団体さんをすべて黒い霧に変えた後、馬車に戻って先に進む。
「凄い数だったな」
「あんまり強くはないけどね」
レベル15程度とはいえ、あの数は大変だな。
これはDランクのクエストだから、PTじゃないと大変って言うのはちょっとわかる。
ヒトミがいるから楽だけど、普通のDランクならソロは無理だ。
「レイアの魔法は凄いな」
「レイアは魔法が得意なのよね」
「そうですね、私はエルフなので魔法は少し自信があります」
虫や熊、たまに鳥の魔物の団体さんを片付けながら、林の中を走って行く。
レイアは弓の腕も一流だった。
上下左右と不規則に飛び回る蜂を的確に射抜いている。
やっぱエルフと言えば弓と魔法って相場が決まってるんだな。
林を抜けて進んで行くと小さな川が見えてきた。
馬車を止め、ここで昼食にする。
目的地はすぐそこだ。
「ごひゅ人様~、虫はんがひっぱい来まふ~」
リワンが口一杯に食べ物を頬張りながら、魔物の襲撃を伝えてきた。
「リワン、しゃべりにくい時は指さしてくれればいいぞ」
「はい~」
「しかし、お昼時に来るとはマナーの悪い客だな、、、」
「ほんとよね」
ヒトミが食事しながら魔物を炎魔法で一掃している。
緊張感の欠片も無い、、、
早めの昼食を食べ、木も草も無い殺風景な土の道をしばらく進んで行くと、大きな岩がたくさん見えてきた。
「この辺りだな」
「着きました~」
「俺とリワン、ヒトミとレイアに分かれてやろうか?」
「は~い」
2組に分かれて採掘作業を行う。
脆い岩を砕いて、薄い緑色の鉱石を取り出す。
握りこぶしくらいの大きさからバスケットボールくらいの大きな物まで、様々な大きさの鉱石を次々と掘り出していく。
岩はナイフや馬車の修理用の道具で簡単に砕く事が出来た。
採掘しながら襲い掛かってくる魔物達を始末し、掘り出した鉱石を俺とヒトミのアイテムボックスへ収納していく。
「ねぇ、もう1泊して明日もやろうよ?」
「私も賛成です」
「もっとやりたいです~」
「魔物もいっぱい出るから、魔石もドロップアイテムもいっぱいもらえるし」
「一石二鳥と言う事ですね」
「いっぱいお金がもらえそうです~」
3人そろってニヤニヤと悪い顔をしている。
この報酬であれもこれも買おうと考えているに違いない。
確かに魔物が多いからレベルも上がる。
俺は29、レイアは25、リワンは17になっている。
休憩しながら話し合い、明日もう1日採掘をする事にした。
採掘を適当な所で切り上げて、昨日キャンプした場所まで戻った。
◇
馬車で1泊した後、昨日の採掘現場に向かった。
3人は全身から気合が溢れ出ている。
不敵な笑みを浮かべながら魔物を狩っていた。
今日も順調に鉱石を集めていたが、急にリワンが立ち上がって、耳をピクピク動かしながら鼻をクンクン鳴らし始めた。
今まで魔物を見つけていた時と、明らかに反応が違う。
「ご、ご主人様~、何かいます~」
「魔物か?」
「たぶん魔物です~、でも~でも~、、、」
「どうした?」
「う~ん、何か変なんです~」
首をかしげながら唸っているリワンを連れて、ヒトミ達と合流する。
「リワンの様子がちょっとおかしいんだ」
「どうしたのリワンちゃん?」
「変なのがいるんです~」
「魔物かしら?」
「わからないからちょっと確かめに行ってみるか?」
「そうね」
「リワン、場所を教えてくれ」
「はい~、あっちです~」
リワンの後に付いて行き、岩陰に隠れながら指さす方向に視線を向けた。