【10】—————チュッ
次の日もリワンと2人で、朝から夕方までひたすら魔物を狩り続けた。
隙を見て1人になろうとしたが、リワンが俺のそばを離れる事は無かった。
その次の日もリワンと2人で朝から魔物を狩り続けた。
さっきレベルが28になってしまった。
リワンのレベルは14になっている。
魔物を斬りながら考える—————
俺は一体何の為にメラゾニアに来たんだろう?
クエストの為か?
レベルを上げる為か?
いや、違う!
遊びに来たんだ!
そうだ、夜遊びの為だ!
あの日からこの数日間、俺は大人しくしていた。
そろそろ2人も油断し始める頃だ。
これだけ動けば、リワンも疲れているだろう。
夜はぐっすり眠ってしまってもおかしくない。
明日が魔法講義の最終日なんだから、ヒトミもその事で頭が一杯のはずだ。
今夜はチャンスなのかもしれない、、、
たくさんのアイテムと魔石を手に入れ、換金して宿に戻り、ヒトミの帰りを待ってから3人で夕食に出掛けた。
「ヒトミは明日で終わるんだよな?」
「ええ、そうよ」
「大丈夫そうか?」
「当り前じゃない!」
「じゃあ、明日は少しいい店で夕飯にしようか?」
「パーティーですか~?」
「まぁ、そんな感じかな」
「やった!」
「わ~い、楽しみです~」
夕食後、リワンを真ん中に3人で手をつなぎながら部屋に戻った。
部屋に入り、しばらくしてからベッドに横になる。
「リワン、今日は暑いから少し離れて手をつないで寝ようか?」
「む~、わかりました~」
リワンは少し不満そうな声で答えてから、ギュッと俺の手を握ってくる。
俺も軽く握り返して、目を閉じた。
そのままリワンが寝るまでひたすら待つ。
次第に手を握る力が弱くなり、可愛い寝息が聞こえてきた。
俺は静かに手を離し、寝返りをうつ振りをしてベッドの端まで移動する。
そのまましばらく様子をうかがい、ゆっくりベッドから出た。
「ご主人様~、どこに行くんですか~?」
「!?」
小声でリワンが話しかけてきた。
気付かれてしまった、、、
「・・・・・トイレに行って来る」
「いってらっしゃい~」
大嘘をつき、静かに部屋を出て、トイレの方に向かう。
そのままトイレを通り過ぎて角を曲がり、階段の方へこっそり歩いて行く。
「どこに行くのかしら?」
「!?」
驚いて振り返ると、腕を組んで仁王立ちのヒトミがこっちを見ていた。
—————いつの間に!?
「なんか目が覚めたから夜風に当たってくる」
「ふ~ん、そう?」
ヒトミは一瞬で俺に近付き、腕を捕まえて部屋の方へ引っ張って行く。
「リワンちゃんに離れて寝ようなんて言ってたから、おかしいと思ったのよ!」
「!?」
「まったく男って本当にどうしようもないんだから!」
部屋の前まで引っ張って行き、そこで立ち止まって振り返った。
そのままジッと俺を見つめる。
「・・・・・・・これで我慢しなさい」
小さな声で呟いて、俺の首に腕を回す。
—————チュッ
少し背伸びをして、俺の頬に軽くキスをしてきた。
そしてドアを開けた後、また俺の腕を引っ張って部屋に入って行く。
「おやすみ、あんたも早く寝なさいよ」
小声でそう言って、自分のベッドに入って行った。
こ、こいつは馬鹿なのか!?
こんな事をされたら、余計に眠れなくなるだろう!
そう思ったが、今からドアを開けて夜遊びに出掛ける勇気は俺には無い。
静かにベッドに入って横になった。
「おかえりなさい~」
リワンが俺の手を握ってきた。
返事代わりに軽く握り返し、ゆっくり目を閉じた。
◇
「ご主人様~、おはようございます~」
「・・・・・ああ、おはよう」
「ヒトミお姉ちゃんはもう食堂に行きました~」
「じゃあ、俺らも行こうか?」
「は~い」
リワンと一緒に部屋を出て、食堂に向かった。
ヒトミの座っているテーブルに座り、朝食を注文する。
「・・・・・」
「・・・・・」
—————気まずい
心なしかヒトミの顔が少し赤くなっている。
気持ちはわからないでもないが、、、
無言のまま朝食を食べて、ヒトミはすぐに出掛けて行った。
「ご主人様~、今日はどうしますか~?」
「う~ん、まだ行っていない場所に行ってみるか?」
「は~い」
今日は馬車に乗っていろんな場所を見て回った。
特に観光名所みたいな所は無かったが、リワンはいろんな店に入って楽しそうに買い物をしていた。
最後に今日の夕飯を食べる店を決める。
お洒落で高そうな店だ。
部屋に戻ると、ヒトミがベッドでくつろいでいた。
「おかえり」
「ただいま~」
「早かったな」
「ええ、お昼過ぎに終わったわ」
どうやらヒトミはいつもの調子に戻っているみたいだ。
時間が経って落ち着いたんだろう。
「夕飯の店を探して来たから、今日はそこにしよう」
「リワンちゃん、ありがとう!」
「凄く綺麗なお店なんですよ~」
「楽しみ!」
「じゃあ、行くか?」
「あっ、ちょっと先に行っててくれる?」
「ん?別に待ってるけど」
「いいから先に行ってて」
ヒトミに店の場所と名前を伝えて、リワンと一緒に店に向かった。
一番奥のテーブルでリワンと話をしながらヒトミを待った。
「お待たせー」
しばらく待っていると、ヒトミが手を振りながらこっちに歩いて来た。
反対の手で後ろにいる誰かの手を引っ張っている。
—————誰だ?
俺は体を傾けて、ヒトミの後ろに目を向けた。