【06】ついにこの時がやって来た!
店員さんにアイテムボックスの作成をお願いしたいと伝えると2階に案内された。
教えてもらった受付に向かう。
「すいません、この子のアイテムボックスを作ってもらいたいんですが?」
「わかりました、こちらにお越し下さい」
店員さんの後ろに付いて隣の部屋に入って行く。
「ここでアイテムボックスの大きさをお選び下さい。決まりましたら先ほどの受付までお越しください」
「わかりました、ありがとうございます」
案内された部屋には、いろんな大きさの箱が置かれている。
何人かの人達が、真剣な顔で箱の前をウロウロしていた。
一番小さいのは一辺が20cm程度の立方体で、これは財布替わりに使う感じなのだろう。
逆に一番大きいのは6畳の部屋ぐらいの大きさで、見た事の無い金額の値札が付いている。
「リワン、どれにする?」
「ご主人様が決めて下さい~」
俺はリワンと一緒に箱の前を歩きながら考えた。
実用性を考えつつ、財布とも相談しないとな。
「これにしようか?」
「はい~、大きいですね~」
俺が選んだのは一辺1mぐらいの大きさの箱だ。
リワンは大きいと言っているが、小さい方から数えた方が早い程度の大きさだ。
これなら自分の持ち物を入れられるくらいの容量はあるし、値段も問題ない。
いつか小さくなったら拡張すればいいだろう。
さっきの受付に戻り、大きさを伝えてアイテムボックスの作成をお願いした。
「どれくらいで出来上がりますか?」
「明後日には出来上がると思います」
「わかりました、よろしくお願いします」
作成依頼の手続きを終わらせて、店を出る。
思っていたよりも早く作れるんだな、2日で出来上がるとは思わなかった。
「じゃあ、宿に戻るぞ」
「は~い」
馬車に乗って宿に戻ったが、ヒトミはまだ帰って来ていない。
このままゆっくり待つとしよう。
少し薄暗くなってきた頃、ヒトミが帰って来た。
「ただいま」
「おかえりなさい~」
「ちょっと遅くなっちゃった」
「いや、大丈夫だ」
「夕食にする?」
「そうだな、どこか食べに行こう」
飲食店は宿の周りにあるので、みんなで歩いて行った。
どの店も人がいっぱいだ。
小洒落た店を避けて、食堂みたいな小さな店に入る。
「魔法はどうだった?」
「明日から教えてもらってくる」
「どれくらいかかる?」
「一番短かった5日間のコースにした」
「そんなに早いのか!?」
「5日間のコースだと、最低限の事だけ教えるから、後は頑張ってねって感じかな?」
「そんなんで大丈夫なのか?」
「当たり前じゃない!私を誰だと思ってんのよ!」
大きな胸を反らせて、得意げに胸をポンッと叩いている。
叩いた衝撃でぷるんっと少し揺れていた。
「それじゃあ、宿に戻ったら5泊に変更しておくか」
「そうね」
「こっちは明後日には出来上がるって」
「そんなに早いの?」
「俺もビックリした、チャイナドレスより早く作れるとは思わなかった」
俺とヒトミは魚料理、リワンはもちろん肉料理を食べている。
夕食後、部屋に戻って明日の予定を考えてみた。
「リワン、明日は俺と一緒に出掛けるか?」
「わ~い!」
「いろいろ見て回って買い物でもしよう」
「楽しみです~」
「ヒトミ、昼飯はどうする?」
「私はどこかで食べるわ」
「じゃあ、今日みたいに夕方になったら宿に来てくれ」
「わかった」
人ごみに疲れたのか、2人は少し眠そうにしている。
馬車で少し仮眠した俺はまだまだ大丈夫だったが、2人と一緒にベッドに入った。
昨日からリワンが強めに抱きついてくるようになってしまった。
今日も優しく頭を撫でてやる。
2人が寝静まったのを確認し、リワンの腕を外して静かに部屋を出た。
ついにこの時がやって来た!
この為にメラゾニアに来たと言っても過言ではない!
アイテムボックスなんか二の次だ!
宿で夜のお店の場所を教えてもらい、馬車に乗り込む。
数はだいぶ少なくなったが、こんな遅い時間でもまだ走っているとは、、、
俺みたいな人間が多いんだろう。
教えられた場所で馬車を降りて、辺りを散策する。
それっぽい店がたくさん並んでいる。
さすがにこれだけ大きな町だと店も選び放題だ。
一通り見て回った後で、一番扉の大きかった店に入った。
そして—————
至福の時を過ごした俺は、ほどよい疲労感と共に部屋から出た。
階段の下でお姉さんにギュッと強く抱きしめられ、頬に軽くキスをされた。
ニコニコしながら俺に手を振るお姉さんに、後ろ髪を引かれながら店の外に出た。
スキップしそうになる足を抑え込み、静かに歩いて部屋に向かう。
明日も絶対行こう!
そう心に強く誓って、ゆっくり部屋のドアを開けた。