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異世界ナラティブ  作者: SW
第三章
37/105

【03】フッフッフッ、、、


店の扉を開けて中に入る。

行商人や冒険者のような人達が、騒がしく食事をしている。

案内された席に座り、俺は周りの声に聞き耳を立てた。


ほとんどの人達がメラゾニアかゼーオに向かう途中らしい。

ゼーオは初めて聞く町の名前だ。

魔法都市とか海底洞窟などの言葉も聞こえてくる。

魔法都市はメラゾニアの事だから、海底洞窟がゼーオの町に関係あるのだろうか?

落ち着いたら調べてみよう。


運ばれてきた骨付きの肉と野菜を切って口に入れる。

ピリ辛でなかなか美味しい。

料理の見た目と匂いでなんとなく気が付いたのだが、これは唐辛子だろう。


「これ唐辛子か?」

「たぶんね、さっきこの店の前を通った時に匂いがしたから来てみたの」

「辛くて美味しいです~」

「近くのお店に売ってたからいっぱい買っておいたわよ」

「他に何か無かったか?」

「う~ん、特に無かったかな?」




夕食を食べて宿に戻る。

2人が楽しそうに話をしている横で、メラゾニアでの夜遊び方法を考えた。


今日の夜中、散歩に行く事にした。

この村には夜遊びする所が無いから、何の変哲もない普通の散歩だ。

これを毎回、町に泊まった時に行う。

もちろん次に泊まる町でも行う。

たぶん2人は、俺は夜中に町中を散歩するのが好きな人なんだと思ってくれるはずだ。

そうすればメラゾニアで夜中に出掛けても、いつもの散歩だと思わせられるに違いない!

それに2人が夜中にこっそり出掛ける俺に、気が付く事ができるのかという実験にもなる。


我ながら完璧な計画だ!




夜も遅くなって、そろそろ寝ようと言う話になり、みんなで布団に入る。

俺の腕に抱き付いて眠っているリワンの暖かな体温が、俺を夢の世界に引きずり込もうとする。

それを必死に耐えていると、2人が寝息を立て始めた。

ゆっくりとリワンの腕を外し、ベッドから起き上がり、なるべく音を立てないようにゆっくり歩き、部屋を出た。

ここまでは完璧だ!

後は普通に町中を散歩して時間を潰そう。


いくつかの飲食店はまだ開いている。

たぶんみんな酒を飲んでいるのだろう。

店に入りたい気持ちをグッと抑える。

バレた時に「私も行きたかった!」とか「私も連れて行ってください~!」とか言わせない為だ。

ここで計画を潰してしまう訳にはいかない。


月明かりを頼りにフラフラ散歩し、適当に切り上げて宿に戻った。

2人はぐっすり眠っていた。

俺もリワンの横に寝転がりそのまま眠りについた。





窓の隙間から朝日が差し込んでいる。

昨日はよく眠れたらしく、頭がスッキリしている。

眠ったままの2人をそのままにして、顔を洗って部屋に戻り、寝ている2人を起こす。


「リワン、朝だぞ」

「・・・・・う~ん」

「リワン、起きなかったら置いてくぞ」

「お、お()()ようご()いま()~」

「リワン、おはよう。ヒトミも起こしてくれ」

「はい~、わかりま()た~」


リワンがヒトミを起こしている間に窓を開けると、眩しい光と緩やかな風が部屋に入って来た。


「ん~、おはよう」

「ヒトミ、おはよう。顔を洗って朝飯食ったら出発するぞ」

「「は~い」」


2人はフラフラ歩いて部屋を出て行った。

顔を洗って帰って来た2人と宿で朝食を取り、預けてあった馬車を取りに向かう。


「リワン、本当に馬車の操縦を覚えるのか?」

「はい~」

「じゃあ、最初は俺が操縦するから、その後でリワンと交代な」

「わかりました~」

「どんな感じで操縦するか見ててくれ」


リワンに操縦方法を説明しながら、馬車を走らせて行く。

リワンは隣でフンフンと(うなず)きながら話を聞いていた。




しばらく走らせ、1回目の休憩が終わった所でリワンに操縦させてみた。


「とにかくやってみるか?何かあったら交代するから心配するな」

「はい~、やってみます~」


最初は緊張しているのか、ガチガチに体を固くして操縦していたが、すぐに慣れたようだ。

今では普通に話しながら操縦している。

これなら大丈夫そうだ。

操縦を任せて周りの景色を楽しんでいたら、不意にリワンが話しかけてきた。


「ご主人様~、昨日の夜はどこに行ってたんですか~?」

「—————えっ!?」

「昨日の夜、お出掛けしてました~」

「ああ、寝付けなかったからちょっと散歩してたんだ」

「そうだったんですか~」

「仮眠なんかするから眠れなくなるのよ」


リワンの奴、気付いてたのか!?

朝は何も言わなかったから油断していた。

寝てても気配を感じられると言っていたのは、本当だったのか。

《気配感知スキル》を甘く見ていた、、、


しかしこれがバレるのは別に構わない。

(むし)ろ、最初にバレた方が良かったとも言えるだろう。

これで俺が夜中に出掛けても、また散歩かなって思ってくれるに違いない。


フッフッフッ、、、

俺は心の中で不敵な笑みを浮かべていた。


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