【01】気合十分だ!
「ご主人様~、朝ですよ~」
「・・・・・う~ん」
「ご主人様~、起きて下さい~」
リワンに肩をバシバシ叩かれて目が覚める。
リワンは何か楽しみな事がある日は俺より早く起きる。
やはり外はまだ少し暗い。
「リワン、おはよう」
「おはようございます~、ご主人様~」
起き上がって、顔を洗う為に台所に向かうと、ヒトミが朝食を作っていた。
ヒトミも楽しみな事がある日は起きるのが早い。
「おはよう、ヒトミ」
「おはよう」
「・・・・・・・・」
「・・・何よ?」
「いや、何でもない」
余計な事を言って初日から機嫌を悪くさせる事はしない。
これは前回、学んだ事だ。
「結構長い間留守にするけど家は大丈夫か?」
「盗まれたら困るような物は置いてかないし、家が無くなってなければ大丈夫よ」
「リワンも忘れ物をするなよ」
「は~い」
朝食後、着替えて家を出る。
ヒトミは動きやすそうな軽装だが、リワンは昨日渡したチャイナドレスを着ている。
気合十分だ!
先に2人を町の出口に行かせて、俺は預けている馬車を取りに行った。
お礼を言って、馬車に乗り門に向かう。
2人の前で馬車を止め、後ろから小さな踏み台を降ろして2人を乗せた。
「結構大きな馬車ね」
「すごいです~」
「じゃあ、PTを組んでから出発するぞ」
「「は~い」」
2人とPTを組み、元気のいい返事を聞いて馬車を出す。
馬車の揺れに慣れるまで、最初はゆっくりと走らせて行った。
「結構揺れるのね」
「道もそんなに舗装されてないし、サスペンションとかも付いて無いからな」
「車輪も普通の木だもんね」
「ああ、乗り心地は良くないぞ」
最初は馬車の中で話をしていたが、今は前に来て御者台から顔を出して景色を眺めている。
「景色が見たいならこっちに座るか?3人くらいなら座れるぞ」
「うん、そこにも座ってみたい」
「私も座りたいです~」
「今動くと危ないから、休憩の時にな」
しばらく走らせると、馬車を止めるのに丁度いい場所があったので、ここで休憩する事にした。
馬車を止め馬を木に繋ぎ、水を与え休息を取らせる。
2人も馬車から降りて体をほぐしている。
まだそんなに町から離れていないし、見渡しもいいからか、ここまで魔物は出ていない。
草原を少し散歩し、お茶を飲んでくつろいだ後で馬車に乗り込み出発した。
今度はみんなで御者台に座った。
俺が真ん中に座り右にヒトミ、左にリワンが座っている。
「馬車の中よりこっちの方が楽しいです~」
「そうか?」
「確かにこっちの方が気持ちいいわね」
2人はすれ違う馬車に手を振ったり、辺りを見渡しながら景色を眺めたりと楽しそうだ。
昼食を食べ、馬車の中で寝転がって少し休憩した後、再び馬車を走らせる。
しばらくすると道が二手に分かれていた。
地図通りに林の方に伸びていく道に進路を取る。
道は広いが両側に樹が立ち並んでいて薄暗い。
道も少し悪くなった。
「ご主人様~、少し先にオオカミさんがいます~」
林の中を走っていると、俺の袖を引っ張りながらリワンが話しかけてきた。
リワンは鼻をクンクンさせながら、前方を指さしているが俺には何も見えない。
「魔物か?」
「はい~、この匂いはオオカミさんです~」
「そこまでわかるのか?」
「オオカミさんは戦った事があるのでわかります~」
「リワンちゃんは魔物を見つけるのが凄く上手なのよ」
「えへへ~、ありがとうございます~」
———これがリワンの持っている《気配感知スキル》か。
「何匹いるかわかるか?」
「はい~、5匹です~」
「魔物が見えたら私とリワンちゃんで倒しに行くから、あんたはそのまま馬車を守ってて」
「わかった」
しばらく馬車を走らせると、林の中に狼の魔物が見えてきた。
魔物の情報を確認してみる。
【 ニンブルウルフ Lv.5 魔物 】【 牙攻撃 爪攻撃 】
この魔物ならレベル9のリワンでも大丈夫そうだ。
「リワンちゃん、行くよ!」
「はい~」
2人は馬車を飛び降り、そのまま魔物に向かって走って行った。
ヒトミがあっと言う間に4匹を切り刻み、リワンも1匹を蹴り飛ばして倒してしまった。
魔物を倒し終えると、そのままダッシュで馬車に戻って来た。
ピョンとジャンプして、尻からドスンと元の位置に着地して、俺の頭の上でハイタッチをしている。
「おいおい、馬がちょっと驚いてたぞ」
「飛び乗るとちょっとお尻が痛いわね」
「はい~、もうちょっと椅子を柔らかくしたいです~」
「周りに木が無ければ魔法で燃やしちゃうんだけどなぁ」
「そうだな」
「足から着地すれば静かに乗れるから、次はそっちでやってみるわ」
「私もやってみます~」
魔物を倒しながら林を抜け、そのまま進んで行くとなだらかな斜面の草原に出た。
少し道から離れて、見晴らしのいい場所まで登って行く。
「今日はここでキャンプにしようか?」
「「は~い」」
馬車から降りてみんなでキャンプの準備を始めた。
—————1日おきの更新になります