【18】相変わらずのお邪魔虫め!
「「ただいま~」」
2人の元気な声が玄関から聞こえてきた。
一緒に帰ってきたらしい。
「おかえり、無事に買えたか?」
「ええ、大丈夫よ」
「ちゃんと買って来ました~」
準備も終わったしこれで大丈夫だろうと、予定通り出発は明日になった。
リワンは目を輝かせている。
もちろん俺もリワンに負けないくらい楽しみにしている、主に観光と夜の店を!
昼食後、買ってきたプレゼントを取り出してリワンに渡す。
「リワン、ランクアップおめでとう!これが約束のプレゼントだ」
「わ~い、ありがとうございます~」
リワンは袋からチャイナドレスを取り出し、立ち上がって自分の体に当てている。
「・・・・・チャ、チャイナドレス!?」
「わ~、綺麗な服です~」
「あんた何て服を作ってんのよ!」
「いいじゃないか、拳で戦う女の子って言ったらチャイナドレスだろ?」
「どう考えてもこれはリワンちゃんじゃなくてあんたへのご褒美じゃないの!」
さすがはヒトミ、なかなか鋭い!
目を輝かせながらチャイナドレスを見ているリワンの横で、ヒトミは俺を睨みながらギャーギャー文句を言っている。
何でチャイナドレスを作っただけで「スケベ」だの「変態」だのと言われなければならないんだ?
「ご主人様~、今からこれ着てみます~」
そう言ってリワンが服のボタンを外し始めた。
「リワンちゃん!こっちで着替えなさい!」
ヒトミはボタンを外しているリワンの腕をつかまえて、隣の部屋に引っ張って行く。
相変わらずのお邪魔虫め!
ちょっとしか胸が見えなかったじゃないか!
「ご主人様~、どうですか~?」
チャイナドレスに着替え終わったリワンがクルクル回っている。
——————素晴らしい!
本当に作ってよかった!
深めのスリットがとてもいい仕事をしている。
「よく似合ってて可愛いぞ」
「ふわ~、ありがとうございます~」
リワンは両手を頬に当て、赤くなってモジモジしている。
照れたリワンというのもなかなかいいものだ!
「その服でも戦えそうか?」
「試してみますね~」
そう言っていきなりその場で回し蹴りを放った。
「———うおっ!?」
「———ダメッ!?」
ヒトミと2人で声を上げる。
ちょっとだけピンク色の布が見えた!
「大丈夫です~、ちゃんと動けます~」
満足そうにファイティングポーズを取っているリワンの後ろで、ため息をつきながら頭を抱えるヒトミが見えた。
「ヒトミお姉ちゃん、いつもありがとうございます~。私からプレゼントです~」
「ありがとー、リワンちゃん!」
今度はリワンが自分のバッグから取り出した袋をヒトミに渡している。
「開けてもいい?」
「はい~、どうぞ~」
ヒトミは袋から取り出したワイン色のキャスケットのような帽子をかぶって満面の笑みを浮かべている。
「どうかな?似合ってる?」
「ヒトミお姉ちゃんの綺麗な黒髪にとても似合ってます~」
ヒトミはファッションチェックのようなセリフを言っているリワンの両手を握り、ブンブン振り回して喜んでいる。
「・・・・・ちょっと待ってて」
急に椅子から立ち上がったヒトミが自分の部屋に入って行く。
小さな袋を持って帰って来たヒトミが、俺の目の前にその袋を突き出した。
「・・・・・これ私からのプレゼント」
「えっ?俺にか?」
「あんただけ無いって訳にはいかないでしょ!」
「気を使わなくてもよかったのに、、、」
「じゃあ、返して!」
「断る!」
袋を開けて中を見てみると、シルバーと革で作られたブレスレットが入っていた。
手首に付けて、いろんな角度から眺めてみる。
「おお!」
「ご主人様~、かっこいいです~」
「それを付けてると魔法の威力が少し上がるみたいよ」
「それはすごいな!ありがとうヒトミ!」
「・・・・・ど、どういたしまして」
ヒトミは赤くなって少しうつむいている。
何で照れてるのかわからないが、からかうのは止めておこう。
プレゼントも渡し終わり、お茶を入れ直したタイミングで、ギルドから貰ってきた地図をテーブルに広げて2人に見せる。
「地図によるとメラゾニアまでの間にいくつか町や村があるみたいだ。1日でどれくらい進めるかわからないし、正確な地図でもないから何とも言えないけど、安全に行く為にできるだけ村に寄って行こう」
「そうね、キャンプよりも村の中にいる方が安全そうだもんね」
「魔物避けの薬草も買ってきたけど、効かない魔物が出るかもしれないからな」
「わかりました~」
明日からの予定を簡単に説明した後で夕飯を食べ、2人が風呂に入っている間に寝る準備を済ませる。
2人はいつもより長風呂だ。
きっと明日からの事を話しているんだろう。
今日は先に寝よう。
楽しい旅になる事を期待したい。