【16】考えるだけでも恐ろしい、、、
眩しい朝日と少しうるさいセミの鳴き声で目を覚ます。
隣にいつもの幸せな柔らかい感触が無い。
寝袋を出てテントの中を覗いてみると2人はまだ眠っていた。
リワンが人に抱きついて寝るのはいつもの事だが、ヒトミもリワンに抱きついている。
美少女2人が抱き合って眠っている姿に、朝からいいものが見れたと手を合わせておく。
起こさずにこのまま寝かせておこう。
昨日の夜は魔物も出なかったし、体も虫に刺されていない。
魔物避けと虫避けの薬草は効果があるみたいだ。
残った肉と野菜を使って朝食のスープを作る。2人が起きてきたら温め直そう。
服を脱いで少し冷たい川に入り、軽く泳いで寝汗を流す。
最初は冷たかったが慣れると気持ちがいい。
気温が上がり、虫の鳴き声も大きくなってきた頃、2人そろってテントから出て来た。
「よく寝てたな」
「ご主人様~、おはようございます~」
「・・・う~ん、おはよう」
「冷たい川の水で顔を洗ったら目が覚めるぞ」
「洗ってきます~」
リワンはタオル片手にフラフラ川に歩いて行った。
ヒトミもリワンの後ろを歩いていたが、途中で立ち止まって振り向いた。
「あんたが昨日テントまで運んでくれたの?」
「ああ、起こしても起きなかったからな」
「・・・・・・・そっか、ありがと」
ヒトミが少し顔を赤くしてうつむきながら、小さな声で礼を言ってきた。
「『ツン』しか持ってないと思ってたけど、ちゃんと『デレ』も持ってたんだな」
「くっ、、、うるさい!」
ニヤニヤしながら少しからかってやると、ヒトミが足元の石を拾って投げつけてきた。
凄まじい勢いで飛んで来た石は俺の頬をかすめ、後ろの大きな木に当たり爆音を上げている。
・・・・・何も反応出来なかった
レベル68の実力の片鱗を垣間見た気がする。
ヒトミはフンッと前を向いて、肩を怒らせながら川に向かって歩いて行った。
昨日テントの中で寝なかったのは正解だったようだ。
ちょっとからかっただけでこれだ。
何かの間違いでヒトミの胸や尻を触ろうものなら—————
考えるだけでも恐ろしい、、、
顔を洗って帰って来た2人に温め直した朝食を渡す。
残った肉と野菜を使ったスープとパンといった昨日とは正反対の軽い食事だ。
「もう材料が無いから昼前に帰るぞ」
「は~い、それまで泳いでてもいいですか~?」
「ああ、帰る時に呼ぶからそれまで遊んでていいぞ」
あっと言う間に朝食を食べ終えたリワンは、着替えるとすぐに川に入ってバシャバシャ遊んでいる。
「ヒトミ、昼飯はどうする?」
「・・・・・」
「おい」
「・・・・・何よ?」
「昼飯はどうする?帰ってから家で食べるか?それとも帰る途中にどこかで食べるか?」
「・・・・・どっかで食べてから帰る。もちろんあんたの奢りよ!」
「・・・はい、わかりました」
まだご機嫌斜めらしい、、、
『デレ』は川で洗い流してしまった様だ。
ヒトミが食べている間にテントを片付け、俺も川に入った。
「ご主人様~、楽しかったですね~」
「たまにはこうやって遊ぶのもいいもんだな」
「はい~、また遊びに連れて来て下さい~」
しばらく川で遊んでから、かまどの火を消して帰り支度を始めた。
服を着替えて、昨日来た道を歩いて帰る。
楽しい時間を過ごす事ができた。
いい思い出になりそうだ。
町に着いてすぐの店で昼食を食べる。
その後、家に帰ってみんなで床に寝転がった。
「遊び疲れた、、、」
「いっぱい遊べてすごく楽しかったです~」
「私、ちょっと食べ過ぎたかも、、、」
今日は何もする気が起きなかったので、このままゴロゴロくつろいだ。
気持ちを切り替え、明日からまたボチボチやっていこう。