【14】—————うん、美味い!
「ふぅ~、スッキリした」
川から上がり、軽く体を拭いて木陰に入る。
マットを取り出しその上にタオルを敷いて寝転がり、少し休憩した。
2人も川から上がり、マットの上に座っておしゃべりをしている。
少し休憩した後で再び川に入り、のんびり泳いだ。
水中には魚がいるみたいだが、水中メガネも無ければ銛や釣り道具も無い。
次に来る時は魚を取る道具を持って来ても良さそうだ。
2人は川辺で石を積み上げてかまどを作り、昼食の準備を始めた。
あんな日の当たるところで飯を食っていたら、焦げてしまいそうだ。
俺は2人の周りに4本の丸太を立て、上に屋根代わりの大きな布を縛り付ける。
影が出来れば多少はマシになるだろう。
桶の中に氷を作り出して、そこに酒とジュースを入れて冷やしておいた。
「もう少ししたら昼飯にしよう」
「はい~、それまで泳いできます~」
「私も泳ぐ!」
2人は川の中でキャッキャッと楽しそうに話をしている。
俺はジュースを飲みながらそれを眺めていた。
「お腹がペコペコです~」
「ほんとね、そろそろお昼ご飯にしましょう」
川から上がって来た2人は、タオルで髪を拭きながらかまどの周りに座っている。
俺はかまどに火を付けて網をのせ、肉と野菜を取り出した。
網の上に豪快に肉と野菜をのせて広げていく。
塩コショウを振り掛け、焼けるのを待つ間に皿と箸を渡す。
ヒトミは酒とジュースをコップに入れて渡し、リワンは皿を片手に焼き上がりを今か今かと待ち構えている。
「そろそろいいんじゃない?」
「そうだな、食べるか」
「「は~い!」」
焼けた肉を皿にのせ少し冷ましてから口に入れる。
—————うん、美味い!
やはり、夏に外でやるバーベキューは最高だ!
「美味いな!」
「うん、美味しいわね」
「すごくすごく美味しいです~」
凄まじい勢いで肉が減っていく。
「しかしこうなるとビールが欲しいな」
「そうよね、お酒ってこのワインみたいなのしか無いのよね」
「ルザーラにもこれしか無かったな」
「メラゾニアにあるといいわね」
すぐに肉が無くなってしまったので、追加の肉を網の上に広げる。
「リワン、肉が焼けるまで野菜も食べなさい」
「はい~」
俺は肉を焼きながら醤油や砂糖、ワインなどを混ぜて作った甘辛いタレを取り出し、焼けた肉に軽く塗って少し炙る。
塩コショウだけだと飽きる気がしたので家で作っておいた物だ。
醤油の焦げた匂いが辺りに広がっていく。
リワンが肉と俺の顔を交互にキョロキョロ見ている。
「リワン、食べてみるか?」
「はい~、食べたいです~」
リワンはタレ付きの肉を取り、少し息を吹きかけてから口の中に放り込んだ。
「う~ん、美味しいです~」
「ここに置いておくから使ってもいいぞ」
タレを石の上に置いて、俺もタレ付きの肉を1つ食べてみる。
確かに美味しいが、やはり元の世界で使っていたタレに比べると味が数段落ちる。
「これはこれで美味いけど、やっぱり物足りないな」
「確かにそうね、これどうやって作ったの?」
「醤油と砂糖とワインを混ぜただけ」
「野菜とか果物をすりおろした物とか入れるんじゃなかったっけ?」
「たぶんな。でもそこまでするのは面倒だったからな」
「次に期待しておくわ」
「夕飯までの間に試しに作ってみるか」
食事を終え、川に入って涼んでからタレの改良に取り組んだ。
改良と言っても、手持ちのタマネギとリンゴを入れるだけだ。
すりおろす道具は持ってないので、ひたすら細かく切ってから軽く潰してみる。
ペースト状になった物をさっきのタレに混ぜて出来上がりだ。
手持ちの材料だとこれが限界だから続きは帰ってからだ。
作ったタレを皿に入れ、そこに肉を漬け込んで氷の入った桶に入れておく。
それから夕飯までの間、川で泳いだり、寝転がって休憩したり、飲み物を片手に話をしたりと実にのんびりまったりと時間を過ごした。
たまにはこんな過ごし方もいいものだ。