【08】変な事を教えるんじゃない!
今日も素晴らしく柔らかい!
隣でリワンが腕に抱きついて眠っている。いつもの事だ。
プニプニするがムラムラもする。
迂闊にも手なんか出してしまったら、ヒトミに何をされるか分からない。運が良くて半殺しだろう。
少し腕を押し付けるだけで我慢する。
ヴァルアには夜のお店が無いのが辛い。
今日からしばらくはクエストをやろう。
ヘトヘトになるまで体を動かして発散させよう。
お金には余裕があるけど、アイテムボックスの購入を考えても貯めておいて損はしないだろう。
他にやる事も無いから丁度いい。
リワンもしばらくヒトミと修行するだろうし、1ヶ月後ぐらいにはまた旅行に行けるように準備しておきたい。
次は一週間くらい遊びたいものだ。
「じゃあ行ってくる。今日も昼飯は要らないから」
「はーい」
「ご主人様~、いってらっしゃい~」
ギルドでクエストを確認し、馬に乗っていつもの狩り場に向かう。
ひたすら狩る!無心で狩る!
この前の旅の残り物で昼食を作って食べる。
馬に乗って狩り場を変えて、さらに狩る。午後は魔法をメインにして狩る。
バカみたいな量のアイテムと魔石が集まってしまった、、、
ギルドで換金をお願いしたら、受付のお姉さんに変な顔をされた。
———ちょっと多すぎたかな?
「ヒトミ、指定クエストってやった事あるか?」
「あるわよ」
「さっきギルドで見てきたんだけど、1日じゃ終わらないやつもあるな。馬を使っても移動に時間がかかりそうだ」
夕飯を食べながら指定クエストについて聞いてみた。
レベルも27になったし、たまには違う事もやってみたい。
「そう?たまに簡単なのもあるわよ。でもその前にランク上げたら?報酬の多いクエストが受けれるようになるのに」
「ランクかぁ、、、昇格試験って何するんだ?」
「ギルドの試験官と戦うだけ」
「簡単なのか?」
「よくわかんない。魔法を数発撃ったら終わったから」
「そんな簡単なのか!?」
「呪文唱えずに撃ったからかな?」
無詠唱で数発魔法を撃つだけならすぐに終わりそうだな。
明日ギルドで聞いてこよう。
「リワンは魔物と戦ったのか?」
「はい~」
「どうだった?」
「ウサギさんをいっぱい倒しました~」
はいはい、あれね。
俺が最初にやったのと同じやつだ。
「忘れてました~、ご主人様これ~」
リワンがズボンのポケットからお金を取り出して両手に乗せ、俺の前に差し出してきた。
「何だこれ?」
「今日のクエストのお金です~」
「それはリワンのお金だから、自分で使っていいぞ」
「でも~」
「いいから、食べ物でも服でも好きな物を買いなさい」
「そうよ、そのお金はリワンちゃんのよ」
「・・・・・はい~、わかりました~」
少し困った顔をしながらも、大事そうにお金をポケットに入れている。
明日はリワンに財布を買ってきてやるか。まぁ、財布っていうよりも巾着だけど。
「そういえば、リワンは何の武器を使ってるんだ?」
「これです~」
リュックから金属のプレートが付いた指先の開いたグローブを取り出して、手に付けた。
猫パンチならぬ犬パンチか、、、
「これで『ボコボコにしてやんよ~』って言いながら殴るんです~」
それを聞いてすぐにヒトミの方を見るが目を逸らされた。
変な事を教えるんじゃない!
「明日、昇格試験が終わったらリワンの様子を見に行くよ」
「はい~、待ってます~」
◇
次の日、家を出てギルドに行き、受付のお姉さんに昇格試験の事を聞いてみた。
終わらせたクエストの数なんかは問題無しという事なので、後は実力を見るらしい。
「武器と魔法どちらで試験を受けますか?」
「魔法でお願いします」
「では、こちらに来て下さい」
もちろん魔法だ。
ヒトミの言ってた事が本当なら、魔法だとすぐに終わる。
受付のお姉さんに案内されてギルドの奥に向かう。
「あの目標に向かって魔法を撃って下さい」
中庭のような場所で、少し離れた所に丸太が立てられている。
ヒトミは試験官と戦うって言ってけど変わったのかな?
不思議に思ったが考えても仕方ない。言われた通り丸太に向かって数発魔法を撃った。
勿論、全部当たった。
止まっている的に当てても何の自慢にもならない。
「合格です。威力、命中率共に問題ありません」
「はぁ、ありがとうございます」
「では、受付にお戻り下さい」
あっけない、、、
受付に戻って登録を済ませるとタグの色が黄色に変わった。
「これでDランクに昇格です。ここヴァルアではDランクまでしか昇格できませんので、次の昇格試験は他のギルドで受けていただく事になります」
「わかりました、ありがとうございました」
「Cランクからは中級冒険者になります。簡単に昇格出来るのはDランクまでですのでご注意下さい」
受付のお姉さんの説明を聞いて、ギルドを後にする。
リワンの様子を見に行くからクエストの確認はしなくてもいいや、今日は休もう。
リワンに渡す財布代わりの巾着を買い、訓練している場所に向かった。