【04】頭が痛くなってきた、、、
空がだんだん明るくなってきた。
少しウトウトしたぐらいで昨日はほとんど寝なかった、、、
女の子はまだ眠っている。
「ちょっと起こしてみるか」
テントに入り、寝袋で寝ている女の子に声を掛ける。
「う~ん、、、、」
ゆっくりと起き上がり、両手で目をゴシゴシこすっている。
ボーーッと周りを見て俺に気が付くと、半分閉じた目でしばらく見つめてきた。
「—————キャッ!」
目が覚めたのか、小さな悲鳴を上げて寝袋を飛び出し、テントの隅で丸まって俺を見ている。
怖がらせないようにゆっくり優しく話しかける。
「おはよう、体は大丈夫かい?」
「・・・・・・」
「え~と、君の名前を教えてくれるかい?」
「・・・リワンです~」
「リワンっていうのか、歳はいくつなんだい?」
「・・・15歳です~」
名前や年齢はわかっているが話をするにはこの辺りから聞くのが基本だろう。
「どこか体に痛い所は無いかい?」
「・・・大丈夫です~」
「え~っと、昨日の事は覚えてるかい?」
「・・・・・大きな鳥さんが飛んで来ました~」
記憶は大丈夫そうだ。
「お腹は減ってないか?一緒にご飯を食べよう」
テントの外に出て簡単なスープを作り、パンと一緒にリワンの所へ持って行く。
最初は警戒しながら食べていたが、すぐに勢いよくスープとパンを口に運んでいた。
空になった皿を受け取って、お代わりのスープとパンを渡す。
2杯目からはニコニコしながら口一杯に詰め込んで食べている。
俺も一緒に食べながら昨日の事を説明した。
「リワンは奴隷なのか?」
「そうです~」
「どこに行こうとしてたか知ってるか?」
「知りません〜」
「リワンの主人は誰だい?」
「わかりません~」
これはまいった、、、
どうすればいいかわからないから、ルザーラに戻って話を聞こう。
「俺は今から町に戻るけど一緒に来るかい?」
「はい~、お兄さんと一緒に行きます~」
2人で馬に乗りルザーラに向かう。
俺の前に乗っているリワンは笑顔でキョロキョロ周りを見ている。
—————楽しそうだ。
ブンブン振り回している尻尾が俺に当たる。
俺とたくさん話をした事で、すっかり慣れたようだ。
俺はルザーラで初めて獣人を見たが、リワンがいた町には結構いたようだ。
太陽が真上に昇った頃、ルザーラの町が見えてきた。
町に入り、門番に昨日の事を説明した。
現場に人を派遣するように話をしている。
今のリワンは主人がいない奴隷という状態らしい。
奴隷商館に運んでいる途中だったんじゃないかとの事だ。
奴隷についての詳しい話は奴隷商人に聞いて欲しいと言われた。
リワンから主人になって欲しいとお願いされたので、仕方がないから一時的に主人になり、後で解放しようと思う。
何故かリワンは嬉しそうにニコニコしている。
門番に奴隷商館の場所と奴隷と一緒に泊まれる宿を教えてもらう。
商館は昨日通った店のようだ。
ギルドで換金を済ませた後、リワンと手を繋いで奴隷商館へ向かった。
奴隷商館で事情を話すと、奥の部屋に案内された。
椅子に座り待っていると、老紳士風の商人が部屋に入って来た。
俺はリワンを引き取りたいと告げる。
「事情はわかりました。恐らくここに運ばれてくる予定だった奴隷でしょう」
「そうでしたか」
「ですが今は誰の所有物でもありません。主人のいない状態です」
「主人がいなくても奴隷なんですか?」
「そうです、主人が解放しない限り奴隷のままです。つまりあなたが拾った奴隷になりますので、この奴隷はあなたの物です」
「わかりました」
「あなたがこの奴隷の主人になると言う事でよろしいですか?必要が無いなら売る事も可能ですが?」
「主人になります」
「承知致しました。今回は奴隷契約の手数料だけ頂きます」
「わかりました」
商人が合図すると、冒険者登録の時に使ったのと同じ様な板が運ばれてきた。
リワンの首から外したチョーカーを板に入れ、その上に手を置き自分の名前を言う。
板が数回点滅した後、チョーカーの色が黒色に変わった。
そのチョーカーをリワンの首に付ける。
「奴隷の禁止事項は何ですか?」
「いろいろありますが、主に主人に危害を加えたり、命令に逆らったりしてはいけない事です」
「破った場合は?」
「全身に激痛が走ります」
「奴隷を解放するには?」
「首のチョーカーを外すだけです。主人しか外せませんので、ご心配なく」
「わかりました。ありがとうございました」
リワンと一緒に奴隷商館を出て宿に向かい、ツインの部屋を借りる。
「それじゃあリワンを奴隷から解放するよ」
「むぅ~、私を捨てるんですか~?」
「ち、違う!捨てるんじゃなくて解放するんだ」
「・・・同じです~」
「解放されたらリワンはこれから好きに生きていけるんだぞ」
「好きな事ができるんですか~?」
「そうだ、自由になれるぞ」
「わかりました~、じゃあ好きな事をします~」
「リワンは何かしたい事があるのか?」
「お兄さんの奴隷になりたいです~」
「———リワン、ちゃんと話を聞いていたのか?」
「もちろんです~、ちゃんと考えてお兄さんの奴隷になる事にしました~」
頭が痛くなってきた、、、
もう一度最初から説明しても奴隷がいいの一点張りだ。
時期を見てからもう一度話をしよう。解放するのはいつでも出来る。
昨日は徹夜だったからとにかく眠い、限界だ。
「俺は少し眠るから、リワンも眠くなったら寝てもいいぞ」
「はい~」
「もし腹が減ったらこれを食べていいから」
「ありがとうございます~」
お菓子をリワンに渡し、ベッドに横になる。
これからの事を考える余裕もなく、目をつぶると同時に意識が遠のいていった—————