【16】—————まったく
「えっ、えっ、えっ?わ、私は、、、その、、、えっと、、、」
「ほっほっほっ。お嬢さんや、そう慌てなくとも良い。別に取って食おうとは思うとらんぞ」
これだけ分かりやすく動揺していたら、もう認めているのと同じだ、、、
オロオロと狼狽えるヒトミを見ながら、長老様は声を上げて笑っている。
「・・・・・長老様は俺達のような存在をご存じなのですか?」
「聞いた事はあるんじゃが、会ったのはこれが初めてじゃ」
「そうでしたか、、、」
「長生きはしてみるもんじゃ。なぁ?婆さんや」
「ええ、本当ですねぇ」
警戒しているというよりは、珍しい物を見て喜んでいるって感じがする。
俺がこっちの人達を見て珍しがるのと同じ感覚なんだろう。
「とは言うても、そなたらがこの世界の者では無いと確信があった訳では無いのじゃよ」
「どういう事でしょうか?」
「特徴が似とったので、ちょっとカマを掛けてみたんじゃ」
「特徴とは?」
「黒い目に黒い髪の人族、そしてその者は強くライスを求めたと聞いておる」
「な、なるほど、、、」
「血眼になって探しておったそうじゃ」
—————まったく
どいつもこいつも考える事は一緒だな、、、
「数百年前、南の大陸に住むエルフの爺さんに聞いたんじゃが、まさか実在しておるとは、、、」
「・・・・・南の大陸ですか?」
「そうじゃ、そこにもわしらと同じエルフの住む森があるんじゃ」
「南の大陸にいたその人はどうなったかご存知ですか?」
「さぁ、そこまでは聞いとらんのぉ、、、正直なところ、あまり信じておらんかったんじゃ」
元の世界に帰れたのか、それともこっちで一生を終えたのか?
それだけでも知りたかったな、、、
「とにかく安心して下され。他言するつもりは無いからのぉ」
「わかりました」
「そろそろ2人も帰って来るじゃろうから、この話はここまでじゃな」
「また遊びに来て下さいな。向こうの世界のお話も聞かせて欲しいですわ」
「はい、ありがとうございます」
丁度話が一区切りした所で、レイアとシンティアが帰って来た。
長老様に礼を告げて、3人で米が保管してある建物に向かった。
米が保管してある場所は、学校の裏手にある小さな小屋だった。
その薄暗い小屋の中に、米が入っていると思われる袋が積まれていた。
もしこれが全部米なら、そこそこの量はありそうだ。
光魔法で小屋の中を明るくしてもらい、ヒトミと一緒に袋の中を覗き込んだ。
「玄米ね」
「だな」
「その中に白い粒があるんです」
「どうやって白くしてるんだ?」
「風魔法を使います」
なるほど、、、
魔法ってのは本当に便利なもんだ。
だがここまでやれるのに、何故ご飯が無いんだ!
創意工夫と言う言葉は無いのだろうか?
硬い食べ物は取り敢えず水に浸すか、煮てみればいいのに、、、
「これって譲ってもらえないのかな?」
「聞いてみてくれないか?」
「はい、後で聞いてみますね」
「ところでレイア、今日の夕食はどっちで食べるんだ?」
「みなさんと食べますよ」
「わかった」
レイアに鍵を渡してヒトミと一緒に家に帰ると、リワンとラーニャも帰って来ていたので、残っている食材を使って料理を始めた。
夕食を食べながら話を聞くと、米の倉庫の鍵はレイアがそのまま預かる事になったらしい。
米も好きなだけ使ってくれて構わないそうだ。
明日、ヒトミと一緒にご飯を炊く事にした。
リワンとラーニャは明日から学校に行く事になった。
最初はレイアに付いて行ってもらう。
半日で終わるらしいから、昼に帰って来た時にご飯を使った昼食を用意しておいてやろう。
それにしても学校が半日で終わるとは羨ましい話だ。
俺達は朝から夕方までだったと言ったら、レイアが驚いていた。
学校が終わると、家の手伝いをしたり、狩りに出掛けたりしていたそうだ。
明日やってみないと分からないが、米の方は何とかなる気がする。
次は家探しに力を入れないとな。