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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第1章 アシュ=ダール編
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応酬


 厳しい魔法の応酬の中、徐々に押されていくミラとリリー。特にリリーはへ―ゼンと戦ったばかりだったので、魔法力の大半は消費されていた。それでも、若さゆえの回復力、そのポテンシャルの高さでアリスト教徒十数名の魔法を一挙に抑えていたが、さすがに限界が近い。


「どうしたんだね? 君の力はそんなもんか。君の素晴らしいのはその減らず口と威勢だけなのかな?」


「……はぁ……はぁ」


 もはや呼吸をすることで必死。アシュなんかに構っている暇のないリリーである。しかし、彼女は思う。


 もし……生き延びることができたら……殺す。


 ミラもまた完全にロイドと渡り合っているが、逆に言えば完全にロイドに抑えられているとも言える。リリーの援護をする余裕などなく、魔法の応酬を繰り広げている。


「ふっ……ミラ。僕は君をそんな軟弱な人形に作った覚えはないぞ。いいか、彼如き一蹴しなくて、僕の人形を名乗るなど言語道断だよ」


「アシュ様……私は、あなたの人形であることが一番の恥です」


 ミラは淡々と答える。


 シスはなんとか魔法を繰り出そうと力を振り絞るが、そんなに都合のよく出るはずはない。


「アシュ先生……なんとかなりませんか? このままじゃ……ミラさんとリリーが」


「ふっ……シス。2人の力を信じるのだ。彼女たちは、そんなにヤワな子たちではないよ」


 2人は思った。


 お前が言うな、と。


「でも……このままじゃ……」


「シス。君は、戦い向きじゃないのだ。ほらっ……彼女たちと違って」


 ミラとリリーは一瞬視線を合わせた。


 絶対に、殺しましょうと。


「でも……なんで……私もなんとか……力になりたいのに……」


 そう言ってなんとか力を振り絞っているシス。


「安心したまえ。君はいつか優れた魔法使いになれる。焦らずに……」


「今なんです! 私は、今……力になりたいんです!」


 シスはアシュの肩をギュッと握って訴えかける。いくら授業で魔法が使えるようになっても、実践で使えないならば、なんのための力なのか。ここで、大切な人の力になれないならば……なんのための力なのか。


「まあ、落ちつきたまえ。もう少しだけ待てば……」


「なにを悠長なことを言ってるんですか!」


 シスがアシュの肩をガンガン揺らす。


「い、いやまあ僕に言われても……」


「私が悪いのはわかってます! 私が弱いのが……私がなにもできないのが……でも! なにか……なにか……お願い! ねえ、奇跡でもいい……奇跡でも! 金輪際魔法を一度でも使えなくてもいい。だから……お願い……」


 そう言って何度も何度も自分の胸を叩く。


「はぁ……はぁ……シ……シス。無理……しないで。私なら……平気……くっ……」


 リリーがそう言いながら力尽きて崩れ落ちる。


「リリー!」


 そう言って駆け寄るシス。一時的にミラが、アリスト教徒の魔法を受ける形となった。アシュもまた、息をきらしたリリーの額に触れる。


「魔力欠乏症だ……よく、ここまでだしきったな。ミラ、あとどれくらい耐えられる?」


「……持って、30秒かと」


「足りないな……1分だ」


「……かしこまりました」


 そう言いながらミラは、ロイドとアリスト教徒から放たれる魔法の応酬にただひたすら耐える。シスは涙をめいっぱい貯めながら、リリーを抱いて何度も治癒魔法を唱えようとする。


「ごめんね……私がなにもできないから……私が、役立たずだから。あなたばかりに負担をかけて……ごめん……ごめんねぇ」


 何度も何度も泣きながら魔法を唱えるシスだが、一向にその手は光らない。ミラが敵の魔法の威力に押され始めた時、


「……そろそろか」


 アシュが外の気配を感じてつぶやいた。


 ドッカー――ン!


 物々しい壁の破壊音と共に、現れたのはモンスター。それも、普通のモンスターではなく、異形な姿をしていた。その中に、一匹。見慣れた5歳児の姿をした悪魔、べルシウスの姿があった。


「ベルちゃん!?」


「……へへ。助けに来てやったぞ、小娘」


 照れくさそうにシスに近づく使い魔。


「な、なんだアレは!?」


 アリスト教徒の一人が叫ぶ。


「ククク……すっかり驚いていただけたようで」


 闇の魔法使いは、不気味に笑った。


 



 

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