攻防
<<光闇よ 聖魔よ 果てなき夜がないように 永遠の昼がないように 我に進む道を示せ>>ーー清浄なる護り
聖闇の魔法壁。相反する属性を一つにすることで、絶対的な不可侵領域である。今までのリリーが未だに作り出せなかった魔法。
魅悪魔オイリエットによって、完全に潜在能力を引き出された形である。
そして。
<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー理の崩壊
自身の結界と同様、攻撃における聖闇魔法。交わるはずのないの理を合わせることで超崩壊を起こす極大魔法。攻守の最高峰の魔法を同時に使用するリリーは、まぎれもなくヘーゼン=ハイム級だった。
彼女の放った魔法は光と闇が入り混じりながら、アシュへと一直線に向かう。
「どあああああああああっ!」
間一髪。よけるのが3度の飯より得意なアシュは、横っ飛びでなんとか回避する。
「はぁ……はぁ……相変わらず聖闇魔法に頼り切った戦法か。芸のない」
「アシュ様。全身汗だくで、真っ青で、体中震えているその様子では、まったく意味のない強がりになってると思いますが」
「……ふっ」
ミラの至極まっとうな指摘を、鼻で笑うキチガイ魔法使い。
しかし、リリーの攻め方はヘーゼンのオーソドックスな戦闘スタイル。これが、どんな魔法使いに対しても有効であることは、もはや疑いようのない事実である。
「……仕方ないね。リプラリュラン」
アシュはそうつぶやき手をかざす。すると、飛翔した戦悪魔の手のひらに闇の高位体が凝縮される。
やがて、その闇は弾け飛び、リリーに向かって次々と放たれる。
『地を嗤う者への復讐』
かつて、戦天使が数千の闇魔法使いを一瞬にして消滅させた超魔法の闇属性版である。いかに、聖闇の魔法壁と言えど、かつてヘーゼンが召喚していた中位天使のそれと対峙させたことはない。
高位体が次々の聖闇の魔法壁に直撃。そして、アシュの狙い通り彼女の魔法壁は跡形もなく、消滅した。
「ククク……聖闇の魔法壁はあくまで、聖魔法と闇魔法を共存させることで互いの効果を加速し合わせたもの。必然的に、それを超える威力の攻撃に対しては、必ずしも無敵ではない。脳内にある教科書に刻んでおくといい」
アシュはそう笑い、左手でリリーに向かい指をさす。すると、地を這っていた滅悪魔ディアボロがリリーに向かって突進を始める。
<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー理の崩壊
<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー理の崩壊
<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー理の崩壊
聖闇魔法の3連発。リリーは、明らかに超人を超える速度で滅悪魔の攻撃を躱しながらそれを放つ。もちろん、人間にできる芸当ではない。魅悪魔オイリエットの超人的な身体能力と反射神経を使い、それを放ち続ける。
しかし、滅悪魔には当たらない。ディアボロは高速で飛翔し、その攻撃を悠々と躱す。
「……これが、中位悪魔同士の戦い」
ランスロットは、ゴクリと喉を鳴らす。彼は思わず自分の手のひらを見た。彼らに比べて、自分の器はなんと小さなものか。
そんな中、治療を受けていたテスラが、瞳を開ける。
「ま、まだ動いてはいけません。あなたの傷は致命的です」
「このままでは……リリーは負けます」
「……あの娘はもはや、魅悪魔に憑依されています。どちらが勝とうと負けようと、我々にとっての結末は変わらない」
ランスロットはあきらめたように息を吐く。実際、どうなっても皆殺しにされる未来しか思い浮かばない。せめて、テスラを治療できればと思ったが、思っているよりも傷が深い。
とてもじゃないが、戦闘に復帰して戦線を取れるとは思わない。
「……セナを呼んできてください」
「なっ……あの裏切り者をですか!? 冗談じゃない!」
ランスロットは吐き捨てるように拒絶した。もはや、憎いと言葉に出すことすら憎々しい。奴が原因で中位悪魔を呼び寄せてしまった。
「お願い……します」
「……わかりました」
あきらめるように、ランスロットはセナを強引に連れてきた。




