奇襲
アシュがランスロットの側近たちを調略している中、実際の戦況は芳しくなかった。ロイドとミラは当然獅子奮迅の活躍を見せるが、いかんせんアリスト教守護騎士が強い。
このままでは、負けるとミラは思った。
それもそのはず、彼らは百万といるアリスト教教徒から選りすぐられた精鋭。ナルシャ国だけではない。大陸の国籍問わず、強さのみを証明してきた正真正銘の猛者たちだった。
「アシュ様、何かよい手はございませんか?」
「ククク……剥がれてきたようだね。メッキでまとった金粉は所詮は黄金には敵わない。そして、それこそがサモン大司教と君との明確な違い――」
「……」
駄目だ。もはや、目の前のクズ主人はランスロットを痛ぶることに必死。必死すぎる。もはや、こちらに目を向けることも、耳を傾けることもない。アシュは一点集中型の研究者気質だ。多方面に気を配らないといけない戦闘には絶対的に向いてはいない。
「ミラさん」
そんな中、シスがボソッと声をかける。ミラが視線を向けると、その蒼色に輝く瞳が雄弁に物語る。日々、格闘戦をこなす師弟コンビの絆は、もはや言葉すら不要なほどの信頼が生まれていた。
シスが取り得る戦略は二つ。このまま守るか、攻め込むかである。もちろん、守る方がリスクは少ない。リリーは絶賛爆睡中なので、下手に攻め込み彼女を人質にでも取られれば降参せざるをない。
「リリー、リリー」
戦闘が始まって30分ほど。休憩とは呼べぬほどの時間だが、彼女を守りながら勝つことはできない。裏を返せば、リリーさえ起こしてしまえば、かなりの優位が取れるはずだ。
「ん……」
うめき声をあげ、薄目を開けた金髪美少女は、数秒で事態を把握する。
リリーは人生のスケジュールを全て予定で埋めたいほどの計画派である。予期せぬ目覚めによる寝起きは、災害級に悪い。
しかし、シスの蒼色に輝く瞳が瞬時にそれらを打ち消した。
……あとは、上手くアシュが呼応するか。戦闘には向かぬとは言え、腐っても闇魔法使いの最高峰。シスの援護には最適な人材だといえる。
シスもミラも、リリーですら、必死にアイコンタクトを送る。誰かの視線さえ見ればきっとわかってくれる。この事態を打開する一手を彼ならば思いついてくれるはずだ。
「側近たちはランスロット君のことを本当に本当に軽蔑しているんだな。わかるよ。ハッキリ言って、君にはサモン大司教のようなカリスマがない。ただ、独善的な独裁者だ。13年前、君と同じような年頃の彼と会ったことがあるが、それはそれは立派な聖者だと思ったものだ。本当に君と彼は兄弟なのかい? 違えば違うものだ――」
「「「……」」」
駄目だこりゃ。
あのアシュに、臨機応変さを期待するのは全くの無駄であった。シスは、援護をあきらめて単身で攻め込むことを決める。
アリスト教守護騎士には、シスの速さを見せていない。近接格闘が得意なことは知られている。しかし、それでもなお彼らの想像以上の動きをシスという少女は取れるのである。
<<漆黒よ 果てなき闇よ 深淵の魂よ 集いて死の絶望を示せ>>ーー煉獄の冥府
そんな中、アシュに劣らぬ極大の闇魔法を、ロイドが放った。仮面で覆われた魔法使いは、全体の戦況とシス、リリーの状態を確認。ミラとの一瞬の視線を交わしただけで、彼女たちの意図を読み取った。超有能。
どこかの誰かとは、どえらい違いである。
<<光陣よ あらゆる邪気から 清浄なる者を守れ>>ーー聖陣の護り
瞬間、ランスロットは光の魔方陣を張って闇の極大魔法を相殺。全体の意識がロイドの放った魔法に集中した一瞬。
シスが飛び出し、ランスロットめがけて襲いかかる。
「えっ……ど、どうした?」
「「……」」
一方、アウアウしながら取り乱す闇魔法使い。『死んでしまえ』とミラとリリーの思考が一致した。
シスの奇襲にアシュは取り乱して呆け顔。ただ悪口を全力で頑張っていたキチガイ魔法使いは、完全に蚊帳の外。アウトオブ、眼中である。
シスの跳躍は誰よりも綺麗で素早かった。ランスロットも側近も、アリスト教守護騎士の誰も反応できないほど、それは華麗だった。
<<土塊よ 絶壁となりて 我が身を守れ>>ーー土の護り
ただ、一人。
その場に出現した大聖女……テスラを除いては。
【お知らせ】
いつもご拝読ありがとうございます。はなです。突然ですが、ご連絡したいことがあります。
本作をカクヨムコンにも挑戦してみようかと思ってます・・・
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883443984
この作品は自分でも一番好きで、細く長く続けて行きたいとも思っていたので
随分悩みましたが、やっぱ何事もやってみんと精神で頑張ります! カクヨムの方が話はかなり進んでますので、ぜひ覗いてみてください!
長々とすいません。今後とも何卒よろしくお願いします!




