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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第1章 アシュ=ダール編
40/452

カウントダウン



 30秒時点


 目を瞑って魔法を練り始めるアシュに対し、ヘーゼンはすかざず魔法を繰り出す。突然現れた少女との会話を黙って聞くほどの余裕がある彼だったが、この闇魔法使いに詠唱時間を与えることは危険だとわかっていた。


<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー理の崩壊(オド・カタストロフィ)



 自身の結界と同様、攻撃における聖闇魔法。交わるはずのないの理を合わせることで超崩壊を起こす極大魔法。攻守の最高峰の魔法を同時に使用するヘーゼンは、まぎれもなく最強の魔法使いだった。


 彼の放った魔法は光と闇が入り混じりながら、アシュへと一直線に向かう。


 28秒時点


 闇魔法使いの前に立ったリリーもまた、魔法を詠唱する。


 史上最強の魔法使いと名高いヘーゼンの聖闇魔法。数多くの弟子を持ち、星ほどの論文を書いて世界に貢献した彼の魔法は至る所に残されている。当然、その術式も全ての公にされ、誰もが理論上は彼の魔法が使えることになっている。


 理論上は。


 ヘーゼンの偉大なところは、光と闇が共に最高峰のレベルであるということ。通常は、アシュのように偏るのが普通である。故に、彼の魔法を理論上解明していても、誰も彼レベルの聖闇魔法を放てない。


 リリーもまた、聖信主義者でありヘーゼンの魔法理論を学び、何度も聖闇魔法を試みたが、闇の力が明らかに足らず断念した過去を持つ。


 しかし、リリーはアシュ=ダールというカンフル剤を注入され成長した……いや、成長どころではない。類い稀な聖闇魔法使いとして異常な進化を見せた。


 彼女の天性は自然に己が次になすべきことを知っていた。かつて何百回も、何千回も詠唱した魔法の詠唱を。そして、指先は以前アシュ=ダールが印結ゼールで見せたそれを完全にトレースしていた。


<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー理の崩壊(オド・カタストロフィ)


 放たれた聖闇魔法は、ヘーゼンの放ったそれと威力、質共に変わらないものだった。見事にそれは二人の間で弾けとび、見事に魔法は相殺された。


「……素晴らしい」


 ヘーゼンは気がつけば口にしていた。それは、善悪を超えた賞賛。アシュが奇跡的に不老不死を成功させた時に唯一零した褒め言葉と同様だった。


 23秒時点


 魔法の詠唱が終わった闇魔法使いはその瞳を大きく開く。その視線の先には壮絶を極めている天使と悪魔だった。


 リプラリュランの聖剣オリディスクに串刺しにされ、傷を負っているディアブロ。悪魔は戦天使を蹴り飛ばして聖剣を抜き、辛うじて立ってはいるが、もはや悪魔と天使の雌雄は誰が見ても明らかだった。


「ディアブロ!」


 その掛け声に応じ、悪魔は召喚者の元に飛翔する。アシュは、ディアブロに向かって右手を差し出す。躊躇なく悪魔は、鋭い牙で闇魔法使いの腕を引きちぎる。


 代償行為。


 地上に舞い降りた天使は、地上から召喚された悪魔は、本来の力の10パーセントほどしか出せないと言われている。それは、本体が天界、魔界に残しているからであり、地上に来ただけでも莫大な魔力を使用するからである。それを引き出すためには召喚者の代償がいる。


 逆に代償を与えれば、悪魔はその力をより引き出すことができる。


「……珍しいな。貴様が己の身体を差し出すとは。あれほど自らの身体が傷つくことを恐れていたのに」


 ディアブロが美味そうに腕を喰らいながら話す。召喚者の肉を喰らったことで、悪魔は言葉を話せるまでに力を引き出された。


「ぐっ……ククク……そうしたかったから、そうした。それでいいそうだよ?」


 痛みを堪えながら、全身に冷や汗をかきながら笑ってみせるアシュ。


「あの娘の影響か?」


 そう悪魔が視線を送ったリリーは、現在ヘーゼンと聖闇魔法の応酬を繰り広げてそれどころではない。


「馬鹿な。僕があんな小娘に……ところで、次の僕の一手はわかるだろう? 長い付き合いだからね」


 アシュが言うと、ディアブロは高らかに笑って背中を見せ、跪いた。闇魔法使いは悪魔の角を掴んでその大きな背中に足をかける。


「……行くぞ!」


 そう叫ぶと、ディアブロは再び飛翔してリプラリュランに突進した。


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