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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第4章 リアナ=ハイム編
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召集

 昔からリリーはヘーゼン=ハイムの模倣をしていた。その中で習得できなかったものの一つが、異なる五本の指で五本の異なる魔法を出すという行為。だが、指に魔力をこめて魔法を相殺するという行為は、それと酷似していることに気づく。今ならある程度、五本の指で異なる魔法を放てるのではないかという自信はあった。


 しかし、それができたところで目の前の強敵を倒せるかと言えば、答えはノーだ。付け焼き刃で敵う相手ではない。ならば、苦し紛れに一か八かを狙ったフリをすれば。単一属性の魔法しか放てないフリをすれば。苦し紛れに魔法が制御できないフリをすれば。相手に本当の狙いを悟らせないことができるのでは。そう判断した。


 リリーが行ったことはブラフを織り交ぜること。狙いは、氷の塊を五箇所つくり、光魔法で彼らの視界を潰すこと。実際、魔法は狙い通りの場所に行き、見事彼らを騙しきった。


              *


「と言うことなのだろうな」


 アシュは水晶玉を眺めながら、得意げに解説をする。ワインを傾けて、チェダーチーズを食べて、足を優雅に組みながら。


「……」


 いいご身分だな、と有能執事は思った。とは言え、これらの行為はクソご主人の平常運転である。決して攻撃の届かぬ禁忌の館(この場所)から、戦闘を観覧して、解説をする。


「さすがは僕の教え子だな。いや、すべては僕の教え通りなのだから、ここで褒められるべきは、本来は僕なのか……ふむ……ミラ、どう思う?」


「その問いは、難しすぎて、私にはわかりかねます」


「まあ、僕なんだろうなきっと」


「……」


 頼むから死んでくれ、とミラは願った。だいたい、仮にこの刺客たちに囲まれたら、この闇魔法使いは逃げの一手であるだろうことは容易に想像できる。そもそものスタンスが二人とは異なるのに、教えもなにもないだろうというのが有能執事の見解である。


「しかし、拍子抜けだな。もう少し、腕が立つ者たちかと思っていたが……ミラ、準備はできたかい?」


「はい」


 執事が頷き、指を鳴らす。すると、水晶玉の中で、無数の鴉が彼ら3人を埋め尽くす。次の瞬間、サハンズ、タリア、バッシュの3人がアシュの前に現れた。


「……ここは?」


 サハンズはつぶやく。他の2人は視界が塞がれているので、未だ状況が掴めずにいる。


「ああ、失礼。自己紹介をさせてもらうよ。僕の名はアシュ=ダール。ある者は僕を『天才魔法使い』と呼ぶ。しかし、またある者は『稀代の研究者』と。またある者は『生命の探求者』。そして、またある者は――」


「アシュ様、前置きが長いです」


「おっと失礼。僕としたことが。ミラ、もてなしの準備はできているね?」


「はい」


「よろしい。じゃあ、行こうか」


「ちょ、ちょっと待て。なんなんだ、いったい?」


 サハンズは混乱気味に尋ねる。もちろん、その間でさまざまな抵抗を試みているが、すでにミラの魔法で自由を効かなくしている。


 魔法抵抗のないサハンズに、視界を潰されたタリアとバッシュ。完全無防備ともいえるこの3人をこの場所に連れてくることは非常に容易だった。かつてデルタ=ラプラスが考案した空間移動魔法の闇属性版。大量の鴉を媒介として使用しなければ使うことができないが、すでにこの天才魔法使いは開発に成功していた。


「ああ、ここかい? 僕は禁忌の館と呼んでいるがね。光栄に思いたまえ。滅多に来られる場所ではないよ」


「そ、そんなことを聞いてるんじゃねぇよ! お前はなんだ? なぜ、俺たちはこんな場所にいる? 目的はなんだ?」


「……うるさい脳筋ゴリラだね。ミラ、実験室に放り込んでおきなさい」


「はい」


 再び執事が指を鳴らすと、仮面を被ったロイドが入ってきて、サハンズを浮かせて連れて行く。


「「……」」


 その様子を見ながら、身動きの取れない二人は顔面蒼白な表情を浮かべる。


「ああ、安心したまえ。なにもとって食おうと言うわけじゃない。君たちと少し話しをしたくて、ここに来てもらったんだ。特に、美しい淑女レディには相応のもてなしをするのが、僕の流儀でね」


 アシュはようやく視界の晴れたタリアの手をとり、エスコートを試みる。


「……」


「怖がらなくていいんだよ。僕は君たちとお友達になりたいだけだからね」


 闇魔法使いは歪んだ笑顔で笑った。





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[一言] >「怖がらなくていいんだよ。僕は君たちとお友達になりたいだけだからね」 絶対なりたくないwww
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