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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第1章 アシュ=ダール編
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ヘーゼン=ハイム



 ヘーゼン=ハイム。史上最高の魔法使いを挙げる時、必ずその名が出るほどの魔法使いである。光属性の魔法と闇属性の魔法を共に最高峰のレベルで扱うことができる大傑物だ。


「彼は天才だな」


 アシュはロイドの才能を素直に認めた。彼はへ―ゼン=ハイムを()()()、その魂を捕らえたのだ。肉体は全盛期に改造を施してあるようで、若々しく力みなぎっていた。


 ヘーゼンに対し、アシュは100年以上も逃げ回るのみだった。不死であった身の上だが、彼にかかればそんなことは何の足しにもならない。生かしたまま千年幽閉など彼にとっては朝飯前だ。


「アシュ……久しぶりだな」


 ヘーゼンは無表情でアシュに話しかける。


「やはり……人形となったのですね。先生」


 ミラと同じ技術が施されている。ただ、異なっているのは魂の錬成方法のみ。アシュはミラの魂を一から錬成したが、ロイドはヘーゼンの魂をベースに錬成した。


「あの元弟子は最悪だな。まあ、お前ほどではないが」


「……お褒めいただきまして」


 そう軽口をたたきあいながらも、互いに間合いをはかっている。ヘーゼンはミラと同様、創造主の言うことには逆らえない。想いはどうあれ、もはやアシュに対し全力で襲うしかない。


<<闇よ闇よ闇よ 冥府から 出でし 死神を 誘わん>>


 アシュが唱えると地面から黒い魔法陣が現れ、悪魔ディアブロが現れた。アシュが召喚できる悪魔の中でも高位で、最もよくコンビを組む間柄と言っていい。


 一方、ヘーゼン。


<<白の方陣よ 天界より 光の使者を 舞い降ろさん>>


「……リプラリュラン」


 アシュの顔が思い切り引きつる。


 主天使(戦天使)リプラリュラン。後にも先にも召喚できるのは、ヘーゼン一人だと言われている。彼はその戦天使と共に数万もの魔法使いを葬ってきた。アシュの召喚したディアブロよりも数段高位で、強力な天使である。


「……ディアブロ、頼んだよ」


 とにかく、そう声をかけて次の魔法陣の精製を始める。この悪魔を召喚したのは理由がある。アシュは、近接戦闘がとにかく苦手だ。だから、肉弾戦を得意とする悪魔でないと相性が良くない。そうなると、より高位の遠隔系の悪魔より使い勝手のよいディアブロということになる。


 悪魔がアシュの掛け声で高速で飛翔し、リプラリュランを捉える。振り下ろされた爪は盾で防がれたがその連続攻撃で戦天使に反撃を許さない。


 悪魔と天使の戦いは、壮絶を極める。離れたら不利。それが、わかっているのでディアブロは距離を離さない。若干ではあるが、悪魔が有利な展開を作っていた。


 しかし、いずれは戦天使に押される時が来る。アシュにはそれがわかっていた。一気に極大闇魔法でヘーゼンを滅する。それが、彼の考えであった。


<<漆黒よ 果てなき闇よ 深淵の魂よ 集いて死の絶望を示せ>>ーー煉獄の冥府(ゼノ・ベルセルク)


 アシュのシールから放たれたのは莫大な闇だった。見る見るヘーゼンに影が覆い尽くし、彼を呑み込んでいく。


 勝った……そう思った。 


<<光闇よ 聖魔よ 果てなき夜がないように 永遠の昼がないように 我に進む道を示せ>>ーー清浄なる護り(オド・タリスマン)


 ヘーゼン=ハイムの詠唱チャントを聞くまでは。


 聖闇魔法。相反する属性を一つにすることで、絶対的な不可侵領域を作り出すヘーゼンの新魔法オリジナル。もはや、どんな闇魔法も光魔法もヘーゼンの前では無力である。アシュが放った渾身の闇魔法も一瞬にして無効化された。


「お変わりなくて安心しました」


 強がってそう笑うが、内心では膝ガックガクである。強すぎる。一縷の望みを込めて人形になったことで弱体化してると希望的観測を持っていたアシュであったが、あまりにいつも通りに強すぎるヘーゼンに、逆に今までどうやって逃げのびていたんだろうと不思議に思う闇魔法使いである。


 ヘーゼンはすでに聖闇全ての魔法を無効化できる空間にいて、アシュを攻撃し放題。いたぶりたい放題。やりたい放題である。


「さあ、アシュ。処刑の時間を始めようか」


 かつて、弟子だった時に何度このセリフを聞いただろうか。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 次々と放たれる強大な魔法に、ただアシュは逃げるしかなかった。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] カクヨムから、こっちに来ました。 何回見返しても、ヘーゼン最高です!
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