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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第4章 リアナ=ハイム編
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落ち込み


 ズーン……


 という音が流れてきそうなほど、特別クラスの教室はどんよりとしていた。時刻としては朝8時。快晴。普段ならば、クラスメートが次々と登校して、挨拶と雑談で和気あいあいとしている時間である。


「ね、ねぇ……リリー。いい加減、機嫌直してよ」


「……」


 無視。シスが身体を揺り動かすが、圧倒的無視である。完全に意気消沈した金髪美少女は、机に突っ伏したまま、微動だにしない。いつもの習慣で誰よりも早く登校してきた彼女は、3時間以上なにもしないまま、机に突っ伏したまま、微動だにしないのである。


 聖闇魔法を覚えてから、リリー自身、少なくともホグナー魔法学校の誰よりも優秀であるという自負があった。自分がトップであると言う前提に立って、テスラを始め、ライオール……アシュなどと言う強大な魔法使いたちに追いつこうともがいていた。しかし、見事に足をすくわれて、自分の立ち位置がまだまだ至っていないことを思い知らされた。昨日は悔しさで一睡も眠れず、常に反省と後悔が頭の中でグルグルしている。


「「「「……」」」」


 な、なんて迷惑なやつなんだ、とクラスメートは思った。


 元気があったらあったで迷惑。元気がなくても迷惑。どちらにしろ迷惑だというのは、どこかの迷惑教師の教えを多分に受け継いでいるという見解は、クラス全員の陰口で一致していた。


 ガララララッ。


 そんな中、担任のテスラが教室に入ってきた。いつも通り途方もない美貌と、女神のような微笑を浮かべながら教壇の前に立った。


「みなさん、おはようございます。さあ、授業を始めましょうか」


 ガララララッ。


 そして、次に扉を開けて入ってきたのは、副担任のアシュだった。いつも通り余裕のある表情で、不敵な笑みを浮かべながら執事が持参した椅子に座る。もちろん生徒たちが座っている長椅子ではなく、オーダーメイドの、革製の、足が伸ばせる、超高級品の椅子である。


「やあ、諸君。今日も、心地のよい朝だね。僕のことは気にせずに授業を始めてくれたまえ」


 ダージリンティーをたしなみながら、愛読書を片手に堂々と足を組むキチガイ教師の姿を眺めながら、


「「「「……」」」」


 ふ、副担任の態度ではない、と全員が思った。


「ちょ、ちょっと! なんでここにいるんですか!? アシュ先生は副担任ですよね! 職員室で待機していなくていいんですか!」


 リリー復活。額を真っ赤に充血させた美少女は、顔を上げて猛烈に反論する。


「フッ……まさしく僕が副担任だからだよ。若輩者として、正担任の授業を勉強させてもらうと言うのは、このホグナー魔法学校の教師に与えられた権利だとこの校則には書いてあるがね」


 若輩者という言葉が大陸一似合わない男は、ニヤリと不適な笑みを浮かべる。


「ぐっ、ぐぎぎぎぎぎっ……で、でも勝負に負けた人の態度ではないです! あなたは勝負に負けたんだから、もっとシュンとしているべきなんです!」


 苦しまぎれの暴論をアシュに浴びせる。


「……それは、ソックリそのまま君にお返ししたいところだが」


「ぐっ……」


 当然、その反論も予想できたし、それに関してはまったくグウの音もでない。しかし、アシュもまた反論はできないはずーー


「それにしても、僕みたいな大陸最高峰の魔法使いは辛いものだな。自慢ではないが、僕は、これでも数万もの勝負に勝利してきた。そのうち、記憶に残る敗戦など数えられるほどしかない。しかし、一度負けたからと言って、『それ見たことか』と、面白がられたり、はやしたてられたり、騒がれたりするんだから。君たちのように、簡単にコロリと負けられるその未熟さがある意味うらやましいよ。君たちは負け慣れてるから、たとえ敗北したとしても、それが日常なのでなんのダメージもないんだからね。あー、うらやましい」


「「「「「ぐっ、ぐぎぎぎぎぎっ……」」」」


 負けても性格最悪と、生徒全員は思った。


「そして、そもそもリリー君は負け犬の僕に負けたんだから、負け負け犬だな。よくそれで、僕に『あなたは負けたんです!』なんてことが堂々と言えるもんだな。その厚顔無恥な性格に、ある意味敬意を評したい気分だね」


 グリグリ。


 グリグリ。


「ぐっ、ぐぎぎぎぎぎっ……」


 いつも通り、金髪美少女の頭をグリグリする副担任に、いつの日にか勝利を得て、死ぬほどバカにしてやると心に誓った。


「……そろそろ、授業を開始していいですか?」


 ひと通りのやりとりが落ち着いたのを眺めながら、テスラが笑顔で問いかける。


「どうぞどうぞ。担任はあなたなんですから、僕のことはどうぞ気にせずにやってみてくれたまえ」


「……」


 





















 昨日、号泣してたやつの態度ではないな、とミラは思った。



 


 

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