↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第4章 リアナ=ハイム編
PR
338/452

ワイン

 誘われたのは、最上階。広々とした大広間の中に円卓が一つ。そこには数々の料理とワインが並べられている。


「……レイア君がいないようだが?」


 注意深く周りを観察しながらアシュがつぶやく。


「女性は準備に時間がかかるんだよ。間もなく、来るよ」


「そうか。できれば、彼女の瞳と同じグリーンのドレスを希望するね」


「それは来てからのお楽しみだ。きっとお気に召していただけると思うよ」


「ククク……本当に楽しい語らいだ」


 軽口を叩きながら。


 アシュはマリアの模造品《レプリカ》をエスコートして座らせ、続けて自分も隣の席に座る。


「ワインが口に合うか」


 ゼノスはそう言いながら杯に瓶を傾ける。


「いい色だ……そしてこの芳醇な香り。テレクレッサ・ド・マリアージュだね?」


「……違う」


「……」


「……」


 一瞬にして、あたりは微妙な空気に包まれた。


「そうか……いや、失敬。僕としたことが、このエンガレス大地の実りを見逃すとは。グレッサ・デマーゴシュだね?」


「……いや、それも違う」


「……」


「……」


 つ、次は当てろよ。


 敵であるゼノスですら願った。


「ふっ……まったく、君は意地悪だね。イルナース地方のワインを僕に差し出すとは。僕はグロゴーサル地方出身だから、これはいささか難問だったよ。ラ・コステル・ダリードだね?」


「……違うし、グロゴーザルのワインなのだが」


「……」


「……」


 いい加減ワインの名など、どうでもよいゼノス。表面上の薄っぺらい会話にも辟易し、一刻も早く本題に移りたいと思っていた。


 一方、優雅なワイントークを楽しみにしていたアシュの顔面は、これ以上ないくらい赤面していた。


 実はワイン一年生。


 飲めば『バカになる』と母から言われ続けて、30年以上も躊躇していた無駄生真面目魔法使いである。


 しかし、ウンチクは語りたい。


 たびたびパーティなどで繰り広げられるテイスティングコメントに圧倒的な憧れを抱いていた。それゆえ、書物で詰め込んだ知識は超一流のソムリエを凌ぐほど。最近、勇気を出して初めて解禁したワインは超一流だったが、彼にしてみたら苦いとしか感じなかった。


 知識は超一流。


 舌は超初心者。


 これが、現時点でのワイン偏差値だった。


 しかし、これが大人の味。


 その階段を一歩登ったと嬉しさでいっぱい。すぐさま、自分の知識を披露したかったが、その圧倒的交流関係のなさゆえに、呼ばれるパーティは皆無。圧倒的非モテゆえに、デートも皆無。


 この場は、アシュにとっては逃せぬワイン・チャンスだった。


「はぁ……正解を言おうか? サーー「サドレリック・バドーレ」


「……」


          ・・・


「いや、別に君の言葉の頭文字を聞いて答えたんじゃないよ。たまたま、後から滲み出てくるフルーティな味わいが僕にこの言葉を吐かせただけで。それが、偶然にも君との言葉に重なっただけで」


「……違う」




















「さあ、食事をしようか」


 なにごともなかったかのように、アシュはナイフを手にもった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こんなん笑うでしょwwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。