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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第4章 リアナ=ハイム編
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技術


 闇魔法使いは、死体に近づいて頭を優しく撫でる。その掌は漆黒の光が禍々しく帯びる。


「なかなか掴めなかったが、百体越えでやっとと言うところか」


 それは、あまりにも、無邪気な笑いだった。純粋な知識欲に駆られ、それを暴けることに悦を感じている笑い。


<<亡者よ 深淵より 偽りの 聖者を暴け>>ーー死者の告白(ゼノ・アスク)


 アシュの描いた印《シール》から漆黒の光が発して、対象の周りを包んだ。


 死体から意識のみを取り出し、知っている知識を吐き出させる闇魔法。死体の状態に左右される面があり、より傷ついていない状態の方が、情報は引き出せやすい。


「……ぐっぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ」


 苦しげなうめき声が周囲一帯を木霊する。もはや、その死体の口は、まるでなにかに操られているように動きだす。


「状態はいいが、悠長にはしてられないな。手短に聞こう、まず君の名前は?」


 アシュが質問すると、


「……コビル=シリオ」


 その死体は流暢に話す。


「そうか、コビル。君の見たものを話してもらおう。死者の王(ハイ・キング)の居場所はわかるかい?」


「わから……ない」


「……では、質問を変えよう。ここまで来た道のりを教えてくれ」

 

 アシュは洋筆紙で死体の証言を書き込んでいく。


「……ふぅ、こんなものか。ありがとう、非常に参考になった。最後に、誰かに伝えたいことはあるかね?」


「サリド村の……シノン=バルーに……行けなくてすまない……と」


「……わかった。伝えよう。安らかに眠りたまえ。コビル=シリオ君」


 添えていた手を頭から外して立ちあがる。


 やがて、男を包んでいた黒い光は消え、


 フッと。


 その死体は、笑った気がした。


 メモをしたを闇魔法使いは胸ポケットにしまい込む。


「……約束は守るの?」


 レイアは自然と尋ねていた。


 それは、初めてだった。


 初めて、アシュに対して憎しみ以外の感情で。それがなんなのか、自分の中でも整理しきれぬまま。


「まさか、気休めだよ。彼の優先順位は僕にとってあまりに低い。でも……」


「……でも?」


「いつか……僕が暇で暇で仕方なかった時に思い出して、気が向いたら、いつかね」


 そう答えた背中は、まるで心を見せるのを拒んでいるように見える。


「慈悲を施したつもり?」


 彼女はキッと睨む。


 再び憎悪の炎を燃やして。


 この男は悪人だ。


 悪人でなければいけないのだ。


「……慈悲?」


「だってそうじゃない。その行動はまるで、善人みたいで……私にはまるで偽善に見える」


「ククク……」


 闇魔法使いは振り返って笑った。


「なにがおかしいの?」


「君は鏡で顔を見たことがないようだね」


「なっ……そんなものあるに決まっているでしょう!」


「偽善は君たちアリスト教徒のお家芸じゃないのか。まあ、君たちは慈しみの心をもって接するのがお好きなようだから、そのような思考になるのも無理はないか」


「……くっ」


 やっぱり、最低魔法使いと思い返すのには30秒もかからなかった。


「まあ、僕はそんな気持ち悪いものは御免だね。慈悲なんてものは死者に対しての最大の侮辱だ。君は商品を買ったときに、お金は支払わないのかい? 彼は僕に情報を提供した。それに報いようと対価を支払うことはおかしいことかな?」


「……」


「まあ、いいさ。あまり時間がないんだ。他の死兵にも話を聞かなければ。君たちは、僕の時間を邪魔しないように周囲を固めてくれたまえ。無能な君たちでもそれぐらいならできるだろう?」


 その闇魔法使いの表情は、あまりにも歪んで見えた。


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[一言] アシュのツンデレが止まらない( ˘ω˘ )
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