↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第4章 リアナ=ハイム編
PR
277/452

後味


 静まりかえる会場。恐れおののく敵。味方。


「ライオール先生……あのリリーという生徒はなにを考えているんですか?」


 危うく生徒を殺害されそうになった敵国代表監督は震えながら問いかける。


「……見事な四属性魔法でしたな」


 一方、まずはリリーの突出した技術を褒め称えるライオール。実際に、四属性魔法が放てる人材など大陸全土を見渡してもそうは存在しない。マイナス面よりプラスの面を見ようとするポジティブ教師である。


「そういう問題ですか!? 躊躇なく殺そうとしましたよ! ねえ、やつは躊躇なく殺そうとしたんですよ!?」


 リデールは、まるでシリアルキラーを見るような眼差しでリリーを指差して訴える。


「お、落ち着きましょう。もっとご自分の生徒を信頼なさってください。彼らが魔法壁を張って助かる可能性は高かった。リリーもそれを計算してのことでしょう」


「確かにそうかもしれません! しかし、それでも数パーセントは、魔法壁を張らずに即死するという結末も存在した。そうじゃありませんか!?」


 セザール王国代表監督である彼も、かなりの実力をもった魔法使い。見立てでは、3パーセントほどの確率で生徒たちは死んだ。


「……恐らくですが、その時、彼女はこう言うでしょう。『私が悪いんじゃない。ルールが悪いんです』と」


「……っ」


 そのライオールの答えに。


 リデールは、ますます、シリアルキラーを見るような眼差しをリリーに向けた。


 実際、彼女の思考は推察通りだった。嫌ならルールブックに『殺してはダメ』とでも書いておけばいい。生徒に全力をもって闘わせることが運営の責任であり、全力を尽くして不(・)慮(・)の(・)事(・)故(・)で死んでしまう可能性を潰しこむことは運営の責務だ。


 仮に、彼らが死んで彼女が非難された場合、彼女は運営を相手取って裁判でも起こすのであろう。


 末恐ろしい思考を持った金髪美少女である。


 以前はここまで酷くはなかった。どちらかというと、ライオールが大事にしてきた道徳観をキチッと持ったいわゆる優等生生徒であった。しかし、アシュによる英才教育の賜物で、逆の意味で一皮も二皮も向けてしまう。本人は気づいていないし、指摘されたとしても断固了承はしないであろうが、極めてアシュ=ダール的危険思想に傾いている……


「……いや、これはヘーゼン=ハイム的な思想だな」


 ライオールは静かにつぶやく。


 目的を達成するために、障害となる倫理観を超高速で除外する理論を構築して排除する。その闘い方は、以前の師匠と見事に重なる。


 その意味ではアシュは違う。彼は彼なりの倫理観を持ち、そこから外れるような行為はいっさい行わない。なので、彼は戦闘を好まないし、いざ戦闘になれば極力他人に任せて逃げの一手である。ある意味では、本人が断固主張する平和主義者である。


 不幸なのは、その倫理観自体が極めて常識外れであり、他人にとっては単なるキチガイ魔法使いしか映らない。


「……棄権する」


 リデールがボソッと口にする


「はい?」


「棄権する! この勝負はセザール王国の敗北だ」


「……よろしいんですか?」


「よろしいもなにも、こんな危険な戦闘を監督者としてやらせられません」


 至極もっともな意見を叫ぶセザール王国代表監督。


「いいのですか? あのナルシーという生徒。私の見立てではまだまだ実力を発揮していませんが」


 できれば、もう少し彼女の実力を観察したかった好奇心旺盛好々爺。


「発揮して勝ったらあのキチガイ教師にプロポーズ……この勝負、勝っても負けても勝利なんかない」


「……」


 た、確かに、とライオールは思った。





















 こうして、この戦いは後味悪く幕を閉じた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。