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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第4章 リアナ=ハイム編
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戦い


 30分間の自由時間が与えられ、各々生徒が散らばっていく。タッグを組む者、隠れる者、魔法の詠唱チャントを復習する者、生徒毎に過ごし方は違う。


 ボッチ魔法使いはと言うと……


「アシュ……何やってんの?」


 森林の奥で。なにやら地面に色々描いている。


「ああ! こっからは、入ってきちゃダメだぞ」


 リアナから数メートル先を指差して、牽制する。


「な、なんでよ! あなた、絶対に的になるから私とタッグを組んでーー」


「組むわけないだろう! いいか、君と僕は敵だ。と言うか、足手まといだね。しっ、しっ……」


「むーっ……」


 明らかに邪魔者扱いされ、膨れっ面を見せる亜麻色ロングの美少女。「ふーんだ、知らないんだからねっ」と可愛すぎる捨て台詞を残して、早足で去っていく。


「……」


 数秒、その後ろ姿を見送りながらも、すぐに《《作業》》に戻る。


「フフ……フフフフ……フフフフフフフフフッ」


 なにかを妄想しながら、手際よく罠を作っていく性悪魔法使いであった。


 一方、クリストはグループを作り始める。リーダ=ロウとバズ=ルールー。彼らは実践魔法が得意な上位3人である。こんなに早くアシュを《《排除》》できる機会ができるとは思わなかったと、クリストは心の中で小躍りする。たとえ、殺しても罪には問われない。全くもって千載一遇。内心でほくそ笑みながら、仲間同士で偽りの絆を確かめ合うことに自由時間を費やした。


 そして、もう1つの勢力。それは、クラスのカーストでも中の中。中堅の実力を持つ生徒たち。彼らは、そこそこの実力を持ち、何よりチームワークが得意。そうやって、今まで、この世知辛い世界を渡り歩いてきた。チームプレイこそ、我らの武器。1位になるのは1人だが、上位に残れば、この特別授業でいい成績を納めれば、もしかしたらヘーゼンの目に留まることができるかもしれない。そんな淡い期待を描いた集団だった。彼らは、結託までが異常に早く、作戦を立てることに時間を費やす。天性の才能は少ないが、綿密に練られた行動をするのは大得意な彼らであった。


 それぞれ思いを巡らして時間を過ごしている中、ひたすら逃げ惑っている生徒が1人。勤勉美少女のジルである。実践魔法は大の苦手で、どの集団グループにも入れなかった、いわば狩られる側。そんな絶望感を抱きながら、あてもなく森林を走る。


「はぁ……はぁ……もう、嫌っ……あああああああああああっ!」


 突然、漆黒の縄が足元に巻きついて、雁字搦めにされる。


「くっ……まだ、30分経っていないと言うのに。誰だ、マヌケは……っと、ジルじゃないか」


 林から出てきたのは、アシュだった。


「な、なんなのよこれは!?」


「フフフ……これは、トラップだよ。《《こんなこともあろうか》》と、あらかじめ仕掛けておいたんだ。発動させるだけなら、この短時間でも可能だからね」


「と、とにかく! 早くこの縄を解いてよ」


「……はぁ。仕方がないな。まだ、時間まで3分あるし。あーあ、貴重な罠が無駄になってしまったじゃないか」


 ブツブツとつぶやきながら、アシュがジルの縄を解き始めた時、


 なにかを思いつき、不敵な笑みをうかべる。


「そうだ、ジル。もし、よければ僕と組まないかい? どーせ、開始のゴングがなれば、君など一瞬にして負けてしまうんだ」


「なっ……失礼ね……そんなこと……あるけど」


 勤勉美少女は諦めたように、下を向く。


「それならば、僕と組んで上位になれる方がいいだろう? 1位は譲ってはやれないが、僕の言う通りにすれば2位にはなれるよ。いい提案だろう?」


「……」


 確かに、今のままでは下位ベスト5は固いだろう。そんな成績を繰り返していけば、いずれ特別クラスから外される可能性も出てくる。しかし、目の前の性悪生徒を果たして信用してしまっていいものか。ジルはしばし、悩む。


「まあ、君がいなくても、僕は全然構わないが。仮に断ったとしたら、開始早々で君に魔法を喰らわせて終わりにさせてもらう。開始1秒で負けると言う伝説を作ってしまうね」


 愉快そうに、アシュが笑う。


「ひ、卑怯よ! そんなの脅しで強制じゃない!?」


「どう捉えるかは君の自由だが。どうする? 開始1秒でやられるか。僕と組んで上位を目指すか?」


「う゛ーーーーーーーーーーーーっ……わかった! 組む。一緒に組む」


 あきらめるようにジルが叫んだ時、遠くから、戦闘開始の合図が鳴った。



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― 新着の感想 ―
[一言] これはまた面白いコンビがwww
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