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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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そうか……


 果てしないほどの魔力が、アシュの元に集まる。


 無数にある選択肢は、いつの間にか一つだけになった。それは、閃きではない。200年以上生き、史上最強の魔法使いヘーゼン=ハイムと渡り合ってきた記憶の一部分を捉え、闇魔法使いは詠唱を始める。


 まるで、あらかじめ決められていたことのように。


<絶対零度の 鋼鉄よ 木々を生み出す大地よ――


 水、金、木、土。各々の属性を持って超魔力を込めて。一つ一つが最強クラスの威力になるほどの魔法を、その糸を渡るような繊細さを持って。息を吐くことすらできないほどの緊張感を持って。


「五属性魔法……」


 片膝をついていたレインズがつぶやき、属性魔法の最高峰だと予測する。上級戦士である彼にも伝わるほどの魔力で、確かに放てれば、絶大な威力をもたらすことは間違いない。


 しかし。


 同時に、それでも、底すら見えぬ怪悪魔に通じるであろうかと。不安な一抹の感情が消えはしない。それほど、ロキエルの存在は圧倒的だった。果たして人智が及ぶ最高峰で、あの悪魔に立ち向かえるものかと。


――炎よ限界を超え灼熱すら焼き尽くし――


 火までの属性を唱えたところで、ミラは、続きがあることを理解する。


 まだ、闇が唱えられていない。


 六属性魔法。


 アシュ自身の最強魔法。魔力不足が故に生涯放つことのできなかった理論のみの極大魔法。魔薬の力を使い、文字通り彼自身の全てを込めた魔法を怪悪魔にぶつけるのだと、確信する。


 しかし。


 その光景を感じ。


 その圧倒的な魔力を前にしても。


 ロキエルは、不気味な笑顔を浮かべた。


 これならば、消滅することはない。


 ()()()()()()アイツの放つアレではないと。


 怪悪魔は勝利を確信し、避けずに受けることを選択する。


 ――漆黒よ 果てなき闇よ 深淵の魂よ――


 闇魔法の詠唱を開始した時。


 アシュの身体が蒸発を始める。熱ではない、なんらかによって。その存在を昇華するように。全てが無に溶け込むように。


「クエエエエエッ……」


 その姿を感じ取った時、ロキエルは更に不気味に、至福に微笑む。


 全身全霊をかけたその魔法すら通じぬと知った時、真正面からそれすら受け止めた時、目の前の憎き魔法使いは、どのような表情を浮かべるだろうと。どのような絶望を感じるだろうと。


 ()()()


 ――闇獣よ その光印をもって――


 アシュのすぐ隣で。


 無表情で立っているデルタが。


 聖属性の続きの詠唱を行う。


「……クエエエエエエエエエエエッ!?」


 怪悪魔の声が一瞬にして引きつる。


 七属性魔法。


 全盛期のヘーゼンが()()()()()()、怪悪魔、戦天使を従えた超魔法。


 すでにこと切れているデルタを操り、


 アシュは、


「僕の弟子なんだ。当然、一属性くらいは手伝えるのだろうね?」


 とつぶやき、


「……」


 死者を操る魔法に掛かったことに。


 もはや、話すこともできなくなったデルタに。


「……そうか、君は死んだんだね」


 寂しげに笑った。


 ――万物を滅する一撃を>ーー神羅万象の一撃(ゼール・バ・ドー)


「……クエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッエエエエエエエエエエエッエエエエエエエエエエエッエエエエエエエエエエエッエエエエエエエエエエエッエエエエエエエエエエエッエエエエエエエエエエエッ!」


 放たれた魔法は、周囲の全ての存在をかき消しながら、


 音も、


 衝撃も、


 光も、


 闇もない、


 不可思議な色を放ちながら、怪悪魔に直撃した。



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― 新着の感想 ―
[一言] うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!
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