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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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閃き


 グルグルグルグル。


 闇魔魔法使いは、目を瞑りながら歩き回る。周囲が激闘を繰り広げることすらも、気にもする様子もなく。


 レインズ、ミラ、デルタ。それぞれが大陸でも有数の実力者であることは間違いない。しかし、ロキエルの前では歯が立たない。実質、このままではジリ貧だということだ。


「ふむ……面白いな」


 かつて、怪悪魔と戦った時のことを思い出してみると、悪魔融合での攻撃は、通じていたように思う。あの時ほどの力が一時的にでも出せれば勝算はある。しかし、現時点での魔力はスッカラカン。優秀な教え子のおかげで、優秀過ぎる教え子のせいで、足下で爆睡している金髪アホ娘が原因で、歩くのすらままならない。


「アシュ様……まだ、なんにも思いつきませんか?」


 ミラが、怪悪魔の斬撃をいなしながら尋ねる。


「……」


 無視。聞こえてはいるが、愚問には答えない性格最悪魔法使いである。いや、余裕があるなら、思いついたら実践してるわと言う罵倒を一万回浴びせてやりたいぐらい、今のアシュには余裕がない。


「はぁ……はぁ……、アシュ先生。あなた、もしかしたら寝てるんじゃないですかね?」


 息をきらしながら、デルタが皮肉を言う。


「……」


 無視。ただでさえ何も思い浮かばなくてイライラしてるのに、ワガママ言い放題の弟子に皮肉を言われて更にイライラする器極小魔法使い。


「ぐっ……はぁ……はぁ……はぁ……」


 ロキエルの爪を背中に受けながら、歯をくいしばるレインズ。


「……」


 無視。背中で語るが如く、何も言わずに格好つける戦士に、何も思い浮かばないどころか、ムカつきが止まらない。最悪、レインズを犠牲にしてその隙に攻撃できないかと本気で考えるキチガイ魔法使い。


 その時。


「……クエエエエッ」


 奇妙な怪悪魔の声と共に、一瞬にして雰囲気が変わる。まず、レインズが斬撃を防いだ時に異変に気づく。


「うおおおおおおっ」


 受け止めたはずなのに。重厚な鎧がズタズタになり、血しぶきが舞い、思わず片膝をつき倒れる。怪悪魔の先ほどまでとは、打って変わったような強さを眺め、


「飽きたか……残念だ」


 心底口惜しそうに闇魔法使いはつぶやく。時間切れだ、と心の中で。状況を打開する策は見つけられなかった。このまま、全滅の憂き目にあい、このナルシャ国は滅びるのだろう……アシュ以外は。執事のミラを壊され、ボグナー魔法学校の生徒も皆殺しにされ、それでも1人生き続ける光景を思い浮かべ闇魔法使いは大きくため息をつく。願わくば、守りたかった。もう少し、生徒たちの成長を見守りたかったと言うのは、偽らざる彼の想いである。


「はぁ……はぁ……アシュ先生。何をあきらめてーー」


 デルタがそう叫びかけた時、隣のミラの魔法壁が突然、壊れた。いつのまにか、彼女の隣には怪悪魔がおり、不気味な笑顔を浮かべながら、


 一閃。


 その鋭く。


 無情な爪は。


 赤い液体を地面に撒き散らす。


 それは、


 ミラの疑似体液じゃなく。


 彼女の背中が斬られる代わりに、庇い斬られたデルタの血しぶきだった。








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― 新着の感想 ―
[一言] デルタアアアアア!!!! それでこそ漢だぜ( ˘ω˘ )
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