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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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怪悪魔


 怪悪魔ロキエル。中位の悪魔で、その階位は主天使(別名戦天使)リアリュリブラン、滅悪魔ディアブロと同等である。史上召喚に成功した者は数人。かつて単騎で小国を滅ぼしたと史実に残るほど、凶悪な悪魔であり、史上最高の魔法使いと謳われるヘーゼン=ハイムの戦力を大きく担っていた。


「クエ……」


 その目をしばませながら、眠そうな表情を浮かべる怪悪魔。


「ハハハハハハハッ……貴様らにこの悪魔が――」


 ザシュ。


「えっ?」


 一瞬にして。


 ゼルフの言葉が終わる前に。5人の魔法使いの首が飛び、ロキエルの掌に収まった。不気味な笑みを浮かべながら、刈った首をお手玉にする。


「……まったく。召喚魔法の危険性についてはあれだけ教えただろう? 理論ばかり突き詰めて、実践をしないからこんなことになる。しかも、よりによって怪悪魔とはね」


 アシュはデルタを睨みつけながらつぶやく。


「……」


 中位悪魔召喚は、史上でも5人しか成功していない。いや、召喚だけならもっと多い数がいたのだろうが、皆、為す術もなく悪魔に殺された。本当に難しいのは悪魔を制し、契約をすること。制するには、攻撃を受けても死なずにいられるような準備を施すべきなのである。契約するには、それに相当する贄を捧げる必要がある。


 デルタは研究を続け、理論までは完璧に構築したが、実践は断固として行わなかった。いや、行う気がなかった。理由は2つある。1つは使用するのが理論のみで十分であったこと。もう1つはその危険性。ヘーゼン=ハイムが残した論文には、召喚方法については記していたが、契約方法については記述しなかった。そのことに、どうしようもないほどの違和感を感じていた。


 しかし、他の研究員はそれに気づかず、ゼルフの命令のまま召喚を行った。


 結果、為す術もないまま、彼らには死が与えられた。


「クエエエエッ……」


「ひっ……殺せ! この不気味な悪魔を」


 ゼルフの号令と共に、兵士たちは目標を変えてロキエルに襲い掛かる。


 が。


 怪悪魔の前に立った兵たちは、一瞬にして瞳が虚ろになり、互いに首を飛ばす合う。


「う……うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 その異様な光景に。


 その異常な事態に。


 兵たちは、ゼルフを残して逃走を始める。


 しかし。


 逃走しようとした兵の首も、次々と飛び散っていく。そして、ロキエルが行う首のお手玉は、どんどん、どんどん増えていく。


「ひっ……ひいいいいいいいいいいいいっ!」


 ゼルフは青ざめた表情で悲鳴をあげる。その顔を満足そうに眺める怪悪魔は、至福の表情を浮かべながら「クエエエエ」と可愛らしく、鳴く。


「……ミラ、下がれ」


 アシュは静かにそう答え、前線にいる執事を下げる。


「なにか策はありますか?」


 デルタは問いかける。


「あるわけないだろう、この国はもう終わりだ。逃げるんだよ。契約していない悪魔ほど厄介な存在はない」


 かつて一度戦った悪魔だが、その時は操る者が未熟であった。辛うじて相打ちに持ち込むことは出来たが、今の魔力は空っぽであり、立つことすらできない。ましてや、野に放たれた怪悪魔は最悪。その気が済むまで、人間は蹂躙され続けるしかない。


「……見捨てるんですか?」


「報いは受けるべきだよ。元老院議長がこの国のトップなんだろう? 彼の失敗は、国民の失敗だ。まあ、ホグナー魔法学校までに被害が及ばなければいいが」


「国民には非がありません」


「あるんだよ。こんな時ばかりあの老人に責任を押し付けるのかい? 彼がもたらした利益だけは享受し、被害者面して失敗の報いを受けないのかい?」


「……レインズ、ここでロキエルを向かう撃つぞ!」


 デルタは、アシュに背を向けて叫ぶ。


「無論!」


 そう叫び、騎士団長は怪悪魔の前に立った。




 




 


  






 





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― 新着の感想 ―
[一言] 俄然デルタが主人公に!? そういえばこれ、デルタ=ラプラス編だった( ˘ω˘ )
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