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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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 アシュにとって、油断がなかったとは言いきれない。それは、先にデルタの実力を推し量っていたから。あちらはカードを全てきったと。こちらが奇襲を仕掛ければ、確実に勝つことができると。


 死体死体死体。


 周りには数千の死体で溢れ、デルタの言いなりとなってアシュとミラの周りを取り囲んでいく。


 反射魔法。


 属性の波長を合わせることで、相手の魔法をそのまま返すという光魔法。その波長を合わせるには高度かつ繊細な調整が必要であり、失敗すれば無防備で攻撃を喰らうことになるので、使用する者は少ない。


 アシュが全体に対し放った魔法を、そっくりそのまま返された。波長を合わすことは容易ではないが、長年アシュに師事をしてきたことを考えると、考慮に入れるべき可能性の一つだった。


「……ミラ、打開策に、君の意見を聞かせてくれ」


 闇魔法使いに流れる一筋の汗。魔法に関し、意見を求めるなど、自尊心の塊である彼には滅多にないことだった。


「今すぐには思い浮かびません」


「くっ……使えない人形だよ、君は」


 そういい捨てて、アシュは再び構えをとる。死体というのが。存外に厄介である。切り刻んでも、吹き飛ばしても痛覚などなく、一心不乱に襲い掛かってくるので、存在ごと吹き飛ばすような威力の魔法を使わなくてはいけない。


 しかし、すでに四方に囲まれており、距離も近すぎる。極大魔法など撃てば、自らの被害も相当なものとなるだろう。


「ミラ、僕はなんとか状況を打開する方法を練るから、()()()()()()()()


「……なんとかしたら、状況を打開する必要はないんではないですか?」


「くっ……ああ言えばこう言う。言い訳ばっかり多い人形だな君は」


「……」


 ああ、こいつ言葉通じねーわ、とは有能執事の結論である。


「ふふ……他にも用意していることがあるんですから、それまでに力尽きないでくださいよ」


 そうデルタは笑った。


「……ふっ」


 負けじと、アシュも、笑った(特に意味はない)。


 そんな中、死体たちが一斉にアシュとミラに襲い掛かる。


 |弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾だだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!


 拳と蹴りの弾幕で、ミラが死体の頭部を吹き飛ばす。


 すべて一撃。


 さすがに死体も頭部を失っては行動できず、2人を中心として頭部なき死体の山が積まれていく。


「ふっ……私の人形に疲れなどない。このまま数千の死体を全て葬ってくれよう。ミラ、行け」


「……頼むから黙ってみていてもらえませんか?」


 そういい捨てながらも、有能執事は忠実に一撃必殺で死体の頭部を粉砕し、死体でできた壁を利用しながら、アシュを傷つけまいと身体を張る。


「やはり、彼女の能力は素晴らしいですね。正面突破とは……脱帽しますよ」


 デルタは心の底からそうつぶやいた。


「ククク……エステリーゼの居場所を吐けば、今なら許してやらなくはないよ」


 アシュが笑いながら提案する。


 もちろん、嘘である。


 今は劣勢。目の前の強敵に怒りは晴れ、勝つためにはどんな手段でも講じる元のアシュに戻っていた。その代わり、勝ったら、家畜としてこき使うという決意も新たにするキチガイ魔法使い。


「そんなこと言わないでくださいよ……おっと、まだもう一つの秘密兵器を紹介していませんでしたね」


 そう言って、デルタは指先で大きく弧を描く。


<<空すらも 超越する 光をこの手に>>ーー時空の番人(スペース・キーパー)


 大きな白い光が包み、一人の少女が出てきた。


 それは、見慣れた姿で。


 瞳だけ、うつろになった状態で。


 アシュの表情から笑顔が一瞬にして消え、


 そして、


 つぶやいた。


「リリー=シュバルツ君……君はそこで何をしている」


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― 新着の感想 ―
[一言] ミラ強ッ( ˘ω˘ ) やっぱミラが一番優秀やなw
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