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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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歓談


 始業開始から30分が経過。アシュの遅刻は、ほぼ日常と言ってもいい。生徒たちはすでに周知しており、黙々と自習を始めている。


 一人の生徒を除いて。


「あんのクソ最低ナルシスト性悪教師――――――っ!」


 リリー―=シュバルツである。


「「「……」」」


 これも、またいつもの光景。みんな、彼女の叫びを無視して勉学に励む。数分毎刻みで、親友のシスに『アシュがどれだけ迷惑をかけているか』を熱心に、情熱的に語ってきた超優等生美少女。最近、リリーの方が迷惑であるという共通認識がクラスメイトに芽生えてきたのは、必然であり、当然である。


 そんな中、教室の扉が開き新任教師ナナが入ってくる。


「こ、こ、こ、こんにちにゃ!」


 噛んだ。歴史的な魔法使いを何人も排出した超エリートクラスの生徒を前に、一年目の数日で突然に配属された緊張しいのド新人が、噛んだ。


「アシュ先生はどこに行ったんですか!」


 優等生美少女は、まっすぐに手を挙げて、その眼差しも揺るぎない。威嚇と言うより、意志。どんな理由があろうと、絶対に許さないという決意。


「あの……重要な用事があると言って、出て行かれましたけど」


 敬語。15歳優等生美少女の圧倒的なオーラにビビる21歳。


「……理由は?」


「り、理由?」


「授業を遅刻したにも関わらず、説明すらもなく無断で出て行った理由はなんですかと聞いているんです――――――――!」


「ひ、ひいいいいいいいいいいっ」


 ああ、私にはまだ荷が重かったんだわ、明日は有休をとろう。早くもそう心に決める新任教師。


「リリー、落ち着こう。ナナ先生が悪いわけじゃないんだから」


 シスが必死でなだめ、ひとまず気を静める猛り系美少女。


 しかし。


 新任教師ナナは思い直す。なにを生徒に助けてもらっているのか。私は教師で生徒に教える立場。本来であれば、私がビシッと生徒を叱らなければいけないのに。


 二、三回頭を振りなおして。


 つかつかとリリーの前に近づくナナ。


「……なんですか?」


 こ、怖い。一瞬にして、ナナの心は折れた。


 そして、


「ば、バナナ食べます?」


              ・・・


「バカにしてるんですか―――――――――!?」


「ひ、ひいいいいいいいいいごめんなさーーーーーい!」


 田舎に帰ろう。帰って大人しくお見合いして地元の貴族と結婚して温かい家庭を築こう。特別教室に入って5分間で心が折られた新任教師。


「お、落ち着いてリリー。先生もなんでバナナなんて」


 シスが最早猛獣を捕らえるような動きで、猛り系美少女を羽交い絞めにする。


「ヒック……ヒック……だ、だ、だっ、だって、ア、アシュ先生が餌をあげたら、機嫌がよく、なるって……」


               ・・・


「……あんの最低教師―――――――――――!」


「ご、ご、ご、ごめんなさーーーーーーーーーーい!」


 すぐに逃げよう。ここから一秒でも早く。じゃないと、私はこの生徒に殺されると確信した新任教師。


「あの最低教師はどこにいるんですか!? どこにいるんですか!? どこにいるんですか!?」


「ひっ……東のほうへ馬車に乗っていきました……殺さないでぇ」


 掴んでいたナナの胸倉を離して、リリーは一目散に走りだし教室の扉を開ける。


「リリー、どこ行くの?」


「決まっているでしょう! あの最低教師のところに! これで最低の理由だったら……いや、最低に決まっているわ!」


 そういい捨てて廊下を颯爽と走り去っていく猛り系美少女。


 廊下の角を曲がったところで。


 リリーの首に突然衝撃が走った。


「……すまないが、利用させてもらう」


 薄れゆく意識の中、彼女は、デルタの低い声がはっきりと聞こえた。





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[一言] デルタアアア!!!! 遂に学校にまで……!
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