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どちらかと言うと悪い魔法使いです  作者: 花音小坂
第3章 デルタ=ラプラス編
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一新


 昼休みの理事長室。置かれているのはボロボロなソファ、そして長机に置かれたチェス盤のみ。ホグナー魔法学校最高権力者の部屋にしては、至ってシンプルな間取りである。そして、部屋の主であるライオールは不在で、代わりにキチガイ魔法使いが呑気にティー・タイムと洒落こんでいる。


「制服を一新するよ」


 至極真面目な顔をしながら、アシュが紅茶に口をつける。


「……なにを言っているんでしょうか?」


 ミラが淡々と尋ねる。まったくもって理解不能。


「ふっ、さすがは人形だな。理解が遅い」


「……大変申し訳ございません」


 人形だからとかそう言う問題だろうか、とは有能執事の感想である。


「まあ、君の不足は創造主たる僕の責任だ。構わんよ」


「……アシュ様、先ほどまでの流れを確認してもよろしいでしょうか?」


「もちろん」


「アシュ様が理事長代行に指名された⇒ライオール理事長になにか意図があったのでは⇒アシュ様に理事長代行としてなにかやって欲しかったのでは? ここまでお間違いはないでしょうか」


「ああ。見事な要約だった」


「まあ、考えとしては突拍子もないです。そして、穴だらけ、かつなんの根拠もない推論だとは思いますが、ここまでは人形である私にも理解できました。その思考に至ったプロセスも理解できないではないです」


「ありがとう」


 キザにお辞儀をする闇魔法使い。


 シネバイイノニ、と思いながらも有能執事は質問を続ける。


「しかし、そこから『制服を一新する』という考えに至った理由がよくわかりません。どう論理が飛躍しても、そこに行きつかないと思うのですが」


「なぜ?」


「……」


 いや、そんな純粋に問いかけられてもと、ミラ、思う。


「ライオールが僕にやって欲しかったこと、それが『制服の一新』なんじゃないかと僕は思ったわけだよ。まあ、制服革命だね。いわば」


「……なぜ、理事長はこの流れでそのようなことをアシュ様に託したと思われますか?」


 そんなわけねーだろバーカ、とは有能執事が喉まで出かかった言葉である。


「ふぅ……なぜ、わからんかな。この流れだからこそだよ。彼はなんらかの理由で姿を消さざるを得なかった。そして、僕に理事長代行に指名した。なぜか? 『そうだ、この機会に日ごろやれてなかった制服革命をアシュ先生にやっていただこう』と思ったわけさ」


「そうでしょうか? よく、考えてください。本当にそうでしょうか?」


 誰だそのキチガイ理事長は? それ、ライオールじゃなくてお前、完全にお前のクズ思考じゃねーかと、ミラ、思う。


「間違いないね」


 自信満々に頷く変態魔法使い。


「……わかりました。最後に確認しますがよろしいですか?」


「いーよ」


「ナルシャ国の最高諮問機関である元老院がこのホグナー学校を陥れるため、次々と刺客を送り込むような現状。特に元教え子のデルタ様、そしてクローゼ騎士団団長であるレインズ様のような強敵が虎視眈々と襲撃計画を再考し、ライオール理事長もなんらかの理由で行方不明。状況は混迷必至。そんな中、あなたはホグナー魔法学校の制服を一新するということに全精力を傾けるわけですね?」


「うん」


「……かしこまりました」


 ああ、もうこいつ言葉通じねーわと、ミラ、あきらめる。


 失望の先に、更なる失望があることを、人形は学習した。


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― 新着の感想 ―
[一言] いやいや、制服の一新は大事でしょ(真顔)。
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